プロダクション I.Gのビジュアルアーツあるいはプロデュースとは何か CEDEC 2005リポート

2005年8月29日から31日の3日間、明治学院大学にて開催された「CEDEC 2005」において、プロダクション I.Gの石川光久氏によるセッションが開催された。

» 2005年09月01日 05時48分 公開
[加藤亘,ITmedia]

 プロダクション・アイジー代表取締役 石川光久氏によるセッションでは、まず「サクラ大戦」シリーズや「テールズ」シリーズなど、過去どのような作品にプロダクション I.Gが関わってきたかの紹介からはじまった。

 シリーズ通しての感想として石川氏は、ハードの移り変わりや昨今のゲーム会社の合併などを見るに、ゲーム業界は“急成長”から“補完”の時代になったのだと感じているという。このような時代に常に心にとめていることは、“継続すること”と語る。

 ビジネスにおいて、人材確保や会社の基盤作りは大事な要素であるが、そればかりにとらわれてはならないのではないかと提唱する――会社としては利益を優先しなくては立ちゆかなくなることは道理。基盤作りは大事だが、大事にしすぎなくていいのではないか――と。利益が出せれば基盤はおのずと生まれ、人材は育っていく体制に持っていくことだってできるとのこと。

プロダクション I.Gの石川光久氏。

 前途した「サクラ」シリーズや「テイルズ」シリーズは、アニメパートのみの担当だったが、「サーヴィランス」や「攻殻機動隊」などは、プロダクションIGは企画から参加しゲーム製作そのものに関わっている。ゲーム製作に関わったきっかけは、1990年代後半にゲーム業界が隆盛を極めていたことに起因すると石川氏は続ける。才能はお金があるところに集まるもので、その人の流れと金の流れをこちらに向かわせることはできないかと考えたのだ。

 「攻殻」や「やるドラ」シリーズなど、チャンスが身を結び、ある程度の成功をおさめると、その実績で企画はさらに通りやすくなり、ビジネスチャンスは広がっていく。しかし、チャンスを切望していても、来ない時は来ないものである。チャンスの女神は気まぐれで、いじわるをよくするのだという。しかし、必ず継続していれば、ちょっとだけこちらに振り向いてくれる時がある。女性と一緒で、その隙を逃してはならないとのこと。

 石川氏は「デジタル化の行き着くところは、アナログではないか」と続ける。先のPSP「ミニパト」発表会でのことを例に挙げ、この製作発表会の目的は作品のお披露目もさることながら、バンダイにあと3本作ると明言させるための席だったと明かす。真偽のほどはわからないが、こうして大人の世界では企画が決まっていくのだそうだ。ゲームの世界以外でも企画とはこういうものらしく、企画書を提出してその計画が走り出すことはほとんどないのだそうだ。やることが決まってから企画書を作成する……。なるほど、思い当たる節もある。

 こうしたアナログな関係性(絆)で企画が動きだし、ヒットすることによりお金がリターンしていく。社会人になるとそういうアナログな事象が多々あるものなのだ。だからといってぬるま湯ばかりではなく、最終決定の契約の際はやけにドライに厳しい条件を突きつけられるのも常なのだと、大人の世界の矛盾を改めて説明。石川氏も「キル・ビル」でのアニメ制作の際、そういう厳しい契約内容を目の当たりにしたのだという。

 チャンスがいつ振り向いてくれるのか、いつまで継続していけばいいのかという壁にぶつかるかもしれないと話を戻し、石川氏は「人を楽しませたい気持ち」が一番であると言いきる。そういう意味でも結局のところ、気持ちや人間関係という実にアナログな基本的な部分で、チャンスはやってくるものなのだと語る。

 最後に石川氏は、ビル・ゲイツ氏と押井守氏を例に挙げ、「ビル・ゲイツは社員1000人分稼いでくれるが、ウチは社員200人で押井を稼がせている」と会場を笑わせながらも、「そのうち押井が社員数百人分を1人で稼いでくれる」とその価値を誇ってみせた。

 かみ砕いた内容だったとはいえ、はたして一般の学生や開発者に、会社経営のこぼれ話などどこまで必要だったのかは分からないが、プロデュースとはどういったものなのか、企画を通すことのいい意味での“いい加減さ”を学べる、有意義なセッションだったのではないだろうか。

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