22年の時を越え「ダンクーガ」がTVアニメで復活
TVアニメ「獣装機攻 ダンクーガ ノヴァ」のアフレコ取材の模様をリポート。この作品は22年前に放映されていたTVアニメ「超獣機神ダンクーガ」の新作TVアニメということで、出演者の方々にもいろいろと思い入れがあるようだ。
1985年と言われて、皆さんはどんな年だったと思い返せるだろうか――。
バブル景気の引き金とも言われる「プラザ合意」が成され、日本経済が大きな転換期を迎えようとしていた年。青函トンネルの開通や、日本電信電話公社が日本電信電話(NTT)へと民営化したことなどが話題となり、「ネバーエンディング・ストーリー」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などの洋画が大ヒットした年でもある。スポーツで言うなら、KKコンビが甲子園を席巻し、阪神タイガースが21年ぶりのセ・リーグ優勝を成し遂げた。TVでは「夕やけニャンニャン」がスタートし、おニャン子クラブが一気にスターダムへとのし上がっていった。
印象深い出来事はたくさんある。だが、子供だったためによく覚えていないという人や、まだ生まれていなかったという方も大勢いると思う。あれからもう、22年もの月日が流れているのだ。
だがその22年という時を越えて、復活を遂げたアニメがある。「超獣機神ダンクーガ」だ。1985年に生まれたそのアニメの新作TVアニメが「獣装機攻 ダンクーガ ノヴァ」として現在放映されている。ここでは、「獣装機攻 ダンクーガ ノヴァ」の物語を知る前に、「超獣機神ダンクーガ」の物語に触れておこう。
地球支配を目論む謎の侵略者、ムゲ・ゾルバドス。その男が率いるムゲ帝国の侵略によって、地球は壊滅的な被害を受けていた。そんな中、軍人のロス・イゴール長官は、帝国の脅威に対抗するべく、超兵器「獣戦機」の開発に成功した。そして、藤原忍をはじめとする4人の隊員による「獣戦機隊」を結成し、ムゲ帝国と戦いを繰り広げていくのだった――。
熱く激しい物語が展開し「超獣機神ダンクーガ」は一躍大人気に……。と思いきや、実はこの時の放映は、途中で打ち切りになってしまう。当時のTVアニメは1年以上の長期の放映が主流だったのだが、「超獣機神ダンクーガ」は全38話(8カ月)で最終回を迎えることになってしまったのだ。
ところが、である。当時タイムリーでTVアニメを見ていた人はもちろんのこと、まだ幼くてTVアニメを見ていなかったという人の中にも、「ダンクーガ」という名前に聞き覚えがある方は多いのではないかと思う。というのも、「超獣機神ダンクーガ」は、一度は打ち切りになってしまったものの、ファンの圧倒的な支持に後押しされる形でOVAとして復活を遂げたのである。その後も、OVAの続編や小説などが発売され、1997〜1998年には「超獣機神ダンクーガBURN」というタイトルで漫画化もされている。また、その一方で人気ゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズに登場するユニットのひとつとしてご存じの方も多いだろう。
そして2007年。「超獣機神ダンクーガ」の新作アニメとして「獣装機攻 ダンクーガ ノヴァ」の放映が開始されることとなった。
その物語の舞台となるのは、22世紀の地球だ。世界のいたるところで内紛や局地戦が勃発し、人々は苦しんでいる。しかし、世界が微妙な均衡を保っていられたのは、「ダンクーガ」なるロボットが各地に赴き、各戦場で劣勢の軍を味方していたからだ。そんな中、女性F1レーサーの飛鷹葵をはじめとする4人の人物が、ダンクーガの新たなるパイロットとしてスカウトされる。彼らは、「悪も正義もなくどちらも勝たせない」試運転ともいえる戦闘で、ダンクーガの圧倒的な強さを知り、高給&専任カウンセラー付きの転職を勧誘されるのだった。彼らは、ダンクーガパイロットへの転職を思案しはじめるが……。
そしてやがて、未知なる敵が出現し、地球を攻撃してくることになるが、「ダンクーガ ノヴァ」はそれまで隠されていたすべての力を振り絞って、敵を迎え撃つことになるのだった。果たして「ダンクーガ ノヴァ」は真の敵から、地球を救うことができるのか!?
