20周年を迎えた「メタルギア」シリーズはさらなる新展開へ:「METAL GEAR 20th ANNIVERSARY PARTY」(4/4 ページ)
「ほんとはMSXなんかやりたくなかった(笑)」――20年ぶりの本音が飛び出すトークセッション
記念パーティーでは、これまでの新作紹介のほか、トークセッションも開催された。まずは小島監督とパワプロプロダクション エグゼクティブプロデューサーの上原和彦氏、MSXアソシエーションの専務理事である横井英克氏が登場してのトークセッション第1部が開催された。
「MSXは25年の歴史があるから、今日は濃い話を聞けると期待している」と小島監督。しかしいきなり「MSX時代は闇。プレイステーション時代は光(笑)」と語り出すなど、監督が一番濃い話を語り出した。「陰と言いますか、ながーーい売れない時代です(笑)」(小島氏)
菊地さんはMSXを知らないらしい。横井氏によると「MSXの略は『マイクロソフトX』の略が公式見解」だとか。ただし統一規格を作るときに、「西和彦氏が松下電器に行くと『松下のM』です、ソニーに行くと『ソニーのSです』というプレゼンをするから、段々話からなくなっちゃった(笑)」。
上原氏は「なぜ『パワプロ』の上原がここにいるのか知らないと思うので説明しておくと、ボクは小島と同期なんです。不遇のMSX時代をともに過ごして、『メタルギア』のサウンドを担当したんです。そこでここにいるというわけです」と語る。「『スナッチャー』も、サウンドとプログラム含めて担当したんだよね」と小島氏。そのあと「メタルギア2」も上原氏は担当したそうだ。
横井氏のMSXとの出会いは、ファミコンだとゲームばかりで勉強しないので、PCの勉強をしなさいと押しつけられたところから始まったそうだ。おもしろいゲームが出ないかなと待っていると、ざくざくと出てくるのはコナミのゲームだった、と横井氏。「ベスト10の中の1位〜4位はコナミのゲームだった」(横井氏)。コナミからMSXのゲームは出るものの、MSX 2のゲームはなかなか出なかったときに、「スナッチャー」がようやく出た。そこから当時の「S.C.C.サウンド」について語り出す上原氏。「ソフトの中にハードを入れたのがS.C.C.なんです。ファミコンに比べて音がイマイチなんで何とかしようと言うことで、ソフトの中に音源チップを入れちゃった」(上原氏)。
「当時はアーケードゲームの基板から作れる会社だったんです。そこからずーっと下がってきて、何もかもしょぼいのがMSXのチーム。そこでどうしたらいいかというのを常に考えていましたね。アイディアで勝つとか、センスで勝つとか。その中で生まれたのが『メタルギア』なんです。ファミコンでのソフトを作りたいと思っていたんですが、MSXに回されちゃって、嫌々やってた(笑)」(小島氏)。
「でも『メタルギア』はただ、ハードの限界をすべて突破しているソフトで、熱意に満ちあふれていた。それにユーザーは感動するんです」と横井氏。小島監督も「ボクがアーケードの部署や、ファミコンの部署に配属されていたら、『メタルギア』は生まれていなかったでしょうね」と語る。「そもそもコンバットゲームを作ってくれと言うオファーから生まれたんですが、当時アーケードではやっていたんですが、MSXでは弾を飛ばせない。スプライトを横方向にいっぱい出せないんで、弾が出なくてもいい、敵が少なくてもいいという戦争のルールを考えた結果、ステルスという考えが生まれた。MSXの部署に入ってよかったなあと思う」(小島氏)
上原氏も「僕もMSXの部署に入っていなかったら、実況を取り入れるという発想はなかったと思う。チープなハードでどれだけ限界にチャレンジできるかを常に考えていたので」と語るが、すかさず小島監督は「そう言うけど、80年代前半にスーパーファミコンのチームへ『お先に』ってくら替えしたんですよ」と場内を沸かせる。「そりゃやっぱり売れる方に行きたいから(笑)」(上原氏)。
