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2005/02/14 19:02 更新


Game Tools & Middleware Forum 2005でゲーム開発の今を知る

次世代機開発を知るためにはまずは技術的なところから攻めるに限る。そんなわけで先日行われた「Game Tools & Middleware Forum 2005」から探ってみた。

 2月3日、東京の青山で「Game Tools & Middleware Forum 2005 〜Welcome to Next Generation〜」が開催された。参加企業はミドルウェアがクライテリオン・ソフトウェアとシリコンスタジオ、グラフィック系ツールがエイリアスシステムズとウェブテクノロジ。統合開発環境(IDE)がメトロワークス、そして協賛がヒューレット・パッカードの6社。今回、メトロワークスのCode Warrior以外の特筆すべき4社の技術・ツールを紹介したいと思う。

ゲーム開発者の開発工程を短縮するRenderWare Studio

 世界的に実績のあるゲーム用ミドルウェアといえば、クライテリオンの「RenderWare」シリーズが思い浮かぶ人も多いだろう。PCゲーム時代から続く10年以上の歴史があるグラフィック描画ミドルウェア「RenderWare Graphics」を中心とし、近年はサラウンドにも対応したサウンドミドルウェア「RenderWare Audio」や物理法則エンジン「RenderWare Psycics」、AIエンジン「RenderWare AI」なども提供を開始し、「RenderWare Platform」として統合ミドルウェアとしての提供も開始している。

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開発タイトルも国内外で多数発売されており、近作では「Rrand Auto Theft: San Andreas」や「バーンアウト3 テイクダウン」などのヒットソフトがこのミドルウェアで開発された

 現在、クライテリオンが推している新提案が、「RenderWare Studio」と言うRenderWare Platformをベースとしたゲーム開発環境だ。アメリカでも「コールオブデューティー・ファイネストアワー(Activision・国内発売元:コーエー)」など、このツールで制作されたタイトルも徐々に登場してきている。現在はPC/PS2/GC/Xbox向けだが、PSPや次世代機向けの開発も進んでいる。Game Tools & Middleware Forum 2005ではプレゼンテーションのほか、ブース内では実際にツールを使ってのゲーム作成も体験できた。

 この開発環境の特徴は、ゲームのデータを変更した時に再コンパイルしなくても開発実機上で修正したデータをチェックできること。従来の開発工程では、「デザイナーが仕様を設計」→「※プログラマーがコードを書く」→「デザイナーがデータ修正」→(※に戻る)という手間があった。その都度再コンパイルする必要があるので開発が一時止まってしまうのだが、RenderWare Studioの環境では、アトリビュート(パラメータ)の変更だけで実現している。これによってコードの書き直しや再コンパイルの必要はない。アトリビュートの変更はGUI上で行うことが出来、さらにその場で実機上でチェックできるのが開発時間の短縮につながるために好評だ。

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 RenderWare Studioではプログラムコードを「ビヘイビア」、グラフィックやサウンドデータを「アセット」という形で格納する。基本的にはアセットをゲームフィールドにドラッグ&ドロップするだけで、ゲームエレメント(ここではゲームキャラクターだけでなく、背景やエフェクト、ライトなどの全ての「視覚オブジェクト」も含まれる)が構築される。その各エレメントにビヘイビアを入れることによってゲームを構築していくのだ。

 ビヘイビアを書き直せば、新たなアトリビュートを追加することも可能。たとえば、止まっている時と歩いている時のアニメーションを設定するアトリビュートが設定されているビヘイビアに、走っている時や体力がない時のアトリビュートを設定することができる。また、基本的なビヘイビアは他のゲームにも流用することが可能なので、開発工程の短縮にも繋がる。

 ちなみに、クライテリオンでの推奨制作方式の一つは「チーム内全員でゲームデータを修正しながらディスカッションし、より良いゲームを作り上げていく」ことだそうだ。リアルタイムで制作状況の確認ができることはゲーム開発の把握がしやすくなるし、これにより、新たなアイディアも出やすくなるというのがクライテリオンの主張だ。

 なお、リリース当初は1プロジェクト単位での1年契約となっていたが、2月より人数単位(プロジェクトフリー・プラットフォームフリー)での年間契約となった。価格も一人あたり50万円とリーズナブルになり、これにより小規模チームや開発拠点分散型でのゲーム開発などにもRenderWare Studioが活用できることになる。無料評価版提供やRenderWare Graphics契約者向けの体験使用キャンペーンも予定されている。

マルチプラットフォームタイトルに強いミドルウェア「Alchemy」

 最近、国産タイトルでも使われるようになった統合ミドルウェアが「Alchemy」だ。日本ではSGI社の関連企業であるシリコンスタジオ社が提供している。GTMFのプレゼンテーションでも多くの関心を持った開発者が集まっていた。