AOI HIDAKA
(声/池澤春菜)
ダンクーガ ノヴァのメインパイロット。一流の女性F1レーサーで、副業でモデルもやっていたほどの美人。レーサーの地位を極めてしまい、何かほかにできることがないかと考えていたときにダンクーガチームに誘われて参加することになる
KURARA TACHIBANA
(声/桑島法子)
ダンクーガ、ノヴァライガーの女性パイロット。若くしてトップクラスの麻薬捜査官にのぼり詰めた。だが、麻薬シンジゲートのボスを逮捕したことから、麻薬組織に狙われている
SAKUYA KAMON
(声/鈴木達央)
ダンクーガ、ノヴァライノスのパイロット。無職のホームレスだが、金銭的に困った様子はまるでないなど、謎を秘めている。熱血ぶってみせるものの、実はクールなところがある
(声/藤原啓治)
ダンクーガ基地の司令官だが、ダンクーガの組織の中では中間管理職的な存在。ダンクーガチームに対して、偉そうな態度は見せない。むしろ、気さくなおじさんタイプである。ただし、やるときはきちんと仕事をこなす有能な人物でもある
(声/大原さやか)
ダンクーガの整備主任の女性。25歳だが、ここ数年ロボット整備に生き甲斐を見いだしてしまい、男性との交際がとぎれている。最近は事の重大性に気づき、男性関係に対して欲求不満気味だったりする
「ダンクーガ ノヴァ」には、前作のように正義のために情熱を燃やしながらがむしゃらに敵と戦っていたヒーローの姿はない。少なくとも序盤におけるパイロットたちの中には、「世界平和を守るため」とか「正義のために」などと考える者はなく、高い給料や専任カウンセラー付きの生活に憧れて、ダンクーガのパイロットに転職しようかと考えている。それは、ヒーローとしての正義感の現れではなく、仕事の一環でしかない。
彼らの元の職業というのもとても興味深い。女性F1レーサーである飛鷹葵や麻薬捜査官の館華くららなどは、特殊な能力を必要とするそれぞれの職業の中でもトップクラスの実力を誇るなど、従来のヒーロー像に近い。営業サラリーマンのジョニーは、なじみ深い存在と言えよう。営業成績は優秀ながらも、敷かれたレールの上を歩いているかのような自分の人生に疑問を抱いているなど、現代の青年たちの姿が投影されているようにも思える。だが、極めつけは加門朔哉だ。元ホームレスという前代未聞のヒーロー。彼がどのような秘密を抱えているのか。そして、ダンクーガのパイロットとしてどのように戦いを繰り広げていくことになるのか。期待せずにはいられない。
また、前作「超獣機神ダンクーガ」との関連性も気になるところ。中でも鍵を握ると見られるのが、本作に登場する「F.S.」なる人物。この男は、ダンクーガ ノヴァのパイロットである飛鷹葵たちに、モニターを通じて指示を与えていく謎多き人物である。その声を担当するのは、前作の主人公・「藤原忍」を演じた矢尾一樹氏。「藤原忍」と「F.S.」……声を見ても名前を見ても、この2人にはなにか関係がありそうだ。矢尾氏はインタビュー中「(この2人は)まったく別のキャラです」と語ってはいたのだが……。真実はアニメの放映を見て知るべし!!
さて、最後に、本作の登場人物を演じられる声優陣の方々のコメントをいただいたので、紹介しよう。
―― まず始めに、意気込みをお聞かせください。
矢尾 まさかもう一度「ダンクーガ」が復活するとは思ってもいませんでした。水面下でいろいろなうわさは聴いていましたが、それがようやく水上に上がってきてくれたという感じですね。それがすごく嬉しい。ロボットものではありますが、その中に描かれる人間ドラマが魅力的な作品だったので、それがどのように描かれていくのか楽しみにしています。
池澤 最近リメイクものの作品も多くて、関わらせていただく機会も増えているのですが、個人的には諸刃の剣だなと思っているんです。というのも、熱狂的なファンが多くいたりするので、期待が高まると同時に、厳しい意見を聞くこともあるんです。すでに抱いているイメージもあると思いますし、「あの作品をどう描いてくれるんだ」みたいな期待もあると思うんですよ。そういう昔から見てくださっている方々の期待を裏切らないような、そして今の世代の方々にも楽しんでいただけるような作品にしたいと思っています。前作の主人公を演じていた矢尾さんがいてくださるわけですし、作品に根付く精神の部分はしっかりと受け継いでいければと思います。
桑島 とても有名な作品なので、ファンの方々に注目していただいているということは肌で感じております。諸先輩方の力も借りつつ、いい意味での新旧の融合ができればなと思っております。
