2度の挫折を経て「FFXI」にハマりつつある独身男性の物語(その2):ヴァナ・ディールをもう一度(2/2 ページ)
サーチコメントの一文が大きな転機を生む(その2)
ある日、戦闘スキルを上げようとソロで戦っているとき、日本人からパーティの誘いを受けた。願ってもないチャンスだったので快く承諾したのだが、狩場がギルド桟橋と言われて少しドキッとした。僕が昔プレイしていた頃にはなかったエリアなので、一度興味本位で入ったことはあるのだが、どの敵を調べても「とてもとても強そうだ」となっていたので、緊張しながら奥へと進んだのが仇となりアクティブのキノコ族に襲われた苦い記憶があるからだ。それ以降、当分の間は行くことを断念したエリアだったのだが、この機会に奥の構造を見ておくのも良いかもしれない。そんな好奇心と恐怖が入り混じるなか、僕は初めてギルド桟橋でのバトルを決意した。
ここでは入り組んだ洞窟辺りを拠点にして、甲虫族を相手に経験値を稼ぐのが主流のようだ。指輪を使っているせいもあるが、獲得経験値がかなり多い。氷属性が弱点の甲虫族なだけあり、僕が装備している両手斧のウェポンスキル「シールドブレイク」も少しは役立っているのだろう。若干パーティに貢献している充足感を味わいながら、いつの間にかレベルが3つも上がっていた。最後のバトルでは僕がうっかり敵をリンクさせるという大失態はあったものの、誰も戦闘不能になることなく安全にパーティプレイが終了した。充実した時間の余韻に浸りつつ、僕はジュノへ戻り(そろそろ新しい装備品でも買おうかな)と思い競売所を覗きに行った。どの装備品を買おうか迷っているところに、さっきまでパーティを組んでいた白魔道士がtellで話しかけてきたのだ。この瞬間が、僕のこの先のヴァナ・ディールライフを大きく変えた思い出深い1シーンである。
その白魔道士は僕のコメントを見て、プレイしたばかりの初心者かと尋ねてきた。コメントに何と書いたかすっかり忘れていたので調べてみると、「ようやくチョコボに乗れるようになりました!」と書いてあった。チョコボを取得したとき、あまりのうれしさに誰にというわけでもなくアピールし続けてきた一文だった。それを見てこの白魔道士は「もしよかったらLSに入りませんか?」と誘ってくれたのだ。
コミュニケーションの難しさを痛感し、外国人からもらったLSを外した僕にとっては何とありがたい言葉だろう。断る理由などもちろんなく、僕は喜んで承諾した。これで僕にも仲間ができた。レベルが上がるのもうれしいが、ともにヴァナ・ディールを過ごす仲間とのつながりができたことはレベルアップ以上に喜ばしいイベントだった。LSをもらって早速装備し、メンバーの人たちと挨拶を交わす。夕方から夜にかけてログインするメンバーが次々と増え、そのたびに挨拶を交わしていく。いささか大変な挨拶だったが、今までは1人ぼっちだったのが、突然10人以上もの仲間ができたことに喜びを感じずにはいられない。現実社会でもそうだが、ほんのささいなきっかけで人とのつながりが生まれるということを改めて実感した。
僕は父親の会社の都合で一度引越しをしたことがある。住んでいる土地、学校など環境がガラリと変わり、なかなか馴染めずに学校ではいつも1人だった。それでもいつの間にか友達ができて、みんなと色んな場所へと遊びに行った。今ではそのきっかけすら思い出せないが、それは本当に些細なことで、僕の新たな世界が広がっていったのだ。今回のLSとの出会いもそれとよく似ている。時間が経つと風化するであろうこの思い出を、僕は今も鮮明に覚えている。そして本作をプレイしていて今でも一番うれしい出会いとなった。
初めて飛空艇から眺めた広すぎる世界
ひと通りの挨拶を済ませたあと、LSに誘ってくれたプレーヤー(以下、リーダー)が「カザム行きの飛空艇パスを取りに行きましょう」と言ってくれた。何のことだがさっぱりわからなかったが、調べてみるとそれがあると飛空艇でカザムというエリアに行くことができ、そのパスを取得するためには3種類のカギが必要になるらしい。そのカギを落とすのが、パルブロ鉱山、ギデアス、ゲルスパ砦かユグホトの岩屋に生息する獣人で、これからその3エリアに行こうと言うのだ。新たなエリアに行けるパスがもらえるとは願ってもないチャンス。もちろん快諾してLSメンバー数人とともに移動開始した。カギは入手確率が低いので、リーダーがわざわざレベル75のシーフにジョブチェンジしてくれ、該当する敵を次々と倒していく。シーフはレベル45になると戦利品を見つける確率がアップする「トレジャーハンターII」(トレハンと呼ばれている)のジョブ特性を習得する。昔は存在しなかったジョブ特性なのだが、この効果のおかげで比較的あっさりと3種類のカギを入手できた。その後も「ほかに困っていることはないですか?」と言ってくれたので、その言葉に甘えてミッションに必要なアイテムの入手を手伝ってもらうことにした。これもトレハンIIの効果が顕著に表われ、僕がソロで該当する敵を倒していたときは一度も落とさなかったのに、そのリーダーが敵を倒すと一発で落とすという驚きの結果に思わず笑ってしまったくらいだ。もはやメインジョブをシーフに変えてしまおうか、というくらいに。
労せずして3種類のカギを入手し、若干「いいのかな」と思いながらも、手伝ってくれたリーダーたちが飛空艇パスをくれるNPCのいる場所まで案内してくれ、ついに飛空艇に乗ってカザムへと行けるようになった。
カザムへ行くことはもちろんだが、実は飛空艇に乗ることも初体験なのだ。それというのも昔は、カザム行きの便がなかったため、ミッションランクが5にならないと飛空艇には乗れず、そこまで冒険を進めることができなかったから。その当時から恋焦がれていた飛空艇での旅。何年もの長い歳月を経て、ついにその夢が叶う時が来たのだ。
メンバーたちと搭乗口で別れを告げ、僕は200ギルを支払って飛空艇へ乗り込む。偶然にも乗客は僕1人だけ。何だかすごくぜいたくな気分になった。初めての空の旅にいささか緊張し、ついに飛空艇が大空へと飛び立った。画面が切り替わり、僕は一目散に甲板へと走り出す。初めて見る遥か上空からのヴァナ・ディール。見渡せる広大な風景は、今は僕だけのものだ。到着先のカザムとは、いったいどんな場所なんだろう。一切の不安はなく、ただ好奇心だけが無限に広がっていくのを感じた1日だった。
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