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Alchemyは現在、ゲーム開発会社でもあるVicarious Visions社によって開発されており、自社開発タイトルである「クラッシュバンディクー 爆走!ニトロカート(国内発売元:コナミ)」に使われているのは当然だが、日本でもコナミの「グラディウスV」やタイトーの「ラクガキ王2」などでも採用されている。最近では、やはり自社開発タイトルである「スパイダーマン2」のDS版(国内発売元:タイトー)にも使われている。(ただし、現時点ではDS版の開発環境は提供されていない)

 Alchemyの特徴はプラットフォームが異なっていても100%ソースコード互換を提供するということだ。概念的には「WindowsにおけるDirectX」のように、ハードウェアの差異をAlchemy側で吸収する形だ。実際のデモとして、PC版で動く「クラッシュバンディクー 爆走!ニトロカート」が、開発事例の中では「X-MEN Legends(日本ではローカライズ予定なし)」のPC版が存在することを発表していた。これは「PC上でプロトタイプを開発し、それをほとんどそのままの形でゲームコンソールに移植することが可能」ということだ。ちなみに、ターゲットマシンとしては、PS2/GC/Xbox/Windows PCに加え、Linuxにも対応している。アーケードなどでも使用されつつある組み込みLinuxにも対応しているのも面白い。

 開発も、スクリプト言語を多用した構造化された作り方はもちろん、特殊効果などをすべてプログラムで行うという、ゴリ押し的なやり方も可能だ。

 ただ、Alchemyにはちょっとした「問題」も生じている。それが、米Activision社によるVicarious Visions社の買収だ。EAによるCriterion Software社の買収と同じような買収発表が先月発表されている。Activision社は同社の開発ツールとAlchemyを統合させるという発表は行ってはいるものの、Alchemyの将来については未発表だ。なお、EAとCriterionの場合には即時で「ミドルウェア事業はゲーム開発事業と完全に別組織としてゲーム開発企業に対する供給継続を約束する」というリリースが発表された。

 このプレゼンテーションで、シリコンスタジオ側から「短期的な囲い込みはない」という発表がなされたが、「長期的にはわからない」ということでまだまだ先は不透明だ。現世代機で使用できる統合ミドルウェアはAlchemyとRenderWareしかない故に、正式な将来展望が早急に発表されることを願いたい。

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3DCGソフトのバージョンアップ版や汎用スプライトエディタなども展示

 エイリアスシステムズはMayaの新バージョンを発表しGTMFで初公開した。Mayaはゲームだけでなく映画などでも用いられる3DCGソフトウェア。3DCG製作の入門用として製品版とほとんど変わらない機能を使用して作品を作ることが出来るMaya Personal Learning Editionの無償配布されていることでも有名だ。

 今回発表されたMaya 6.5はMaya 6.0のバージョンアップ版。主にパフォーマンス面での改良がされており、新しく搭載された「mental ray for Mayaネットワークレンダリング(Satellite)」によって、複数CPUによるネットワークレンダリングが可能になり、作業効率が大幅に上がる。また、CADソフトからの大容量データセットをインポートする機能が追加され、実在モデルのオブジェクトをCADデータから直接作成するということも可能になっている。

 日本では3月から出荷予定で、2月25日には「Maya6.5発表セミナ」を東京で開催予定とのことだ。また、同社の展示に使用していたのは協賛のヒューレット・パッカード社製ワークステーション。DreamWorks/PDIなどの大手コンテンツ制作会社もhpのWSを使用していることを強調し、サポートの迅速さとコストパフォーマンスの高さをアピールした。参考出展として、現時点では未発表のAMD Opteron搭載のWSも展示されていた。

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 ウェブテクノロジからはOPTPiX ImageStudioとSpriteStudioを展示。ImageStudioはゲーム機(パチンコ・パチスロ機含む)に特化したグラフィックエディタ。フルカラー画像を減色し、各プラットフォームに合ったフォーマットに変換することができる。BG系のマシンに対してはキャラクタ圧縮もサポートしているのも強みだ。

 SpriteStudioはスプライトアニメーションに特化したツールで、ImageStudioとの連携も可能。Flashなどで用いられるキーフレーム方式のほか、コマ単位での細かい調整もできるのが特徴。

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次世代機発表前で言いたくても言えないのが現状?

 今回のGTMFのサブタイトルには「Welcome to Next Generation」とついてはいるものの、次世代機を踏まえた開発ツールの話がおおっぴらにできないというのが実情。とくにミドルウェアは、契約上の問題がありハードメーカーが出す前にフライング発表はできないという(といいつつ、Alchemyはやってたけど……)。今回、RenderWareも次世代機向けの新バージョン発表に関してはまったく話が出ず、ティザーパンフの展示しかなかった。

 8日にアメリカでCellの発表があり、来月のGDCで任天堂・岩田社長が講演を行うことが発表され、次世代機の開発者向け発表も近づいてきている。これらが正式発表されれば、次世代開発ツールの発表が矢継ぎ早に行われるだろう。次世代機リリース時に多くの優良タイトルが発売されるよう、これらの開発ツールの動向にも注目しておきたい。

[岩井省吾,ITmedia]

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