「わたしの手術料は世界一高いぜ!」――手塚キャラ総出演の「マンガ アドベンチャー」「ブラック・ジャック 火の鳥編」レビュー(2/2 ページ)

» 2006年11月21日 17時21分 公開
[立花裕壱,ITmedia]
前のページへ 1|2       

難病・奇病がブラック・ジャックを待つ

 ストーリーは、中盤から後半にかけてどんどん広がり、一気に盛り上がる。少年時代のブラック・ジャックこと間黒男を爆発事故に巻き込んだ5人の男、謎の組織「バンパイヤ同盟」、そしてブラック・ジャックを手こずらせる奇病……。これらがどのようにつながるのか、そしてサブタイトルの意味は? このあたりは、ネタバレになるので秘密。ここでは冒頭のエピソードを少しだけ紹介しよう。

画像 チュートリアルを兼ねたヒゲオヤジのオペ。1度プレイしたオペは「旧カルテ」でやりなおせる。このオペは慣れればSランクGETは簡単

カルテ01:大渋滞で1時間も足止めされ、イライラするドライバーたち。追い打ちをかけるように大事故が発生した! 被害者の探偵・伴俊作は全身打撲に複雑骨折、急性硬膜外血腫を起こしているようだ。そこに現れたひとりの男。彼こそは世界一高い報酬を取る無免許医、ブラック・ジャックだった……。

 「普段なら、こんな金になりそうにない手術はやらないんだが、仕方ない」

 渋滞の中、路上でエアーテントを使った脳の緊急処置が始まる……。

 路上でヒゲオヤジこと伴俊作の開頭手術を行うカルテ01。まずは小手調べ。矢印が出るペースは遅いので、すんなりクリアできるはず。後半パートは矢印が次々と出現する「集中治療」。こちらもパニックにならなければ大丈夫。


画像 「整形手術」は油断大敵。この記憶系のミニゲームはあとにももう1度あるので、記憶力に自信がない人はいったんDSを閉じてメモするのがいいかも

カルテ02:「なんだこれは! これでも人間なのか!」。怪しげな洋館に呼ばれたブラック・ジャックは、まるで狼のように変化したクランケに絶句する。依頼主の不気味な男いわく、「これは『バンパイヤ病』だ」……。とりあえず言われたままに、人間の外見へと整形手術を行うブラック・ジャックだったが……。

 矢印がジグザグした「骨ノミ」など、ちょっと複雑な線が登場するカルテ02。後半に待つのは「整形手術」のミニゲーム。狼男の顔に引かれた線の順番と方向を記憶して、見本通りに再現する。これがなかなか難しい。筆者は油断して何度も間違えて、ゲームオーバーになりました。ダメですなぁ。

 ここまでがオープニング。これ以降は、岬に立つ診察室を拠点にシナリオが展開する。次のオペはチョコラ(「ドン・ドラキュラ」より)の虫垂炎か鋼玉すみれ(「リボンの騎士」のサファイヤ)の先天性心臓疾患のどちらか。すみれのエピソードは……。


 心臓を患うお嬢様のすみれ。シルバーランド開発の会長だった父を突然、心筋梗塞で亡くし、副社長のジュラルミンに会社を乗っ取られて無一文になってしまった。「あんたに金がないならもう診療はできない。それだけだ」。むげに断ったブラック・ジャックだが、すみれが目の前で倒れてしまう。やむなく心肺蘇生術を行うことに……。

 強心剤の曲線を描く部分が少し難しい以外は割と簡単なオペ。後半パートではマイクに息を吹きかけ、心臓部分をタッチでマッサージする。サファイヤファンにはちょっとうらやましい!?

 前半はこんな感じで次々と舞い込む依頼をこなしていく。一見バラバラに見えた個々のエピソードが、シナリオがひとつにつながる。なかなか凝った作りだ。ゲーム進行に詰まったら、ピノコと会話したり、「外出」を選んで七色いんこの探偵事務所で情報を買ったりしよう。

画像 マイクに息を吹きかけ人工呼吸、胸をタッチしてマッサージ。ピノコに嫉妬されても人命救助のためだから仕方ない
画像 代役専門の役者で泥棒の七色いんこ。今回は探偵役も引き受け、情報集めを担う。彼の情報料は高すぎ! ブラック・ジャックはこういうことにお金を使っているのか
画像 ブラック・ジャックのアイドルといえばピノコ。ゲームでも彼女の魅力は余すところなく発揮されている。アッチョンブリケ!

