これまでのシリーズをいいとこ取り――珍しくも中身はしっかりしたドット絵RPG:「イリスのアトリエ グランファンタズム」レビュー(1/3 ページ)
ガストの看板タイトルといえば、1998年に誕生した「アトリエ」シリーズだろう。その最新作「グランファンタズム」が、いよいよ発売となった。従来の調合中心路線から一転して、本格派RPGへと転向した作品の3作目は、どのようなタイトルに仕上がっているのだろうか?
新たな道を模索し始めた、イリスのアトリエシリーズ
アトリエシリーズといえば、アイテム同士を調合して新たなアイテムを作り出すという、これまでにない斬新なアイデアが功を奏し、ガストを一躍有名にしたタイトルだ。単純なルールと何度も遊べる面白さで、1作目は約30万本を売り上げたと言われている。
そんなアトリエシリーズだが、途中で何度か舞台を変更しているのを知っているだろうか。最初に発売されていた3作品(+1本)は「ザールブルグ」という土地だったが、次の2作品は「グラムナート」を冒険の場所としていた。さらに、イリスのアトリエシリーズになってからは、まったく別と思われる世界へと舞台を移しているのである。ただし、主人公が錬金術師なのは、シリーズを通して変わっていない。
また、5作目までは調合を中心としたゲーム内容だったが、6作目(イリスのアトリエシリーズ)からはRPG色が前面に打ち出された作品に変わっている。その中でも本作は、1〜5作目の要素を数多く取り入れながらも、イリスのアトリエシリーズで培ってきたRPG的な部分も大事にしている、いわばいいとこ取りのタイトルとして仕上がっているのだ。故に、タイトルが“イリスのアトリエ3”とならなかったという。それだけ気合いの入ったタイトルとなれば、必然的に中身が気になるところ。順を追って一つずつ見ていこう。
シンボルエンカウント方式になり、より遊びやすく
イリスのアトリエシリーズでは、舞台はさまざまな場所へと変化している。1作目はレ「ガルザイン大陸」、2作目では「孤高世界エルフ」と「異世界ベルクハイデ」が舞台だった。そして本作の舞台となるのは、主人公たちが暮らす「水上都市ゼー・メルーズ」と、5つの異世界だ。物語は、8つの宝石を集めればどんな願いでも叶うという魔導書「エルスクーラリオ」を中心として展開される。
魔導書を受け継ぐ「イリス」と、一緒に住む「エッジ」の2人が主人公だ。ギルドから仕事を請け負い、それをこなすことで生計を立てるミストルースと呼ばれる仕事に就いている彼らは、ミストルースとしての日々を過ごすうちに、少しずつエルスクーラリオの核心部分へと迫っていくことになる。さらに、魔導書を狙う人物たちも登場し、それぞれの思惑が複雑に絡み合ってストーリーは盛り上がる。最終的に、願いを叶えるのは誰なのか。また、その内容は……?
今回は、5つの異世界を旅することになるのだが、そこでは特殊な力が働いているため、一定時間しか滞在することができない。その間に、ミストルースたちは目的を達成する必要があるのだ。そのため、かなり緊張感のある冒険が楽しめる。これに関しての意見はいろいろあるようだが、個人的には非常に良くできたシステムではないかと感じた。最初はパーティも弱く、頻繁に敵との戦闘が発生するため、時間を取られてなかなか奥へと進めない。しかし、レベルが上がるに連れて敵を簡単に倒せるようになるため探索範囲が広がり、思った以上のワクワク感が出てくるのだ。
そこで重要になってくるのが戦闘システム。今回はシリーズ初となる「シンボルエンカウント」が採用されている。スライムのようなシンボルがフィールドをうろついていて、それに接触するか□ボタンを押して剣を振り下ろすと、戦闘シーンに突入するのだ。シンボルを剣で斬りつけた場合は、必ずイニシアティブを取れる。
しかし、ジャンプするなどして敵に接触さえしなければ、無視して先に進むことも可能だ。敵に近づいても、向こうからすごい勢いで近づいてくるようなこともない。戦うも逃げるも、プレーヤーの思いのままなのだ。といっても、逃げてばかりではキャラが育たないため、後々困るわけだが……。
シンボルは最初、白か赤色で表示されているが、パーティのレベルが上がり相手が弱くなると、青色で表示されるようになる。これを斬りつけると、戦闘シーンに入らずにフィールド上で倒せてしまう。相手が持っているお宝も頂戴できるので、片っ端から倒しまくってしまった。それまでは戦闘シーンで戦っていた相手を一撃で倒せるのは、とても気分爽快(そうかい)。ストレス解消にももってこいだ。
しかも、時間の節約にもなるので、異世界での探索範囲がグンと広がる。こうなると、時間のことをあまり考えずに、あちこち歩き回れるのだ。探索範囲が少しずつ広がっていくのは非常に面白く、前述したワクワク感につながっている。実際、プレイするまでは抵抗感を感じていたものの、遊んでみればシステムに違和感を感じることはまったくなかった。かなり良くできたシステムと言えるのではないだろうか。
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