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2006年08月30日 17時33分 更新

CEDEC 2006:

CEDEC 2006開幕――スクエニ和田氏「ゲーム産業は第2の成長段階へ移行し質的変化を求める」

8月30日〜9月1日の期間中、東京世田谷区の昭和女子大学において「CEDEC 2006」が開幕。スクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏の基調講演を皮切りに、ゲーム業界の“知”の共有が行われる。
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 「CESAデベロッパーズカンファレンス 2006」(以下、CEDEC 2006)は、国内最大規模のゲーム業界カンファレンスで、技術面でゲーム産業の競争力を支える中心的機能を担う機会として、最新のゲームテクノロジーを積極的に発信し、情報の共有化と開発環境の向上を図るという意義の元毎年夏に開催されている(各セッションの詳細はこちらで確認のこと)。

 今年は開発者の技術力や知識の向上だけでなく、開発者同士の情報交流を通して個々の展望を明確に創造できる場であることから「VISION OF GAMES」をテーマとしている。

 会期中は、朝から大学の講義さながら、さまざまなセッションやワークショップが予定されており、連日行われる基調講演を含めると100近くが予定されている。そのトップバッターとしてスクウェア・エニックス代表取締役社長 和田洋一氏が「日本のゲーム業界の今後」と題した基調講演を行った。

ゲーム産業の現状

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 和田氏は講演冒頭、開発側の視点から、昨今言われるようになった日本でのゲーム市場の冷え込み――いわゆる量的危機感について、本質は違うところにあると懐疑的であると発言した。現在は肥沃な資産をベースに、産業全体が第2ステージに移行しているとのこと。今後、「産業自体が飛躍するためには質的変化が求められる。危機感を抱くには、量的な問題ではなく、質的危機感を共有すべき」と、持論を展開した。

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 家庭用ゲームソフトの世界市場規模は、ここ5年ほどで約15.4%の成長で推移している。しかし、日本の市場規模は動きが緩慢で、北米や欧州、アジア各国に比べて停滞しているように見て取れる。しかし、それだけで「健全な危機感ではなく、量的な危機感を煽るのはいかがなものか」というのだ。それというのも、これはあくまでも家庭用ゲームソフトについてであって、オンラインゲームやケイタイゲームは含まれていない。それを加えると日本でも成長過程であり、十分に伸びる余地はあるというのだ。「欧米の成長が目覚ましいのも、ようやく家庭用ゲームが浸透したことの結果であり、人口比率などを考慮するまでもなく日本市場を悲観すべきことではない」と。


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 しかし、それでも日本の市場が安定期に入り、今後縮小、さらにほかのアジア諸国や欧米からの攻勢も強くなっており、国内の市場を食い合うのではないかと危惧する声も聞こえる。しかし、書籍や映画などの他コンテンツと比べても、現状輸出が多い産業であることが一目瞭然だ。


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 さらに男女、年代ごとの家庭用ゲーム参加状況を例に取ると理解できると思うが、ゲームで遊んでいるユーザー数をサンプルを取り集計してみると、20代男性で半数、さらに60代、70代と高齢者への広がりも見せている。今後さらに時代が進めば、ヘビーユーザーとなっている20代や30代の年代が先送りされていき、厚みが増していくことが期待できる。和田氏は、これこそゲーム産業が育てた資産であると説明する。


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 同様に、今後これからゲームをしてみたいという意向を持つ潜在的な市場について言及。20代男性に至っては80%を越えるほどで、自分にマッチしたコンテンツさえあればプレイする可能性があるという集計結果を提示。しかし、これには先述したとおり、質的な変化が必須となる。当然、世代によってはライフスタイルも多様になるからだ。

 「ゲーム産業が発足した際は、あくまでもターゲットは子供や学生であり、そのライフスタイルは一様に想像しやすかったが、社会人をターゲットとすると趣向は細分化していき、ターゲットを絞るのが難しくなってくる。ゲームを作る側もライフスタイルに対応できる工夫が必要であり、それを叶えることができれば、国内においても成長余力があるのではないか」と、楽観視はしてないが、それほど悲観するべきではないと喚起する。

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 和田氏は、世界主要国(日、米、英、仏、独、中国、韓国、台湾)におけるゲーム産業と主要コンテンツ産業の市場規模について触れ、日本の家庭用ゲームソフトやPCオンラインゲーム、ケイタイゲームなどを加えたものと、その他主要国のデータを加えたものを比較しても、ゲーム産業が十分他のエンタテインメントコンテンツに負けていないことが分かると解説。ゲームは特殊なものではなく、一般的なコンテンツとなっているというのだ。

 だからこそ、健全な危機感を持つべきで、「量的な観点でいえばゲーム産業はあらゆる面で成長率は高く、量的視点から見れば楽観視してもいいだろう。しかし、それゆえにあらゆる世代やライフスタイルが多様となり、それに見合うゲームを市場に提案していかなくてはならない」と、“質的な変化”を意識しなくてはならないと語った。

ゲームの他産業への適用事例について

 和田氏は、“質的な変化”を意識するうえで、クリエイターはゲームだけではなく、他分野への転用や活躍の場があるとして、映画製作における“プリビジュアライゼーション”や、“オンラインサービス”そして“シリアスゲーム”の事例を挙げる。

