PSPはポータブルDVDに対抗し得るか否か：レビュー：ポータブルDVD特集（序章）（2/2 ページ）

[浅井研二，ITmedia]

　ノートPC（DVDドライブ内蔵）という選択肢は当然あるが、（携帯性の面からも）これとポータブルDVDとを天秤にかける人は少ないだろう。それよりも、市販の映像ソフトを鑑賞するという点では「UMD Videoプレーヤー」が対抗になり得るかもしれない。現時点では、すなわち「PSP」のことだ。UMDへのテレビ番組録画は不可能だが、PSXを使ってメモリースティック録画を行う手もある。

小型軽量な「PSP」＋UMDの組み合わせは、ポータブルDVDの対抗となり得る可能性がある

　実際にPSPでUMD Videoを鑑賞してみると、MPEG-2とMPEG-4（H.264/AVC）という違いはあれど、映像の細かさや、滑らかな動きは、DVDにも決してひけはとらない。低価格のポータブルDVDでは、液晶の性能も決して高くなく、映像がやや粗く見えてしまう場合も多々あるが、PSPの液晶は性能がよいうえ、4.3型ワイドとサイズが控えめなことも相まって、（ややおおげさに言えばフィルムのような）濃密で艶やかな映像を提供してくれる。

　画面がパンする際に多少ぎこちなさを感じたり、極端に映像が異なるシーンの変わり目で違和感があったりもするが、ほどよく暗い環境で観ている分には、小さい画面にもかかわらず、意外にもかなり没頭できる。ただ、映画では暗いシーンも多いため、昼間の電車の中などでは画面への映り込みが非常に気になった。ゲームのプレイ時以上に、反射防止フィルターの類が必要かもしれない。

　また、音声は5.1chディスクリートはなく2.0ch収録（DVDと同じく、英語と日本語などと複数収録が可能。字幕も同様）のみだが、ポータブルDVDでもドルビーヘッドフォン対応製品は見当たらず、通常のヘッドフォンで聴いているかぎりは5.1ch音声をきちんと活用できるわけではない。ただ、記録情報量に差があるせいか、ポータブルDVDと比較して聴いてみると、音の広がりと分離度にやや欠ける印象。

　操作に関しては、再生、停止などのボタンがあるわけではなく、ゲームにも使用する○△×□やカーソルボタンを流用するため、少々とっつきづらいが、L／Rボタンで前後チャプターへのスキップ、カーソル左右で早送り/早戻し（各3段階）というツボさえ押さえれば、特に問題はないだろう。リジューム再生にも対応している。

　反応も、UMD挿入からディスク認識までに6秒、再生開始ボタンを押して絵が出るまでに4秒、計10秒というのは特に遅くはない。ただし、チャプターのスキップに約2秒かかるのは、やや気になった。

長時間再生は立派。総合的にPSPは映画鑑賞にも適しているが、問題はソフト

　しかし、何にもまして立派と言えるのは、連続動作時間だろう。1時間のビデオ視聴でおよそ20％のバッテリー消費というペースである。バッテリーがなくなると、突然、黒い画面に中央に小さなバッテリー切れアイコンが表示され、いきなり電源オフとなるが、そこまで約4時間半は持つ。一般的な映画であれば、充電なしに2本は観られるというわけだ。

　軽量かつコンパクト、そして、価格は2万円程度のPSPで、これほどの映像が観られるのなら、ポータブルDVDよりも良い選択肢となり得る。しかし、誰しもが気づいている通り、問題はソフトだ。ラインナップが圧倒的に少ないうえ、価格がDVDと同じかむしろ高いぐらい。これでは困る。

　DVDソフトであれば、ポータブルDVDだけではなく、自宅ではホームシアターで映像と音声を最大限に引き出してやれるが、UMD Videoは現在のところPSPでしか活用できない。これでは、DVDソフトと同じだけの金額を出す気にはなれない。そのため、外出先での映画鑑賞という用途においては、まだまだポータブルDVDが優位といえるだろう。

　ただ、ゲオショップではUMD Videoのレンタルを試験的に開始したようで、この方面で活路を見いだす余地はある。個人的には、空港内のショップや新幹線の駅キオスクでレンタルを展開してほしい。

　東京で借りて、大阪で返却。さらに、大阪で違うパッケージを借りて、東京で返却。そんな利用が可能になれば……（別にかさばるわけでもないので、一度に複数作品借りればいいだけの話だが）。あ、それはDVDレンタルにも言えることか。

　さて、次回からはいよいよ、ポータブルDVDのレビューを開始する。まずは東芝の「ポータロウ SD-P1600」を取り上げる予定だ。

次回は東芝の「ポータロウ SD-P1600」からレビューをスタート