回転に頭を悩まし、水槽に心を癒され――世にも不思議な「シータ」の世界:「シータ」レビュー(2/2 ページ)
アクアリウムパズルで水槽をきれいに
フィッシュモードは、前述した回転パズルをプレイしつつ、本作独自のアクアリウムパズルをプレイして、水槽を浄化することが目的のモードだ。
手順としてはまず、フィッシュモード内の回転パズルをどんどんクリアし、赤、青、緑などのアトムを入手する。パズルをある程度解き終わったらアクアリウムパズルに挑戦しよう。アクアリウムパズルでは、上画面が水槽、下画面がアトムフィールドと呼ばれる区域に分かれている。上画面に表示されるサンプルに従って、下画面に表示されるチャージフィールド(白い円)にアトムを入れることでモレキュール(分子)が作られ、上画面の水槽に良い影響が与えられる。例えばサンプルに赤いアトムが3つ、緑のアトムが1つという円が表示されていたら、下画面のチャージフィールドにそういう構成になるようにアトムを放り込めばよい。
操作はすべてタッチペンで感覚的に行える。ふわふわと漂っているアトムをスライドしてチャージフィールドに導くのみだ。ただ導くのみとは言っても、水の中の挙動を再現しているので、なかなか思うようにアトムが動いてくれなかったりする。また、ブラックアトムというお邪魔者がいて、モレキュールができるのを阻止しようとするので、ブラックアトムをうまく排除しながらアトムを集めていかなくてはならない。
サンプル通りにアトムを集めてモレキュールを作ることができたら、上画面の水槽が見る見る浄化されていく。最初は緑色に濁っていた水も徐々に澄んでいき、何もいなかった水槽には色とりどりの魚が増えていく。そんな画面の変化を楽しみながら、アトムをかき集めるのが、アクアリウムパズルだ。
フィッシュモード内のこのプレイは、アクアリウムパズルと銘打たれてはいるが、パズル性は希薄な印象だった。パズルというよりは純粋なタッチアクションによるミニゲームと言うべきか。回転パズルが要求してきたような高度な思考は必要とせず、まったりと何となくプレイしていても進行する。後半はブラックアトムの動きがいやらしいので多少難易度は上がるが、それでも全体的な難易度はかなりイージーな方だ。回転パズルが難しい分、アクアリウムパズルではゆったりと癒されてほしい、というのが狙いなのだろうか。個人的にはもう少し歯応えのある要素があってもいいかな、と物足りなく思ってしまった。
本体をタテに持って自分だけのアクアリウムを眺めてみる
マイアクアリウムはプレイ中に手に入れた魚を鑑賞できるモードで、このモードのみニンテンドーDS本体をタテに持ってプレイする。
プレイとは言っても、飽くまでも魚を鑑賞するのみなので、特にこれと言って操作する必要はない。ただただきれいな水槽の中にいる魚を眺めていればいいのだ。魚のグラフィックはニンテンドーDSの描画能力を考慮すればまずまずの及第点と言ったところか。魚好きならば楽しめることだろう。
しかし、マイアクアリウムには最初から魚がいるわけではない。パズルモードやフィッシュモードのプレイにおいてマイアクアリウム用の魚を入手しなくてはならないのだ。アクアリウムパズルには基本的に赤、青、緑のアトムとブラックアトムしか存在しないが、まれに黄色いアトムが現われる。この黄色いアトムを赤いアトムが入ったモレキュールに組み込むことで、新しい魚を入手できる。その他にパズルモードの進行などで魚を入手できるケースもある。
また、本作における面白い要素「アクアコール」でも新しい魚が入手可能だ。本体2台と「シータ」のDSカード2枚があればアクアコールができる。2台の本体でそれぞれマイアクアリウムの画面を表示し、本体同士を近づける。送る側の本体の十字ボタンを長く押すことで、もう一方の本体に魚を送ることができる(送れることもあれば、送れないこともある)という一風変わった通信プレイだ。アクアコールでしか手に入らない魚もいるので、友人が本作を持っていたらぜひ試してみてほしい。
マニアックだけど、不思議な魅力を持つパズルゲーム
冒頭で述べたように、本作には大きく分けて3つの要素がある。回転パズル、水槽を浄化するアクアリウムパズル、手に入れた魚を眺めるマイアクアリウムだ。この中でメインはやはりハードな難易度となかなかのボリュームで立ちはだかる回転パズルだろう。
“魚が好きで癒されたいけどパズルは苦手で……”と言うユーザーであれば本作には苦労するかもしれない。とにもかくにも回転パズルを解いていかなくては先に進めないからだ。逆に言えば“じっくり思考型のパズルが大好きだけど、魚には興味ないな……”というユーザーの方にこそ需要はあるような気がする。当然ながら、パズルも魚たちも好き! という人には本作をオススメする。だがパズルと魚が同列に並ぶゲームっていったい何なんだ……、と書いてて我ながら思ってしまった。
そう。パズル要素とアクアリウム要素の融合というコンセプト自体が、何だか奇妙で不思議でかなり人を選ぶ感はあるのだ。万人に受け入れられるタイプのゲームではないがツボにはまる人には愛される、そんなマニアックかつ渋い雰囲気が本作からにじみ出ている。ただ、いかんせんもどかしいのは、筆者の拙い文章で回転パズルやアクアリウムの不思議なプレイ感覚が完全には伝わっていないだろう、ということだ。事前にプレイ感覚を知ってもらうことが大事だということを考慮してか、公式サイト内にはパズルモードのお試し版が存在しているので、気になった方はぜひやってみてほしい。そしてピンと来たならば、本作をプレイしてみてはいかがだろうか。秋の夜長にパズルと魚とたわむれるというのも一興だ。
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