レビュー
2005/08/12 12:00 更新


とことんハジけろ、世界の平和は狂騒のカーニバルの先にある (1/3)

ダークさと軽妙さを融合し、独自の世界観を打ち立てた第1作。明るくコミカルな方向へ転換した第2作。そして2005年夏、ついに第3作「シャドウハーツ フロム・ザ・ニュー・ワールド」が姿を現した。PS 2以降に誕生したRPGシリーズは、どこへ向かおうとしているのか?

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弱冠16歳の探偵ジョニーと、ネイティブアメリカン、ガルヴォイ族の娘シャナイア。ある事件をきっかけに出会った2人は、アメリカ各地で戦いを繰り広げていくことになる……というのが今回の話


RPGの栄華は過ぎ去ったのか

 かつて、スーパーファミコンやメガドライブといった、いわゆる16ビット機が主流だった時代、ミリオンセラーを記録するタイトルと言えば、ほとんどがRPGだった。

 次世代機戦争と称された32ビット機のシェア争いにおいて、プレイステーションが他のハードを圧倒した理由の1つは、RPGの代表格である「ファイナルファンタジー」と「ドラゴンクエスト」のプラットフォームになったことが挙げられよう。21世紀に入ってからも、日本においてXboxが惨敗した原因の1つにはRPGが少なかったことが指摘されている。

 こうして見てくると、いかに日本人がRPGというジャンルを好む国民か、はっきり分かるだろう。しかし、そのRPGにも、やや陰りが出てきている。ファイナルファンタジーは依然圧倒的な影響力を持っているが、あれはもはやRPGというよりひとつのジャンルと言ったほうがいい。ドラゴンクエストも同様だ。

 この2大タイトルを除くと、あとはいささか寂しい。長引く不況の中、開発に手間がかかるためか、本数自体が減っているし、プレーヤーのライフスタイルの変化で、長時間プレイしないとエンディングにたどり着けないことも敬遠される理由になっていると思われる。

暗雲を払う「ジャッジメントリング」という発明

 だが、RPGそれ自体の質が低下したわけではない。むしろ“RPGなら売れる”という時代が過ぎ去ったことで、固定ファンに支えられた良質な作品だけが生き残る土壌が造られたとも言えるだろう。

 その代表格が「シャドウハーツ」(以下、SH)シリーズではないだろうか。特にこのシリーズの場合、第1作がプレイステーション 2での発売だったということも無視できない。

 もっとも、厳密に言えば、そのスタートはプレイステーション時代にあった。「クーデルカ」という、一風変わったダーク・ファンタジーRPGがそれである。ディスク4枚組の大容量で、ゴシック調のグラフィックは魅力的だったが、セールス的にはあまり芳しくなく、膨大なプレイステーションの作品群の中に埋没してしまった。

 その世界観とストーリーを継承したのがSHだった。SHでは、クーデルカのヒロインである「クーデルカ」が脇役として顔見せしているほか、戦いの舞台となった修道院も再登場する。シナリオ的には続編と言ってもいい内容だ。

 ただ、システムは完全に一新されている。ゲームの核を成すのはシステムなので、この時点で新シリーズが誕生したと言って間違いではないだろう。

 シャドウハーツにおいて採用されたのは、「ジャッジメントリング」というシステムだ。斜めに傾いている円盤の中に、扇型の図形(「ヒットエリア」と呼ばれる)が複数現れ、プレーヤーは、盤上を回転するバーがヒットエリア内にあるうちにボタンを押さねばならない、という判定方法である。

 簡単な攻撃や基本的な回復魔法は、少数かつ押しやすい間隔でヒットエリアがセットされるが、強力な魔法などは数も多く、複雑な間隔のヒットエリアで構成される。キャラクターによっても配置に特徴があり、主人公やヒロインだと容易に押せる攻撃が多いのに、テクニカルなキャラとなると、リズムを取りにくい厄介な並びが増え、その代わり成功時の効果も大きくなる。判定システムがキャラクター性まで表現しているのだ。

 ジャッジメントリングの登場で、コマンドを選んだ後は見ているだけ、というRPGの約束事は打ち砕かれた。当時、スロット市場を席巻したアルゼらしい目押しのシステムだが、まさに画期的なアイディアで、これにより、SHの名前はRPGファンの脳裏に刻み込まれたのだった。