 昨今、ゲームが他産業と手を携えることは珍しくないが、よくある単なるコンテンツやツールの流用だけではないものが求められていると、昨今ハリウッドなどで行われている“プリビジュアライゼーション”と“リソースの共有”を紹介する。

 今年3月に北米サンノゼで開催されたGame Developers Conference(GDC)でも、ルーカス・アーツとIndustrial Light & Magic(ILM)の講演「LucasArts and ILM:a Case Study of the Convergence of Games and Film」で話題にしたように、現在のハリウッドの潮流はゲーム技術と映画技術の融合からさらに一歩踏み込んだ、CG制作のプラットフォームの共有が行われている。

 和田氏はこれに言及。元来映画を撮影する前段階で、ひとつのカットに対して絵コンテにそって、セットを製作し、キャストに演技をしてもらい、さらに不備があればやり直すというずいぶん手間と時間を要していた。しかし、それをあらかじめ3D空間でバーチャルにプリビジュアル化することができれば、時間もかからず、さらに安価でもあると解説。その手法をプリビジュアライゼーションと呼び、「スターウォーズ エピソードIII」や「宇宙戦争」などでも作業の効率化のため大部分をプリビジュアライゼーションで補った。

 その際、製作したCGなどはゲームにも流用され、違った角度から見たショットであったり、ムービーそのもの含め、リソースの共有化がずいぶんと進められているという。実際、ハリウッド付近にゲーム開発会社が多く集まり、物理的にも交流が頻繁なのだそうだ。ゲームで培った技術を映画で利用し、それをまたゲームにフィードバックしていく。技術的にも人的にもさかんに交流が行われている西海岸の状況は、日本でも謙虚に学ぶべきものであり、開発側から見てもいい相乗効果を生んでいると語る。

 また、昨今のウェブサイトでもゲームデザインは応用されている。ユーザーをいかに引きつけるかをゲームによくあるような、アイテムを収集させ、それに見合う報酬を与え、場合によっては交換もし、さらに自分だけでカスタマイズできるようにしたものが増えていると解説する。いくつかのサイトは、ゲームデザインを活かし事業を成功させているのだそうだ。

 また、スクウェア・エニックスも学習研究社と業務提携し、シリアスゲームの開発を行っているように、研修や教育にゲームシステムは応用でき、優秀な学習システムとなりうるし、教育研修ツールとしても最強と説明する。「今後、標準としてゲームが教育に入っていくことは十分ありえることだと思う」と私見ながらも期待を寄せていた。

 前述したもの以外にも、周辺事業への活躍の場が増えることを希望しているし、実際今後も新たなジャンルで活用できる場が出現するだろうと予言する。

今後の展望

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 和田氏は「ゲーム産業はここ20年〜30年で定着し、成長率も参加人口も認知度も確立した。規模として見ても、他分野と比べて遜色ないほど大きくなり、第2の成長段階へと移行している。量的問題を議論するべきではなく、この段階でさらにユーザーを増やすためには質的な変化が要求されている」と、時代認識の共有と、クリエイターやエンジニアのコミュニティ作りへのサポートの強化を推し進めていくと発言。そうした中で何をすべきかをさらに議論していくことが、健全なことであり、大きな飛躍へとつながると持論を語った。

 そして、今後ゲーム産業が第2ステージへと成長すべき課題として“開発ツールの整備と活用、それに伴う他業種とのコラボレーション”、Web 2.0を例にするまでもない“ユーザー参加型コンテンツへの取り組み”、新ハードにおける“マルチコアプロセッサへの対応”、昨日の東大で行われた「ゲーム産業戦略」に見るように“産官学の連携”を挙げる。

 ツールの整備を例にすると、ゲーム製作においてミドルウェアエンジンの重要性が改めて注目されており、以前のような「同じものしかできないのではないか」というネガティブなイメージはハイスペックなハードの前では杞憂であると説明する。他業種からの人材交流が重要となる今後の展開においては、専門的すぎる知識を必要とせず、ゲームデザインのハードルが下がり、他分野の人材が介入しやすい環境を作っていくべきだと説明した。

 最後に和田氏は、「日本のゲーム産業は世界のコンテンツ産業をリードしているが、もっと大きな使命があるのではないでしょうか。世界各地と比較しても、これだけ通信インフラが整備され、端末のスペックも高く、コンテンツサービス業者が強く、それを駆使するユーザーが数多くいる地域はほかにありません。次世代のインフラをベースにしたサービスやライフスタイルとはなんなのかを考えられる最大の実験市場が日本であり、そのサービスをリードできるのが、もっとも先進的なゲーム産業なのではないでしょうか。痛みを伴う変化も受け止め、ここにいる皆さんで頑張りましょう」と、集まったクリエイターや業界関係者を鼓舞し、CEDEC 2006の幕開けにふさわしく“共有”を呼びかけた。

  • 「CESAデベロッパーズカンファレンス 2006」
  • 開催期間:2006年8月30日〜9月1日
  • 場所:昭和女子大学

[加藤亘,ITmedia]

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