インタビュー
2006年09月26日 19時34分 更新

さくらインターネット 笹田社長インタビュー:

オンラインゲームを知り尽くしているからこそ、よりよい環境とサービスを提供できる

さくらインターネットがサービスを開始し、2006年の8月時点で登録アカウント数が約3万人と好調な「ダンジョンズ&ドラゴンズ オンライン:ストームリーチ」。本来はデータセンターである同社だが、なぜオンラインゲーム事業に進出したのか? 同社の代表取締役社長である笹田亮氏に改めて詳細を尋ねてみた。

――まずは「ダンジョンズ&ドラゴンズ オンライン:ストームリーチ」(以下、DDO)のサービス開始から2ヶ月後の現在の状況、手ごたえなどを聞かせてください。

画像 さくらインターネット 代表取締役社長 笹田亮氏

笹田亮氏(以下、敬称略) そうですね、手ごたえとしては我々が当初期待していた通りのものが得られたと思います。ほかのオンラインゲームでは、だいたい課金後のユーザー数はオープンβテストの1割〜2割程度と聞いていましたので、「DDO」はクローズドβテストの募集が3万人前後ですから、正式サービスは数千人ぐらいでスタートするのかなと思っていました。ところがいきなり2万人のユーザーに課金していただいた上に、同時接続者数もサーバの限界に達するほどの状況です。ユーザーにはご迷惑をおかけしてしまいましたが、会社としてはうれしい悲鳴ですね。

――そもそも、なぜ「DDO」を日本市場に投入しようと思ったのか、改めて教えていただけますか。

笹田 元々、わたし自身が実は「ディアブロ」を始め「エバークエスト」、「ダークエイジオブキャメロット」、「プラネットサイド」に至るまで、海外のMMORPGがローカライズされる前から英語でプレイしているようなユーザーなんです。

――笹田さんご自身が相当な“MMORPG通”ですね。

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笹田 逆を言えば日本のゲームをほとんどプレイしてこなかったわけですが。海外のMMORPGはこちらが一番遊びたい、午後10時頃に向こうのサーバはメンテナンスだったりしますし(笑)、ラグが起きる問題は避けられないでしょう。今回Turbineが「DDO」と「The 「Lord of the Rings」 Online:Shadows of Angmar」(以下、「Lord of the Rings」 )の2タイトルについて、日本で運営してくれる企業を探しいると聞き、名乗りを上げたわけです。βテストの開始に合わせてクライアントのダウンロード用に回線を用意、開放するなんて、データセンターが本業の弊社でなければできないことです。

 それに今まで自分が長いこと日本でサービスされない、いわゆる“洋ゲー”のプレーヤーでしたから、不満に思うポイントも分かりきっています。できる限りプレーヤーの方々が不自由しない環境を、こちらで作ることができたらなと思います。

――プレーヤー視点での運営が可能というのは強みですね。

笹田 もちろん事業として成功させなければいけませんが、データセンターは一般の方にすれば遠い存在で、全くなじみがありません。ゲームという身軽なサービスを通してもっとアピールしていきたいです。

――オンラインゲーム事業を始めるにあたって、社内から反対の声はなかったのでしょうか?

笹田 ほとんど出なかったですね。創業時から「オンラインゲームはデータセンターと組まなければダメだ!」とわたし自身が言い続けてきました。実は社内のスタッフには、今まで一緒にゲームをやってきた仲間も多いんですよ(笑)。

――その最初の1タイトルが「DDO」になったのは、やはりそれまで遊んできたゲームが欧米のタイトルだったから、というのが大きな理由なのでしょうか。ただし、「DDO」はテーブルトークRPGのファンなら知らない人がいない有名作品ではありますが、そもそも日本ではテーブルトークPRG自体の普及率が低く、おまけにグラフィックスも日本人受けするもの、とは言いにくいと思います。それをそのまま持ち込むことへの不安はなかったのでしょうか?

笹田 グラフィックスは正直わたしも悩みました(笑)。ただ、日本人でも「World of Warcraft」を楽しんでるユーザーさんは数多いですし、グラフィックスも大事ですが、最終的にはそのゲームが面白いかどうかということだと考えました。

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――ところで国産ではないタイトルを運営する上で、大規模アップデート後に起きた不具合への対処ですが、どうしても開発元に状況を知らせてパッチができあがるのをひたすら待っていたりと、対応が遅れがちになる面もあります。しかしユーザーというのは「はい、そうですか」と待ってはくれない。こういった問題に関してTurbineとの連携体制はどうなっているのでしょうか。

笹田 それは悩ましい部分ではあります。というのも、同じタイトルをサービスしていても、米国では起きない、日本でしか顕在化しない予想外の問題が出てくるケースも多々あるんです。

――具体的に、その予想外の問題というのは?

