伝説の男が再び動き出す。東京と大阪で桐生一馬を待ち受ける運命は?「龍が如く2」レビュー(1/2 ページ)

前作からわずか1年という短期間でリリースされた第2弾。錯綜する幾多の思惑と野望が紡ぎ出した巨大な陰謀が、一度は極道から足を洗った伝説の男を再び渦中に引きずり込む。東京と大阪という2大都市を舞台に新たな人間ドラマの幕がいま開く。

» 2006年12月08日 12時48分 公開
[水野隆志,ITmedia]

前作を知らなくても問題なく楽しめます

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 プレイステーション 3やWiiの登場で、一世代前のハードになったプレイステーション 2。とはいえ、ソフトのラインアップを見れば、まだまだ第一人者の地位を譲ったというのは早すぎる。中でもこの「龍が如く2」は、2006年末のクリスマス商戦における最大級の話題作だ。ひょっとしたら、前作から1年というのは早すぎないか、単なる焼き直しではないのか、と危惧する人もいるかもしれない。あるいは、いくら話題になっているとはいえ、あまり食指が動かない、あるいはプレイするのにためらいを覚える、という人もいるかもしれない。

 制作スパンの件に関しては、システムは前作を継承しつつ新要素を加え、グラフィックもそれほど目立たないもののバージョンアップが図られている。どちらも革新的な変化ではないが、とはいえこれは停滞ではない。前作である程度の完成度に到達していた作品だけにさほどいじくり回す必要がないとの判断だろう。細部では遊びやすく改良されており(例えば極め要素のひとつである「ロッカーの鍵」の表示方法など)、正統な続編という仕上がりだ。

 また、ためらいに関して、その原因を挙げるとすれば、次の3点あたりが有力だろう。「1.ヤクザものは嫌い、ないし苦手」、「2.前作をプレイしていない」、「3.アクションが苦手だから」。以下、これらの諸点について考えてみたいと思う。

 まず最初に“ヤクザもの”であるという点であるが、これについてはある種の誤解ないし思い込みがある可能性がある。ヤクザものと一口に言っても、そこには大きく2つのタイプがある。実録ものと言われる実際のヤクザ間の抗争に基づいて作られた物語。ドラマを構成する必要上から主人公をヤクザに設定している物語。この2つはヤクザが主人公でも、内容はおよそ異なる。前者では抗争そのものがテーマだが、後者では主人公の生きざまがメインとなる。映画で例を挙げれば、「仁義なき戦い」シリーズや、その流れを汲む東映Vシネマ系列には前者が多く、高倉健主演作品、特に近年の作品は後者が圧倒的に多い。前者は血で血を洗うバイオレンスや虚々実々の駆け引きが見せ場となり、後者ではヤクザだった過去やヤクザ時代の義理が絡む人情劇になる。

画像 主人公・桐生一馬。彼はすでに現実の世界では希になった真に男を売る任侠の徒だ。決断のひとつひとつは重く、それを背負う強さを持つ。決して器用な生き方はできない。だが、絶対に折れることはない

 「龍が如く」シリーズは、完全に後者に属するドラマだ。主人公・桐生一馬は権力や支配などに関心を持たない。愛する者のため、親友のため、恩人のために拳を振るう。ケンカは滅法強いが、その背中には寂しさと孤独感が漂う。いかに危険とわかっていても、愚かとわかっていても逃げない。打算や妥協を排して、己の信条に身を捧げる。そして常に他人のことを第一に考える。

 一馬の人物像において重要なのはヤクザであることではない。芯の強さ、そこから生まれる優しさと厳しさにある。この人物を単にヤクザは嫌い、で片づけてはもったいない。この点に関しては、一馬役の声優・黒田崇矢さんの演技が素晴らしい。抑制された感情の中にわずかに滲む怒り、悲しみ、喜びをその場その場の展開に合わせて実に絶妙に演じ分けているのだ。この声の名演を聞くだけもプレイする価値があると言っても過言ではない。

 もちろん、一馬の周囲には、粗暴だったり、凶悪だったり、ずる賢かったり、精神がねじけている連中もあまた登場する。しかし、こうした人物は「龍が如く」シリーズにおいては悪役として位置づけられるのだ。主旨はあくまで一馬が体現する男気にある。

画像 冒頭に用意されている回想パート。ここで「はい」を選べば、前作のあらすじが流れる。プレイ済みの人なら、ショートカットすることも可能だ

 次に第2の、前作との関係であるが、これについては第1点以上に安心してもらっていいと思う。冒頭に前作のストーリー概要を紹介するくだりが設けられているので、あらすじレベルならばほとんど問題ない。そして今回の物語は、前作のラストから時間軸的には繋がっているものの、内容的にはかなり独立性の高い話なのである。従って、「龍が如く2」からプレイしたとしても、ストーリー上、混乱することはないはずだ。

 なお、第1、第2の点に絡んで、ひとつ注意して戴きたい点がある。前述したように「龍が如く2」はヤクザ抗争ものではなく、男気のドラマである。ただ、ヤクザ社会を舞台にしているので、その世界特有の用語や概念が頻繁に出てくる。さらに前作で起きた事件の結果、一馬に近しい人々はかなり大きな影響を受けている。これらはストーリーと直接関わってくるだけに、知っていないとどこか靄がかかったような気分を感じる恐れがあるのだ。そこでこれらの点について、後ほど2のストーリーを紹介する際に改めて触れておきたいと思う。そこを読んで戴ければ、すんなりドラマを楽しんで戴くことができると思う。

 さて、最後に残った第3、すなわちアクションゲームは苦手、という点だが、実はこれが一番難しい。「龍が如く2」がアクションゲームなのは事実だし、こればかりは変えようもない。ただ、はっきりしているのは、一般的なアクションゲームに比べると、「龍が如く2」はかなり簡単なほうに属する、ということだ。アクションゲームに慣れている人だと逆に少し物足りなく感じるかもしれないというくらい、サクサクと進めていける。

 とはいえ、ここが肝心なのだが、簡単なのに爽快感は抜群なのである。何しろ、主人公である一馬は伝説の極道、龍と呼ばれるほどの男なのだ。これが弱々しくては話にならない。従って、ゲームスタート時点から一馬はかなり強い。その後、経験値を消費することで能力強化をすることができるので、どんどん強くなっていく。イージーさと爽快感。セガのキャッチコピーに“誰もがケンカで伝説になれる!”とあるが、その通りなのである。だから、アクションが苦手という人も、そんなに負担にならないのではないかと思う。アクション好きならば、能力強化システムの使用を極力控えることで難易度を上げるというプレイも面白いだろう。

画像 回想シーンで前作のダイジェストを見た後には、戦闘方法のチュートリアルが用意されている。バトルの基本となるテクニックを一通り(それでも5種類)教えてくれる。なお、ここで紹介されなかった操作が出た場合は、その都度、チュートリアルが挿入される親切設計になっている
画像 戦闘、というかケンカでは特別な場合を除いて、1人で多数を相手することになる。だが、恐れることはない。伝説の極道の名は伊達じゃない。そこらへんのチンピラなんぞ、敵ではないのだ

 ここまで、「龍が如く2」をプレイにするに先立って抵抗を感じそうな部分についてご説明してきた。いかがだったろうか? もし、これなら行けそうだ、思っていたのと違ってやる気が出てきた、と感じてくださる方がいれば、嬉しい限りだ。

 では、ここでページを改め、「龍が如く2」のストーリーについてご紹介しよう。前述の通り、ヤクザ世界の基本知識もまとめておくので、詳しくない方はご参考にして戴きたい。

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