きら星のような手塚キャラに会える

 本作では、40人以上もの手塚キャラがにぎやかに活躍する。原作のエピソードをうまくシナリオに取り込んでいるキャラや、驚きのアレンジがされているキャラもいて、ファンの心をくすぐる。知らないキャラが出てきたら、ネットで調べて原作を読んでみる、そんな楽しみもある。筆者もこれまで知らなかったタクシー運転手のマンガ「ミッドナイト」を読みたくて、マンガ喫茶に足を運んだ。ここからは、このゲームで活躍するキャラを何人か紹介してみたい。

ミッドナイト(「ミッドナイト」より):ブラック・ジャックと同様、無免許という設定の深夜タクシー運転手。本名は三戸真也。もとは暴走族だったが恋人が植物状態となり、金を稼ぐためドライバーとなった。ブラック・ジャックと同じく、「週刊少年チャンピオン」に連載されたこのマンガは1話読みきり方式で、ミッドナイトがかかわった乗客たちとのドラマを描いている。重要な役回りでブラック・ジャックも登場する。衝撃的な最終話は今でも語り草だ。

写楽保介(「三つ目がとおる」より):普段は額に大きなバンソウコウを張った子供っぽい印象の中学生。しかし、バンソウコウをはがすと第三の目が現れ、自称“悪魔のプリンス”を名乗る超天才に変わる。オカルトブームのころに描かれた「三つ目がとおる」。アニメ化もされ、こちらも人気が高い。

 今回のゲームでは、お目付け役の和登千代子に連れられて、おでこの皮膚性潰瘍の切除のためやってくる。ブラック・ジャックによって、第三の目が取られ、写楽も普通の男の子になってしまうのか?

トリトン(「海のトリトン」より):海に住む少年トリトンが、イルカのルカーと一緒に、敵のポセイドン族と戦う海洋冒険ロマン。アニメ版は「ガンダム」の富野由悠季の初監督作品。原作を大きくアレンジし、アニメファンからは「富野節炸裂!」と評される。

 ゲームでは、内臓疾患で弱っているトリトンとルカーをブラック・ジャックが同時にオペする。ブラック・ジャックの原作にあった、シャチ(その名もトリトン)を治療するエピソード「シャチの詩」と絡めてあるのが心憎い。

 ちょい役も含めればまだまだたくさんのキャラが登場する。何人知っているか、自分の手塚治虫マニア度を確かめてみては?

画像 ミッドナイトのオペは揺れる車の中で行われる。コマンドが震えているときはタッチしてはダメ。ダメージになってしまう
画像 写楽のおでこにある第三の目が「皮膚性潰瘍(おでき)」とは……。写楽はこのあとのシナリオにも絡んでくる
画像 ピノコが拾った少年は海に住むトリトンだった。おとものイルカを見て、ブラック・ジャックは昔治療してやったシャチのことを思い出す

原作を脇に置いてぜひともプレイを

 クリア時間は10時間前後。ライトに遊べて敷居も低い。欲を言えば、ひとつひとつのエピソードがもう少していねいに描かれていればよかったか。それでもブラック・ジャック好きとしては満足だ。

 純粋にブラック・ジャックのゲームと考えるとややストーリーがにぎやかすぎる印象があるものの、手塚作品でおなじみのスター・システム(他の作品の主役級キャラが脇役としてゲスト出演する豪華な方式)をさらに発展させたものと考えれば納得も行く。

 どういう状況になっても、ブラック・ジャックの格好良さは変わらない。遊んでいるうちにすっかりその世界というか美学に、ハマり込んでしまった。原作のパロディやオマージュもたっぷりなので、ぜひとも原作マンガを用意して、プレイしてほしい。いろいろな発見が待っている!

(C)SEGA
原作:(C)手塚プロダクション


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  5. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  8. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  9. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
  10. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」