中国のブルジョワジーなコンシューマーゲーム事情(2/3 ページ)
それでもがんばるゲーム雑誌
中国においてゲーム雑誌は数多く創刊されている。以前はコンシューマーゲームとネットワークゲームの雑誌の割合が半々だったが、現在、このレートは3対7といったところ。コンシューマーゲーマーが少なくなったのではなく、PCゲームがネットカフェの普及と並行して一気に普及したためだ。
その内容は、中国PC雑誌と同様、歴史を重んじる中国人だけあって、あるジャンルに絞った「ゲームソフト史」や、本体にフォーカスした「ゲーム機の歴史」など、歴史を語るページが必ずといっていいほど用意されている。
PC用のネットワークゲームは日本のタイトルよりも、中韓欧米のゲームを多く扱っている。そういう意味では日本人が読んでも役に立つ、という感想を持つことはイマイチないだろうが、紹介するゲームのほとんどが日本のタイトルであるコンシューマーゲーム雑誌は実に読んでいて面白い。
各ゲームの紹介、攻略記事はもちろんのこと、レビュアーによる10点満点のゲームの評価や、ゲーム売上ランキングのデザインは、「おわっ、これ日本の出版社がデザインしているのか?」と感じさせるほど、日本のゲーム雑誌に近いデザインとなっている。
しかし、先ほども説明したように、中国大陸では、任天堂もソニーも“ごく一部の”ゲームタイトルを“ごく一部の”場所で販売しているだけなので、雑誌で紹介されている大多数のソフトは“本来なら”中国大陸で売られない、中国語化されていない日本製ゲームばかり、と言うことになるはず。日本語版のタイトルばかり紹介しているため、アドベンチャー色の強いゲームや、RPGなど日本語を知らなければ遊べないゲームの攻略記事では、ゲームに出てくる日本語の意味も解説している。
任天堂やソニーの中国語正規版販売の努力もむなしく、ゲームタイトルのリリースカレンダーは日本における発売スケジュールだけで、任天堂やソニーの現地法人が販売する正規版タイトルの発売カレンダーはない。
また同様に中国の正規版ソフトのゲームの紹介や攻略記事もない。ゲーマーの先頭に立つゲーム雑誌が紹介していないということは、ソニーや任天堂が中国語正規版を販売することで海賊版を撲滅する、といった思惑と、中国ゲーマーの欲求にまだまだ距離があることを暗に示している。
ゲーム屋の現場から
たとえソフトが簡単にコピーできようとも、プレイステーション 2にしろXboxにしろ本体はコピーできない。本体は香港や日本で購入してそれを中国で売るため、どうしても中国人には“おいそれと”買えない価格になってしまう。それでもプレイステーション 2は専門雑誌が創刊されるほどに多くゲーマーに支持され、また街にはゲーム機本体ばかりを扱う店が多く存在する。そういったゲーム屋はどうやって商売をしているのだろうか?
ゲーム屋の小さい店内には若い男の客が沢山。ガラスケースとダンボール、それにゲーム機本体とテレビが2〜3セット置かれ、ここで遊ぶことができる。このセットを使って、週末や、月に一度、ゲーム屋主催の大会が行われる。
大会の商品はガラスケースとダンボールに詰められている。ガラスケースの中にあるのは正規版ソフト、本体、アクセサリ類、ゲーム関連グッズ、それに加えて最近では食玩やフィギュアも多くの店で扱っている。正規版本体には「ヨドバシカメラ 4980円」などのシールの貼られたものもあり、日本直輸入のものもあることが伺える。
もちろん、長旅を経てやってきたこの本体の値段は、このシールにある「日本での実売価格」より高くなる。店によってはさらに高価で巨大な「初回版スペシャルパッケージ」も置かれていたりする。
けれども、そのガラスケースに客はほとんど関心を寄せていない。その多くが、さながらバーゲン会場のおばさんたちのように、ダンボール箱に見入り、そのなかの商品を漁っている。段ボールには海賊版ソフトがズラリ。ほとんどの客のお目当てはこれなのだ。
だからといってガラスケースの中のものがサクラなのかといえばそうでもない。海賊版ゲームに魅了されたゲーマーが、今度は稀に輸入される正規版やゲーム関連グッズを買っていくようになる。なんでも、これら正規版グッズは開封されることもなく、コレクターズアイテムとして懐に忍ばせるのだとか。
さらに、“稀に”正規版ばかりを買うゲーマーもいる。しかし、いくらリッチマンでも正規版ばかり買っていたら財布はいくらあっても足りないので、そういったお得意さんのため“ゲーム3本でゲーム1本と交換”というシステムを多くの店は採用している。中国人にとっては日本人でいうところのネオジオカートリッジ並みの高価格であろう日本発正規版ソフトだが、しかしその存在は必ずしも無駄ではないのだ。
中国にレトロブームは来ない
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