レビュー
2006年06月28日 18時51分 更新

「プリンス・オブ・ペルシャ 二つの魂」レビュー:

求められるのは正確な操作、観察力、思考力――ひさびさに骨太なアクションをやってみないか (1/2)

目で見て、頭をひねってルートを探すパズル性。基本操作を組み合わせて、複雑かつ流麗なアクションを紡ぎ出す操作性。その2つが相まって作り出される、個性的な面白さ。前作までをプレイしているかどうかは無関係。この面白さを味わうのに前知識はいらない。

なめらかなアクションを追求してきたシリーズの最新形

 家庭用PCのスペックが向上し、ゲームの表現力が進歩し始めていた1990年代初頭。PCゲームとして登場した「プリンス・オブ・ペルシャ」を初めて見た時の驚きは今でもはっきりと脳裏に刻まれている(北米では1989年に発売された)。

 とにかく動きがなめらかなのだ。多少は良くなったといっても、まだまだ当時のPCでは細かなアクションを再現することは難しく、ドット絵のキャラクターを動かすにしても、途中の動きは簡略化されていた。必然的にアクションは瞬間的で単純なパターンに留まってしまう。それが普通の時代だった。

 プリンス・オブ・ペルシャは、そうした常識とは一線を画する動きを持っていた。なめらかで、曲線的で、躍動感に満ちている。流麗なアクションをゲーム雑誌はこぞって褒めたたえ、ゲームの進化にゲームライターたちは目を見張った。事件と呼んでもいいほどの衝撃だった。

 コンシューマへの移植も盛んに行われ、先頭を切って1991年11月にはPCエンジンスーパーロムロム、1992年7月にスーパーファミコンとゲームボーイ、同年8月にはメガドライブと瞬く間に当時の主要コンシューマ機を制覇してしまった。その人気と注目度がどれほど高かったか、これだけでも分かって頂けるだろう。

 それから長い年月が流れ、21世紀に入った2004年。この歴史的な名作が、最新の技術を用いて再登場することになった。しかもリメイクではなく、新要素を大幅に盛り込んだ、発展的な新作としてだ。

 かくしてプリンス・オブ・ペルシャは復活し、この時作られた「プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂」を皮切りに、「プリンス・オブ・ペルシャ ケンシノココロ」、そして今回の「プリンス・オブ・ペルシャ 二つの魂」と新シリーズが形成されていく。往時が懐かしいファンにとってはうれしい限りだが、もちろんそれだけでなく、このシリーズが持つ独特の面白さが廃れることなく残ったことは、ゲームというメディアにとっても非常に有意義なことだっと思う。

ヒロイックファンタジーを思わせるマニッシュな設定

 では、その独特の面白さとは何か、という話のなるのだが、その前にここでプリンス・オブ・ペルシャ 二つの魂の主要キャラクターたちについて、紹介しておこう。

 主人公となるのは、ペルシャ王の息子プリンス。プリンスは一般名詞で名前じゃないと思う人もいるかと思うが、この名称がシリーズ伝統になっている。剣の技量に優れ、正義を愛する熱血漢だ。

 プリンスが戦う理由は何か? それは愛する女のためである。美しく、はかない女。絵に描いたようなヒロインだ。本作のヒロインは名をカイリーナという。

 そしてヒロインである以上、当然のようにカイリーナはさらわれてしまう。これをやるのが、悪役である大臣。彼には名前はない。王様をないがしろにして大臣が悪事を働くというのは、シリーズ伝統の設定だ。

photo 主人公のプリンス。強く、優しく、熱いハートの持ち主。まさに男の中の男だ
photo ヒロインである同時に、物語の語り部ともなっているカイリーナ。前作のラストでプリンスに助けられた彼女が、プリンスとともにペルシャの都バビロンに戻ってくるところから物語が始まる
photo 強力なマジックアイテムの力で神にも等しい力を手に入れる大臣。彼を討つことがプリンスの目的となる

photo インドの王女、すなわちプリンセス・オブ・マハラジャであるファラ。以前にプリンスと冒険をともにしているが、その時の事情により、彼に関する記憶をなくしている

