ネットワークで全世界の人と「ナイツ」という夢を共有する:「ナイツ〜星降る夜の物語〜」インタビュー(2/3 ページ)
“全世界の人の夢”をつなげるネットワークという機能
――続編を作るに当たって、どの点に気をつけて制作されたのでしょうか。
飯塚 「前作ファンの期待に必ず応える」ということは、制作期間中つねに頭にありました。それと同時に、わたしも含めた当時の開発スタッフで共有していたナイツの世界観、当時思い描いていた世界観を壊していないか、というところにはとくに気を遣いました。前作の「ナイツ」で表現できた世界観はわずかでしたが、裏設定のようなものは当時の開発者の中でもしっかりと共有し、構想を考えていましたので、それを崩さないようにしています。
また、今作の大きな特徴として、ネットワーク対応が挙げられます。ナイツの世界観をネットワークを通じて、全世界の皆さんが共有できる機能です。当時わたしは「ナイツ」を制作するにあたって”夢の世界”というものをいろいろ調べたんですが、わたしたちの見る夢というのは、実はその根底で1つに結ばれているという説があるんです。「ナイツ」の描く世界観でもそう定義しています。ネットワークという機能は、「みんなの夢は実はつながっているんだよ」という、当時わたしが描いていたナイツの構想にマッチしていまして、夢の世界を共有するということは、今回絶対に入れたかった機能の1つなんです。
今作ではまず、2プレーヤーでのネットワーク対戦ができます。「ナイツ」と「リアラ」のどちらが先にゴールできるか、というゲームなんですが、もう1つナイツらしい機能として、「マイドリーム」という世界をネットワークで共有するという機能もあります。「マイドリーム」とは、ナイトピアのステージの中に生息する小さな生き物「A-Life」たちを、パラループで吸い込むことで転送できるA-Lifeたちの憩いの広場のことです。
マイドリームは、最初何もない、フラットな世界なんですが、生物がいろいろと入ってくることで、山ができたり池ができたり、いろんなオブジェクトが建ったりとさまざまに変化していきます。自分が連れ込んできたA-Lifeによって、自分オリジナルの世界に生まれ変わるんです。前作でもナイトピアンを育てることはできましたが、自分で楽しむことしかできませんでした。今回は、そのマイドリームを、全世界の皆さんで共有できるわけです。
マイドリームはこのように、A-Lifeによって変化していくわけですが、オリジナルな世界が生まれると、それを人に自慢したくなりますよね。ネットワークに通じている扉が用意されているんですが、ここから全世界のマイドリームに遊びに行ったり、自分のマイドリームにお誘いしたり、ということができるようになっています。生息する生物も十人十色の変化をすると思うんですが、ネットワークを通じて、無限に広がるマイドリームへ遊びに行って、「こんな生物がいるんだ」というような、新たな発見ができればいいなと思っています。
それともうひとつ、「ナイツ」はワールドワイドタイトルですから、言語の壁を越えたコミュニケーションができるように、簡易的なアイコンで感情を表せるようになっています。アメリカの人にも、「ピアン ちょうだい」や「あなた だいすき」という意思表示ができるわけです。タイピングしているとイヤな言葉が出てきたり、初めての人に「こんにちは」とあいさつするのも恥ずかしかったりしますよね。ネットワークでは人と接することに抵抗があることも多いと思うんですが、そういうことが一切ないように、全世界の人の夢をつなげられるように考えました。
マイドリームでの交流は、遊びに行きたい人と遊びに来てもらいたい人をマッチングさせることで実現しています。遊びに行く先は、ともだちコードを登録した友達、もしくは見知らぬ人という2つの選択肢を用意しています。そちらの設定を選べば、世界中のどこかにいる誰かのマイドリームへ遊びに行けます。運がよければ、ナイトピアンをもらえるかもしれませんね。
ちなみに、マイドリームはWiiの「お天気チャンネル」のデータが反映されるようになっています。持ち主が住んでいる土地の気象データによって、晴れだったり、曇だったりするわけです。任天堂さんに「お天気チャンネルのデータを使えませんか?」と相談したところ、データを参照するライブラリを、快く用意していただき実現することができました(関連記事参照)。
この仕組みを使うのはWiiのタイトルとしては初だと思いますが、晴れていたり曇っていたりと、ビジュアル変化だけがウリなわけではありません。リアルな天気と連動していますので、「最近日照り続きで暑いよなあ。そういえばナイトピアンたちは大丈夫なんだろうか?」と思ってマイドリームを見に行ってみると、みんなベターっとしていたりして(笑)。そういう現実の状況から夢の世界を思い出してもらい、つい電源を入れてみたくなる仕組みとして、お天気チャンネルはぜひ使いたかった機能なんです。
――ところで続編を作るに当たって、3Dの自由な飛行でのナイツは、選択肢としてはなかったんでしょうか。
飯塚 実は、テストはしてみました。3Dで飛ばすのは、前作を作ったあとにもテストバージョンを作りましたし、今回も初期の頃に実験はしています。ただやはり、3Dですとナイツの飛行がより複雑になってしまって、爽快感を削いでしまうんですね。3D飛行ですと、リング1つくぐるのですら難しい。それに単なる移動手段になってしまって、「飛んで気持ちいい」という、ナイツのコンセプトに外れてしまうのです。気持ちよく飛行するためには、このシステムが最適であると考えています。
――今回、なぜWiiというプラットフォームを選ばれたんでしょうか。
飯塚 続編を作るプロジェクトがスタートしたときには、プラットフォームは確定していませんでした。ただ、ゲームデザインを進めて行くにつれて、ファミリーに向けたゲームコンセプトとなっていきましたので、これを実現して皆さんにお届けするときに最適なマーケットはWiiである、と。そこでWiiで開発することに決定しました。
グラフィック表現でいえば、Xbox 360やプレイステーション 3のほうが長けています。そういった意味では魅力的でしたが、ファミリー層に訴求したいゲームを、まだそこまで浸透していないプラットフォームで出すのはキャラクターのためにはなりませんし、ゲームデザインの面でも、Wii以外のプラットフォームならば違う遊びが作り出せるのかと考えてみても、決してゲーム性は変わらないんですね。遠くの山が1個増えたとか、近くにある物体のディテールが細かくなったとしてもゲーム性には関係ありませんから。ゲームデザインをする段階で、それを実現するプラットフォームはどこかと考えたときに、Wiiでいこうと決断しました。
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