笹田 日本のユーザーというのは、何か新しいシステムが追加実装されると、すぐにでもログインして試したい! という方がたいへん多いようです。たとえば、昨日(9月21日)実装されたアップデート「トワイライト・フォージ」にしても、ログインと同時に同じゾーンからメールの送信を試されまして……。100人単位のユーザーが、一斉に銀行周りからアイテムやお金をつけたメールを送り始めるなんてことは米国の開発者には想定されていませんでした。これによって接続が次々切れるという現象が起きましたが、すぐに対処してもらいましたので、今は問題ありません。サーバを増強してどうにかなる問題なら、いくらでも増強しますが、こればっかりは我々にはどうにもならないことですから。

 これ以外にも、大型掲示板などで「このサーバでプレイした方がいい」といった情報が出たためか、特定のサーバへ極端にユーザー数が偏りました。こちらに関しては新サーバを用意してありますし、既存プレーヤーさんにも、キャラクターデータの引越しというサービスで対応する予定です。

――日本のユーザーは、定期メンテナンスが終わる10分前には、PCの前に座って待っているような方も多いですね。

笹田 それだけ「DDO」というゲームを愛してくださっている、ということでもあり、ありがたいですね。

――ちょっとお話は変わりますが、モジュール3以降に実装されるゲーム内ナレーションの日本語化に際して、「ダンジョンマスター」の声に池田秀一さんを起用されましたが、その経緯を教えてください。

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笹田 ダンジョンマスターがしゃべる言葉を日本語にしてほしいという要望は、実は多かったんです。海外のゲームに慣れてない人には「なんで日本でサービスしているゲームなのに、ナレーションは英語なんだ」と違和感が強かったみたいですね。ただ、海外ゲームを愛しているプレーヤーでしょうか、中にはそういった空気を察知してか、逆に「ナレーションが日本語になったら『DDO』を引退します」という声もあったのも事実です。このため、英語と日本語の切り替えという機能を、Turbineに依頼して、実装してもらいました。

 なお、池田さんに決まった理由としては、ユーザーからの要望があったわけではありません。他にも候補の方はいましたが、低くて渋いゲームの世界観に合う声の方ということで社内で決定し、お願いしてみたら快く引き受けていただけました。

――ナレーション部分全てを録り直すとなると、だいぶボリュームがありそうですね。

笹田 声の収録だけで3日かかっています。ただ、今後の拡張版については新規クエストなどの差分のみになるので、これほどはかからないでしょう。

――東京ゲームショウ2006で、次期タイトルとなる「Lord of the Rings」についての詳細が発表されましたが、さらにその先の展開として、今後も日本でサービスがされにくい、ヘビーな内容かつコアなファン層が好むタイトルに絞っていくのでしょうか?

笹田 ライトゲームに興味がないわけではありませんので、運営をしないというわけではありませんし、また「よいゲームなら何でもサービスします」といっても、事業として成立しないのでは意味がありません。「DDO」と「Lord of the Rings」にしても、事業としてきっちり成り立つという考えのもとでサービスしています。ただ、この2本を立て続けに発表したために、海外、いわゆる“洋ゲー”と呼ばれるメーカーからのお話が多いのは事実です。

 欧米のゲームにこだわっているわけではありませんが。いくら我々が「運営できます。設備は整っています」と言っても、日本のメーカーがすぐに任せてくれる、ということにはならないでしょう。ここで実績を作って、いずれは日本のメーカーや、開発元が韓国で日本に支社があるメーカーから、運営と委託の話が来ればいいですね。

――どのあたりのメーカーからアプローチがあるのでしょうか。

笹田 こればかりはわたしの一存で申し上げられませんので、もう少しお待ちください。ただ、我々はパブリッシャーとして事業を続けたいわけではないので、海外、国内を問わず、運営を任せたいというメーカーからお話があれば、お受けします。今回の「DDO」の場合は、ほかにサービスを委託する会社がなかったので、パブリッシャーのような動きもしていますが。

 また発表できる時期が来ましたら、皆様にお伝えしますので、その時はぜひともよろしくお願いいたします。


 自らが奥の深い海外MMORPGのヘビープレーヤーだという笹田氏。海外から接続する上での不満・問題点なども分かりきった上で、データセンターの強みを最大限にいかした運営というのは、ユーザーにとっては安心かつ心強い存在である。

 次期タイトルに関しては、メーカーも作品も既に具体的な話が固まっているというので、リリースを辛抱強く待つとしよう。

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[聞き手:麻生ちはや,ITmedia]

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