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2006年07月03日 17時35分 更新

アハ!体験は日本人の“ひらめき養成ギプス”――茂木健一郎氏トークショー

2006年7月2日、ソニーが運営する体験型サイエンスミュージアム「ソニー・エクスプローラサイエンス」内で、2006年6月22日から7月30日まで開催されている「アハ!体験スクエア」にて、脳科学者の茂木健一郎氏によるトークショーが行われた。
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 2006年7月2日、ソニーが運営する体験型サイエンスミュージアム「ソニー・エクスプローラサイエンス」内で、2006年6月22日から7月30日まで開催されている「アハ!体験スクエア」にて、脳科学者の茂木健一郎氏によるトークショーが行われた。

 「アハ!体験」とは、一瞬のうちに新しいことを生み出したり、今まで分からなかったことがわかってしまったりする脳の“ひらめき”のことで、セガからは茂木氏監修によるPSP用ソフト「ソニーコンピュータサイエンス研究所 茂木健一郎博士監修 脳に快感 アハ体験!」(以下、アハ体験!)が発売されている(アハ体験!レビューはこちら)。


photophotophoto アハ!体験スクエアでは「アハ!センテンス」、「アハ!ピクチャー」を体験できるほか、PSPアハ体験!の試遊コーナーが設置。また、自らが「アハ!ムービー」の一部となれる「アハ!スタジオ」や、顔写真を3種類のビーンズ画像に埋め込める「アハ!ビーンズ」といったコーナーも用意されている

 このたび行われたトークショーは、“脳が感動するとはどういうことか?”をテーマに展開。茂木氏はまず「相対性理論」で有名なアルベルト・アインシュタインの“感動するのを忘れた人は、生きていないのと同じである”という言葉を例に挙げ、感動がいかに大切なものであるかを力説した。

photo 茂木健一郎氏

 「1日1回とは言わないまでも、生きている中で感動は必要なんです。先日、網走で講演を行ったんですが、そこは小学5年生の時に行ったことがあった場所でした。子どもの時にどこかに行って、そこに大人になってもう1度行くと、いろいろと思うことがありますよね? 例えば、昔は大きく見えていたものが小さく見えたりとか。そういうことも感動なんです。それが脳にとって一番良いものなんです」(茂木氏)

 感動すると涙が流れることがあるが、涙も脳に関係していると茂木氏は語る。「涙はオーバーフローなんです。脳が情報を処理しきれないであふれ出す。これまでの自分の世界観では対応できない。気付かずに通り過ぎていたものに気付く。こういった時に感動して泣くんです。涙はまさにあふれ出るものですが、この時に脳もあふれ出ているんです」

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 感動がいかに大切なものであるかを説明した茂木氏は、自身の研究のテーマのひとつであるアハ!体験へと話を移す。アハ!体験のフィロソフィーには「現代の脳科学においては、『感情』(emotion)は、生きていく上で避けることのできない不確実性(uncertainty)への適応戦略であると考えられている」というものがあるいう。

 「世間からはアハ!体験なんて言っている変なおじさんと思われているかもしれませんが、後ろにはこういう立派な理屈があります。生きていくのは何が起こるか分からないこと。学校では答えの決まっていることは教えてくれますけど、人生をいかに生きるべきかという教科はありません。何が起こるか分からない人生をどう生きるかという時に、感情がフル回転するんです」(茂木氏)

 アハ!体験を多くの人が知ったのは、日本テレビの「世界一受けたい授業」だと思われるが、出演にあたり、脳科学の面白い話をいくつか挙げたところ、テレビ局のスタッフが食いついたのがアハ!体験だったという。そして番組を見たセガのスタッフが、茂木氏の元に試作品を持っていき、ゲーム化が実現したという裏話も披露された。

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 背後には難しくも立派な理屈のあるアハ!体験ではあるが、簡単に言ってしまえば“気付くためのトレーニング”となる。「何かが分かるとうれしいですよね。脳にはうれしいことが起こった時に放出される『ドーパミン』と呼ばれるものがあります。何か行動してドーパミンが出ると、その回路が強化される。これを強化学習と呼びます。ですから、頭を良くしようと思ったら、何かを学んで喜ばなくてはいけないんです。アハ!体験は気付くことに喜んでドーパミンを出してほしいというもの。気付くということに対して、トレーニングする機会はないんです。答えが決まっていることを素早くやることも大事ですけど、それだけでは今の世の中はやっていけない。何か新しいことに気付くことがすごく大切なんです。脳はオープンエンド、一生学び続けるものですから」(茂木氏)

 答えの決まっていることを効率よくやるのは、典型的な日本人が最も得意とするところだろう。しかし、それだけでは何が起こるか分からない現実には対応できないのも確かだ。「日本人はもっと創造的にならなければいけないし、コミュニケーション能力も鍛えなければいけない。未知の体験を需要することが大事ですし、何かに出会った時に、それに気付いて、それを受け入れていく新しい自分を作る。これができないと人生を本当に楽しむことはできないと思います」と茂木氏は語った。

 言葉では言い尽くせないほどの、さまざまなフィロソフィーを持つアハ!体験。「これからはコンピュータにできないことが人間に求められます。読み書きそろばんといった基本的なこともできなければいけませんが、それと同時に栄養素として、ひらめきを脳の中に取り入れないと、面白いことにはなりません。ゲームのアハ体験!は、自分が分かった後に人にやらせて、分からないのを見ているのもすごく楽しい。みんなでやり回しできるパーティーゲームですし、コミュニケーションのきっかけにもなりますから、ぜひそういう楽しみ方も試してください」とした茂木氏。

 相変わらず脳活性化ブームが続いてはいるが、ひらめき力を鍛えるという、これまでの脳活性化ゲームとはひと味違うアハ体験!を、ぜひとも体験していただきたい。

[遠藤学,ITmedia]

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