鈴木 正直、僕は前作の放映時はまだ1歳だったので、ちょっと拝見してはいないのですが、某ゲームなどでロボットの名前やキャラの声は知っていました。それを見た時には、素直な感想としてカッコイイなと思っていました。そして、そういう作品を今回演じさせているということで、DVDを拝見させていただいたのですが、人間ドラマが素晴らしいんですよ。戦争とは何かという重いテーマが描かれていたりして、すごく深いんですよ。前作があって今作があるということを考えると、演じる側としては前作を越えられるくらいのパワーを発揮していきたいなと思っています。
泰 僕は26年前の放映を見ていた世代なので、それの作品の続編に出られるということがまず嬉しい。何年か前の某雑誌でポスターが入っていたんですよ。それを見たときに、「おおっ!!」て。これは一体どういう意味なのかと楽しみにしていました。
監督 ダンクーガというのは、実は僕のデビュー作品なんです。18歳でこの世界に入って、そのときはまだ絵描きでしかなかったんですが。本作の監督に選んでいただけたのは、当時のオリジナルスタッフということもあってのことではないかと思っています。偉大な諸先輩方のスピリッツを受け継いだ作品にしつつも、18歳の自分が「自分だったらこうするのにな」と思っていたことなんかを反映することができればなと思っています。
実は、ダンクーガというのは、自分が望んでいてもできないようなタイトルだと思っていたんです。なぜここにきて復活したのか僕にはわからないんですが、アニメのシリーズものっていうのは本来、何年周期とかで次回作が発表されたりするわけですよね。だから、「ダンクーガ」に関しては、もうリメイクはできないんだろうなって勝手に思っていたわけです。
ただ、自分の監督のポリシーとしては、リメイクものはやらないっていうのがあったんですよ。でも、このお話をいただいたときに、即「やります」って受けさせていただきました。ダンクーガだけは例外という感じですね。
―― 演じるキャラについての感想をお聞かせください。
矢尾 「F.S.」というキャラを演じています。今回の役どころは自分でも最近演じていないような、ひと言づつしか喋らないようなキャラなので、アフレコ時には少々緊張してしまいました。「F.S.」というキャラクターは、かつて僕が演じた藤原忍とは関係があるのかという謎を抱きながら新たなキャラとして演じていけたらと思います。
池澤 葵はとても自立していて、すべてを自分1人の力でくぐり抜けてきたんだろうなと、思わせてくれるところがあります。でも今後、彼女にとっては初めて、自分の力だけでは切り抜けられない事態に直面すると思うんです。そんなときに、メンバーが力を合わせてどう乗り越えていくのか気になります。また、「ダンクーガ」のウリのひとつとも言える熱血の部分がどう出てくるかとても楽しみです。しっかり叫んで「ヒーローらしいヒロイン」にできたらなと思っています。
桑島 一見大人しそうに見えるくららですが、台本を読んだらすごくアクティブで、明晰な女の子でした。その反面、女の子っぽいところもあったりするらしいので、いろいろな面を含めて彼女の良さを表現していければと思います。本作では4人で声を合わせて「ダンクーガ ノヴァ!」と叫ぶセリフがあるのですが、周囲と声を合わせるという演技はあまりしたことがなかったので、新鮮で楽しかったです。これからも頑張りますので、ぜひ応援してください。
鈴木 朔也はダンクーガのメンバーのなかでももっとも感情の起伏が激しいキャラクターですね。そんな彼が、なぜホームレスになったのか、なぜひとりになることを選んだのかということを考えながら、自分らしい朔也を演じていければと思っています。
泰 僕が演じるジョニーは。サラリーマン生活に鬱積したものを感じて、ダンクーガへの道を歩み始めています。一見クールなキャラなのですが、それは自らが抱える何かを隠すための彼なりの表現のひとつなのかなと思っています。彼は心の中にいろいろと複雑なものを抱えているようなので、そういう部分をふまえて演じていきたいと思います。
監督/大張正己 ストーリーコンストラクション・脚本/首藤剛志、三井秀樹 キャラクターデザイン/KAZZ ダンクーガコンセプトデザイン/ 村上克司 メカニックデザイン/大張正己、中北晃ニ美術監督/勝又激 音響監督/岩浪美和 音響スタジオ/神南スタジオ 撮影監督/大熊義明 色彩設計/梅田祐樹 アニメーション制作/株式会社葦プロダクション 製作/「ダンクーガ ノヴァ」製作委員会
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