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SHの戦闘画面。画面右にある斜めの円盤がジャッジメントリング。あらゆる行動の正否を握る、文字通りの運命の輪である


ヘビーな設定を背負った、どこまでもライトな面々

 SHにおけるもうひとつの特徴は、ダークな世界観と、軽妙なキャラクターたちのノリを見事に融合させた点だ。

 世界の秩序が崩壊しようとしている歴史の転換期(1914年といえば、第1次世界大戦勃発の年だ)に、崩壊を推進しようとする者と止めようとする者たちが戦う。だが、主人公たちも完璧なる正義の味方ではない。闇を破るために闇の力を行使し、冒険が終わった後は、誰からも英雄と讃えられることなく、人知れず各地へと散っていく。

 またエンディングは2種類用意されているのだが、そのうちメインのほうのシナリオでは、なんとヒロインが主人公の身代わりとなって死んでしまうのである。

 SHの優れた点は、こうしたヘビーな設定を、プレーヤーにほとんど感じさせなかったことにある。キャラクター同士の掛け合いは、非常に軽く、表面的に見れば、ライトファンタジーの登場人物たちと大差ない。

 にも関わらず、ハードでヘビーな世界観から浮き上がることはない。それは、彼らの軽さが人生の中で背負った重さを緩和する一種のポーズであることが、はっきり理解できるからだ。

 宿命と呼んでも過言でないほどの重みを背負い、それにめげず、戦い続けるキャラクターたち。ハードでヘビーな世界と、軽妙なキャラクターが融合することで、SHはシナリオ面でも独自性を築くことに成功したのである。

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SHより。可憐ではかない、という古典的なヒロイン像を体現しているアリス。彼女の命を助けるためには、ゲームの初期から入念なプレイを重ねていく必要があった


システムの継承とキャラクター性の非継承

 ところが、その3年後に発売された「シャドウハーツ2」(以下、SH2)では、なんとこの“重い世界と軽いキャラ”という構図をあっさりと捨ててしまった。

 システムにはあまり大きな変化はない。目立つのは、パーティに加わるキャラクターの総数が増えたことにともない、戦闘に参加できるキャラクターも3人から4人になったこと。そして味方キャラクターが敵を集中攻撃できる「コンボ」のシステムが採用になったことの2点だ。それ以外のシステムは、ほぼそのまま継承された。もちろん、ジャッジメントリングも健在である。

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SH2より。新規に導入されたシステムのうち、最重要のコンボ。味方キャラクターが敵の順番を飛び越えて連続攻撃を行うという、ボス戦などで重宝するシステムだ。だが発生させるために手間がかかるなど、使いこなすのが難しかった


 その一方、キャラクター像は大きな変化を遂げた。主人公はSHと同様で時間軸も繋がっているのだが、前作では宿命から逃避するために軽いポーズを取っていたはずが、今度は恋人であるヒロインの死という衝撃を受けたにも関わらず、ただ軽いだけの人間になってしまっているのだ(まあ、ショックでおかしくなったと考えれば、納得がいくが……)。

 そのほかにも、プロレスマニアのヴァンパイア、人語を介し、某有名ステルス・アクション・アドベンチャーゲームのまねごとまでしてみせる狼など、SHの雰囲気からするとあっ気に取られるキャラが次々と登場してくる。

 やや誇張した言い方をすれば、SH2はにぎやかなお祭りパーティが、陽気な馬鹿騒ぎの勢いで世界的危機を救ってしまう物語になっているのである。

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SH2のヒロイン、カレン。一見普通のお姉さんに見えるが、時代が1920年代であることをお忘れなく。おまけに攻撃のたびに、超ミニスカの下からブルーのアンダーショーツをチラつかせる。ちょっと狙いすぎ!?


 このように、システムは酷似しながら雰囲気はまるで異なっていた前2作。キャラクターの一部を継承し、時間軸も繋がっているシリーズとしては、かなり異色の構成と言えるだろう。

 この点を考えると、今回発売された「シャドウハーツ フロム・ザ・ニュー・ワールド」への興味はいやがうえにも高まってくる。いったい本作はどんな選択を採ったのか? システムは? キャラクターは?

格段に深みを増したコンボシステム

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[水野隆志,ITmedia]

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