くねくねハニィが語る日本と欧米のゲーム作りの違いくねくねハニィの「最近どうよ?」(その11)(2/3 ページ)

» 2007年06月18日 00時00分 公開
[くねくねハニィ,ITmedia]

承認承認承認!

 また、縛られているのはスペックだけではないのよね。品質や倫理に関してプラットフォーマー(ハードウェアメーカー)からの制約がある。まず、ゲームを開発する前のおうかがいである「企画承認」(コンセプトアプルーバルといいます)、そして開発最終工程である「マスター承認」。これがないとそのハードウェアでは発売できないわけで、ソフトを作る人や売る人の独断で開発から発売までできるわけではないのですな。ここがPCとの大きな違い。こういう観点で見ると、品質や倫理もひっくるめてパブリッシャーが自らの責任でソフト開発、発売できるPCは、自由度の高いプラットフォームと言えましょう。

 だからこそプラットフォーマーからお墨付きを受けている家庭用ゲーム機専用ソフトは、品質的に安定感があったわけですね。ほとんど誰の制約も受けていないPCゲームソフトは、ユーザーにとっては「買って遊んでみないとおもしろいかわからない」物だったし、コピー、返品、マークダウンリスクに備えているため、とても「高額」なものだったのね。ちなみに欧米で映画ライセンスなどの「版権」ものに頼る傾向は、ここからきているのかもしれないね。ユーザーに対して安心感を与えるためにも、パブリッシャー側としてはビッグネームが必要だったわけですな。

 せっかく世に出そうとしてもプラットフォーマーという門番のOKが出ないと発売すらできないこともある家庭用ゲーム機向けソフト。日本で発売されている、つまり承認されているソフトだからといって、必ずしも欧米で発売できるとは限らないのですよ。倫理観や品質は市場によって違うから、そのエリアを統括する法人(SCEならSony Computer Entertainment America、任天堂ならNintendo of Americaなど)に改めて申請をしなければならないのね。せっかくワールドワイド向けに作ったつもりのソフトも日本のみの発売だった、なんてことはよくある話なんですよ。厳しいよねぇ。

 逆も然りで、欧米のソフトが残虐すぎて日本で発売できないとか、内容変更を余儀なくされるとか、よく聞く話だよね。日本市場が欧米市場に負けないくらいの大きさだったときには、欧米のパブリッシャーがこぞって日本攻略を図っていたけど、成功の声を聞く前に、彼らにとって日本市場がそれほど魅力的でなくなってきたのか、「異質」と捉えられてあまり相手にされなくなってきた感があるのはハニィはとっても悲しいぞ……。

職人気質があだになる???

 世はまさにハイスペック時代。家庭用ゲーム機は「ゲーム機」でありつつも、PCの能力へと近づいています。しかしながら制約はつきまとい、コストは高額になるため、ソフトメーカーはマルチプラットフォーム化を余儀なくされる時代になったのですね。ここに日本のソフト開発の落とし穴が待っていた! 家庭用ゲーム機以外に逃げ場がなくなってしまっているじゃない! 日本にはPCゲームソフト市場は家庭用のものほどないし、PC向けに開発する人よりも、家庭用ゲーム機に向けてだけ作っていた人たちが多いんだから。限られたスペック内で最良のものを作り出す「職人気質」な日本の開発陣だけど、スペックが上がったときに、コスト高も含めてどう対応するのか?

 ゲームソフトをマルチプットフォームで展開するにあたっては、スペックの高いものから作って下位機に落とし込むというのが効率的な流れだと思うんだけど、欧米の場合は、まずPC向けに作ってからXbox 360やPS3などのハイスペック家庭用ゲーム機向けに落とし込むという流れが一般的なの。日本にいるとあんまり気がつかないんだけど、欧米では、家庭用ゲーム機向けのタイトルがPC向けでも作られていることはごくフツーのことで、万が一家庭用ゲーム機のさまざまな制約によって発売できない場合でも、PC向けは自由に販売することができるのだよ! また、家庭用ゲーム機向けに販売してコケた時にも、PC向けである程度販売できれば、トータルのソフト開発の回収も難しいことではないのですな。

 結果的にはアプローチが正反対である、ということが言えますね。高スペックのPCソフトを制約のある家庭用ゲーム機に移植していた欧米のソフトメーカーと、制約のある家庭用ゲーム機向けに精一杯作っていた日本のソフトメーカー。特にXbox 360なんかでは、PCソフト開発資産はほとんど生かせるわけで、欧米のソフトメーカーが台頭してくるのは当然のこととも言えるよね。コストの面でも欧米ソフトメーカーからすると日本のソフトメーカーに比べて「単に上がる」とも言えないのよね。むしろ作り直していた部分がそのまま使える、とかいうメリットもあったりして。

 これも余談ですが、現在の欧米ソフトメーカーは、効率を考えて、PCソフトからまずXbox 360向けに移植、それからPS3やその他のハード向けに移植するのがスタンダードになっているようですね。PS3は本来のスペックをフルに活用してもらうためにももっと存在感を上げていかないといけないと思うの。効率よりもPS3で先に売ったほうが利益率が高い! という状況になればソフトメーカーだってPS3から作ってくれるはずですから!

ネットワーク対応の遅れ

 PCゲームソフトを機軸に開発を行ってきた欧米のパブリッシャー/デベロッパーがネットワークに強いのは当たり前と言えるよね。MMORPGやRTSなどのマッシブなネットワークゲームは、ずいぶん前からPCの世界では大きく展開されていたわけだし。それに伴うサーバなどのインフラも、物理的にもノウハウ的にも現在の家庭用ゲーム機向けのネットワークの元になったことは間違いがないのだ。日本では対応が難しいと言われていたプレイステーション 2のネットワーク対応も欧米のメーカーさんたちは難なく(実は大変だったと思われますが)こなしていたわけですね。

 ネットワークがなかった、または制限されていた家庭用ゲーム機向けだけであれば、ネットワークをふんだんに盛り込んだソフトを作ることはリスクでしかなかっただろうけど、PC向けならその制約は取っ払われるもんね。日本で「ネットワーク機能つき」というと、ネットワークにつないでも遊べる(裏を返せばスタンドアローンがメイン)、ってことでしかなくて、アイテムダウンロードやランキングのアップロードくらいがメインだったけど、欧米では思い切ったネットワーク機能がつけられてたのよね。これもPC向けで最初からネットワークありきのゲームを家庭用に落としこんでいるので、単なる付加機能としてのネットワーク対応ではない。

 スタンドアロンを前提としていた日本の家庭用ゲーム業界においては、この急激な対応についていけなかったのもやむを得ないと思うの。歴史が違うもんね。欧米が持つネットワークインフラは彼らの試行錯誤の結晶でもあるわけだし。このネット対応に遅れた日本のソフトは家庭用ゲーム機向けにいよいよ厳しい時代を迎えることになったと言えます。

 そんな中、カプコンが北米でXbox 360向けに発売した「LOST PLANET EXTREME CONDITION」は、オンラインを駆使したすばらしいタイトルで、北米のコアユーザーに向けて60万本も売り上げてくれました(2007年4月末現在)。「日本のゲームはネット対応が下手」というレッテルを払拭してくれた歴史的なタイトルだと思うハニィであった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」