「まさか20年前には、小島とこのようにパーティーで祝うことができるとは思わなかった」と上原氏。生涯現役でお互いやっていいこうとエールを交わしていた。小島監督は「MSXで『メタルギアソリッド5』を出してみたい(笑)。できないことが多すぎるんで、原点に戻ってみるのもいいかも」と語るが、「でもハード売ってませんからね。だからまたわたしは闇の時代に戻っていく」とリップサービスを欠かさなかった(なお、会場内でMSXを持っている人が3人しかいないことが分かると「作るのやめます(笑)」とのことだ)。
光の時代――プレイステーションフォーマットに移ってから
引き続いて、アートディレクターの新川洋司氏、エンターブレインの浜村弘一社長に加えて、スネーク役の声優、大塚明夫さんが登場した。
いきなり「前と違って光り輝いてますね。まぶしいですよね。オーラが違いますよね」と飛ばす小島監督。大塚さんは「わたしはMSXの時代知りません。すいません(笑)」と断りながら、「はじめはゲームをしている大人を見ると“ばかなやつだなあ”と思っていたんですが、自分が『メタルギア ソリッド』の仕事をするようになって、なんておもしろいんだ、と思ったらハードゲーマーになってました(笑)」。
プレイステーションになって大きく進化したのはもちろん、3Dでの表現。新川氏によると、「開発陣としては誰1人3Dをやったことがなかった。最初から作り上げていったので苦労した」そうだ。「闇の時代と違ってバジェットが違うんですよ。取材にお金をかけることもできるし。それに声が付いていますし、3Dでもあるという」(小島氏)。
スネークが初めてしゃべったのはプレイステーションからだが、さまざまなスネークの演じ分けについては、「いろいろなスネークを演じましたが、自分の中ではちょっとずつ、パーソナリティの違いを考えながらしゃべっている」と大塚さん。ただし「オールドスネーク」は一番やっかいだったそうだ。大塚さんは、どういう感じに演じるのかは最初に決めて、そこから進んでいくそうなのだが、小島監督によると、「MGS2」や「MGS3」では大塚さんにあわせて作っていったそうだ。
ところで、光の時代になって一番うれしかったのは広告にお金がかけられることだそうだ。「MSXの時代には、いろいろな雑誌があったけど広告なんて打てなかった。一番最初に載ったのは『グラディウスフェア』の右上にあった小さいコマに『メタルギア発売』(笑)。でも光の時代にはTVCMもあるし。ほんとによかった(笑)」(小島氏)。
プレイステーション版「メタルギア ソリッド」は他言語版展開をしたのはご存じの通りだが、最後のスペイン語版を出したときには、アフレコなどの対応で、最初の発売から半年たっていたとか。今回の「MGS4」は全世界同時発売。「世界を相手にしたことで、光をもらえました」(小島氏)。
「『MGS4』が佳境なんですが、いろいろなところで(続編は)いややいややと言っていましたが、やっぱり『メタルギア』っていいなあと思いました」と最後に小島監督。
パーティーの最後のあいさつでは、最初の「メタルギア」では言葉もしゃべれなかった。それが次に言葉を話し、音楽を奏で、3Dになり、他言語を話し、感情を表現できるまでに成長した、と小島監督。「まさしく赤ちゃんがつかまり立ちをして、はいはいをして、立ち上がったという感じ。20歳を迎えて大人入りした。ようやく1人前のブランドとして認知されてきた」(小島氏)。
「MGS4」はソリッド・スネーク最後の物語として作っているが、「メタルギア」のブランドはこれからも続いていくだろう、と小島監督。「『メタルギア』は開発陣のものでも、企業のものでもない。皆さんのもの。ラブコールが続く限り、30年、40年と作り続けて、次のアニバーサリーで皆さんに会えるようにしていきたい」(小島氏)。
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