 男はどこまでも強く、女はどこまで美しい。そして悪はどこまで悪。この設定は、一目瞭然(りょうぜん)、ヒロイックファンタジーの世界だ。現代ではややステレオタイプに見えるかもしれないが、時にはこんなクラシカルゆえに普遍的な世界に身を委ねてみてはいかがだろう? 数が減っている分、希少価値もあるし、何よりシンプルで分かりやすいから、アクションゲームには最適だ。

 ところで、本作にはもうひとり重要なキャラクターがいる。第2のヒロインというべき、ファラだ。彼女は弓の使い手で、古典的ヒロイックファンタジーにはあまりいない、強く美しい女である。おまけに気が強く、プリンスを見下した態度を取る。一言で言えば、ツンツンしているわけだ。で、最後になってデレデレしてくるか……これはプレイした時のお楽しみに取っておこう。

独特の機能振り分けが生む独特の操作性

 さて、こうしたキャラクターたちが繰り広げる冒険こそがプリンス・オブ・ペルシャ 二つの魂の魅力となるわけだが、その個性的な面白さとは何なのか? に話を戻そう。それは一言で言えば、頭と指先を駆使するアクションゲームだということになる。言い換えるなら、パズル性とアクション性の融合といってもいい。この2つの要素が両輪のように合わさって、独特の面白さを生み出しているのだ。

 まずはアクションゲームの基本である操作性から説明していこう。

photo 壁際でR1ボタンを押すことで出る“壁走り”。壁に沿って走り、ジャンプでは届かない場所に移動するために使われる。ただし、いつまでも走れるわけではないので、タイミングを計って次の足場へジャンプしなくてはならない。ミスすれば奈落の底へ真っ逆さまだ

 移動は左スティックで行う。傾ける角度によって歩行と走行が分けられる。このあたりはごく一般的だ。それ以外のアクションに関しては、通常攻撃が□ボタン、特殊攻撃が△ボタン、アイテムを拾ったり、投げたりするのが○ボタン、そして特殊移動が×ボタンという具合に割り振られている。またR1ボタンに、壁を横に走ったり、駆け上ったりする機能が与えられている。そのほか、視点を回転させたり、主人公視点に切り換えたり、主人公の背後にカメラを移動させるなど、アクションゲームに必要な機能はひと通り用意されている。

 この中で、作品の個性と大きく結びついているのが、○、△、□、×、R1の各ボタン、とりわけ×とR1の2つのボタンだ。例えば×ボタンには、前転、ジャンプ、よじ登るという3種類のアクションが割り振られている。なぜ、まるで違うアクションが1つのボタンに割り振られているのか? と思う人もいるかもしれないが、歩行と走行以外の移動方法を1つに集めることで操作性をシンプルにしているわけだ。

 これに加えて、柵を乗り越えた時や壁をよじ登っている時などに、手を掛けられる場所があると自動的にぶら下がってくれるという機能がある。手がかりがあるところならば、勝手にぶら下がってくれるので、その意味では安心だ。

 基本的に左スティックで主人公を操作しながら、ジャンプなどの特別な移動がしたいと思ったら×ボタンを押す。これだけ聞くと、実に簡単に思えるだろう。だが、今まで説明した機能が複雑に絡み合ってくるとどうだろうか?

photo 回転する床や柱、それにトゲがついたもの、飛び出してくる壁、崩れる足場、落とし穴など、トラップも目白押し。そのものズバリ、「トラップ」と名づけられたステージもある

 例えば、通路の途中に大きな穴が空いているとしよう。これを飛び越えるには、穴の淵、ギリギリでジャンプしないといけない。×ボタンを押すのが早すぎると前転になってしまうし、遅いとジャンプできず淵にぶら下がることになる。これだけならやり直せばいいだけだが、この動作を敵がいる時や時間制限がある中でやらないといけないとなったら? あるいはまたトラップが仕掛けられていて、飛び損なうとそれが発動するようになっていたら? そう、難易度はずいぶん上がってくる。

 さらにまたジャンプした先の床にトラップがあり、着地と同時にすぐ飛ばないとダメージを受けてしまうとしたら……? 本作は、このように複数な要素を重ね合わせることで、さまざまな操作を正確に行うことをプレーヤーに求めてくる。そして失敗した場合、大半は死、良くても大ダメージというペネルティを課してくるのだ。この駆け引きが、一筋縄ではいかない深みのある攻略性を生み出している。

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[水野隆志,ITmedia]

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