IGDA日本が「Game Developers Conference 2005 レポート」を開催――GDC参加者による貴重な情報あり
GDC 2005の参加者が、それぞれの立場から感じ取った情報を披露。次世代機や、日米のクリエイターの違いにつていも言及された、その中身とは?参加できなかった開発者は必見!
3月26日、IGDA日本(国際ゲーム開発者協会日本支部)は、第9回ゲーム開発者セミナー「Game Developers Conference 2005 レポート」を開催した。本セミナーは、2005年3月7日〜3月11日まで行われていた、ゲーム開発者を対象とした世界最大のカンファレンス「Game Developers Conference 2005」(以下、GDC)の報告会となっている。
講演者は、GDC参加者として、それぞれの立場から感じとった情報を中心に提供。では、IGDAチャプターコーディネーターである新清士氏の講演から始まった本セミナーの内容を見ていこう。
「GDCの概要と2005年のトレンド」
まずは新氏がGDC 2005の概要について説明。来場者は、最終的な発表はされていないが約1万2000人、日本からの参加者は300人以上になり、セッションは総合で300前後、平行でも20セッションが行われていたとのこと。
また、平行セッション数でも分かる通り、すべてを追うことはできないイベントである。他の参加者と話をしていても、基調講演以外で被るものがほとんどなかったことが語られた。
ゲームを社会利用しようというシリアスゲームのセッションは、平行で3セッション(昨年は1セッション)という規模になり、GDCモバイルの参加者が増えたという特徴が上げられた。モバイルに関しては、アメリカでマーケットが立ち上がりかけているという状況が、本当のことなのだと感じられたとのこと。
今回の最大の焦点となった次世代機については、マイクロソフトが「XENON」という言葉を公式の場で初めて使った点や、任天堂「エヴォリューション」がネットワークに繋げることを公式に認めたことや、岩田氏の講演が、アメリカの聴衆にも受けが良く、任天堂のブランドイメージも上がったのではないかと分析している。
なお、ソニー・コンピュータエンタテインメントのCELLに関しては、話を聞いた限りでは、開発が大変そうだな、というイメージを持ったとのことだ。
ただ次世代機そのものというよりは、それにより開発の規模化、肥大化は避けられないという見方が強く、全体の開発プロセスを見直そうという講演が集中していたことが判明。巨大化するチームのマネージメントの問題や販売戦略のレベルにも変化が訪れるだろうと新氏は予測している。
「次世代ハードがくることによって、開発の規模がこれまでより大きくなることはあっても、縮小することは絶対にない。すでに技術とマネージメントの両面でコストは確実に上がる。これは日本のメーカーにとっても非常に大きなポイントとなってくる。」と新氏は語る。
事例として上げられたのは「ラチェット&クランク」。開発チームが、「1」では38人、「2」だと70人、「3」になって92人にまで膨れ上がった点を挙げ、次世代機では一体何人になるのか、100人が普通になるのではないかとの見方が強いとのことだ。
また、アメリカでは今、ツールプログラマーがステータスのある花形職種になっているという。日本ではあまり焦点があたることのない職種ではあるが、次世代機では彼らに注目が集まるかもしれない。
「キーワードから見る次世代プラットフォーム開発環境」
セガ クリエイティブセンターにて、主に社内開発環境の整備を行っている林洋人氏は、ソニー・コンピュータエンタテインメント (SCE) のセッション「CELL: A New Platform for Digital Entertainment」を中心に、「マルチコア」「PowerPC」「OpenGL ES」「Cg」「COLLADA」というキーワードに分けて解説。
ちなみにCELLは、IBMとSCEが開発したCPU。「マルチコア」に関しては、演算性能やOS、コンパイラが提供されるという面においては期待できる半面、タスクの粒度や順序性、プログラミングモデルの選択に不安があり、設計とバグは(かなり)難しくなると予測。
また、「PowerPC」はMotorola、IBM、Appe Computerが共同開発したCPUアーキテクチャであり、CELLのPPEはPowerPC 970互換、次世代XboxのCPUはIBMとの共同開発、任天堂次世代機はGAMECUBEとの互換性があることから、「PowerPCアーキテクチャ」によって、家庭用ゲーム機3ハードのCPUが統一される可能性があると述べていた。
他にも、プラットフォームやOSに依存しない業界標準の2D・3DグラフィックスAPIである「OpenGL ES」、NVIDIAとMicrosoftが共同開発したシェーディング言語「Cg」、リアルタイム3Dのための共通データフォーマット「COLLADA」についても、それぞれの特徴と、期待と不安の両面から解説を行ってくれた。
最後のまとめとしては、「既存の技術からの延長線上で捉えられるものが多いので、今から準備することが可能。(次世代機の開発は)物量的に大きくなっていくので、今から始めないと間に合わない。ただ、スケジュール的に判明していない部分も多いので、(SCEに対して)早くよろしくお願いします、という印象を受けました。」と締めくくってくれた。
「エンターテイナーとしてのゲームクリエイター」
「ラチェット&クランク」シリーズや「クラッシュバンディクー」シリーズなど、多くの海外タイトルの日本版制作に携わり、ソニー・コンピュータエンタテインメントでプロデューサーを務める長谷川亮一氏は、「The Sim」シリーズのウィル・ライト氏の講演を中心に、名スピーカーとは?日米のクリエイター、開発チーム像とは?に焦点を当てて、独自の見解を語ってくれた。
毎年魅力的なレクチャーを行い、一番人気と言っても過言ではないウィル・ライト氏。講演に訪れる人は、面白いと知っているので、笑いの沸点は低いと分析。だが、同氏はきちんとそれ以上のものを与えており、締めるところは、しっかりと締めるメリハリがあるとのこと。
同氏のような名スピーカーはいかにしてそうなったかについては、文化的背景があると予測。日本の場合、授業を受ける側は席に座り、先生の話を聞く受動的な授業が展開されるが、アメリカの場合、クラスの前に出てみんなの前でスピーチをする(Show and Tell)という能動的な授業となる。
作文ひとつを取っても、日本では自分の席で、アメリカでは前に出てという違いがある。こういった教育の違いが、日本と欧米の開発チームに影響を与えていると長谷川氏は分析する。
具体的に日本の開発チームは、単一民族だからこそ可能な「言外のニュアンス」の共有ができる。欧米の開発チームは、綿密なコミュニケーションによる「ビジョンの共有」が極めて重要だと考えている。という違いが挙がる。
日本の場合だと、「あれ」や「これ」で伝わることも多く、プロデューサー(カリスマクリエイター)が、一番先頭で旗を振って指揮を取る開発体制のため、その人のビジョンや価値観を後ろに付いてきている人が理解して開発は進んでいく。
理解されるから、どんどん進んでいってしまうが、アメリカの場合、会議で「それはないだろ」といった突っ込みが入るため、突飛なタイトルは生まれにくい。ただこれは悪い面ではなく、突っ込みがないおかげで、結局ゲームが完成して意外に凄いものができてしまうのが日本の開発チームの特徴だという。
「日本の市場は苦労してローカライズしてまで売る市場ではなくなっている」と長谷川氏は語りながらも、GDC Awardsを獲得した「塊魂」「ドンキーコンガ」を例に出し、こういったタイトルは日本だからこそ生み出せるセンスだと強調していた。
他にも、「学生の見たGDC 2005」と題して、おそらく2005年のGDC日本人参加者としては最年少である、東京大学3年生の鳴海拓志氏が、今回GDCに参加しての印象を語り、テクニカルライター・西川善司氏が、DirectXの最新情報や今後のアップデート指針、またUnreal Engine3.0やAGE OF EMPIRESエンジンなどの最新描画テクノロジーについて、「プロシージャル」をキーワードに解説を行ってくれた。
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