インタビュー
2008年02月19日 00時00分 更新

「ぷちえう゛ぁ EVANGELION@GAME」インタビュー:

“芝村ゲーム”らしくないが“芝村テイスト”満載のゲーム (1/3)

3月20日にバンダイナムコゲームスから発売されるニンテンドーDSソフト「ぷちえう゛ぁ EVANGELION@GAME」。これまでのゲーム「エヴァンゲリオン」シリーズとは両極端のテイストを持つ作品だという。そこで開発者であるベックの制作プロデューサー岡本吉弘氏とゲームデザイナーの芝村裕吏氏に話を聞いてきた。

 バンダイナムコゲームスから3月20日に発売される予定のニンテンドーDSソフト「ぷちえう゛ぁ EVANGELION@GAME」(以下、ぷちえう゛ぁ)。これまでのプレイステーション 2「新世紀エヴァンゲリオン2」や、PSP「新世紀エヴァンゲリオン2 造られしセカイ-another cases-」などとはまったく異なり、「ぷちえう゛ぁ」という、2頭身のキャラクター、かつ世界観もかなり違ったテイストでのゲームとなる。今回は開発者であるベックの制作プロデューサー岡本吉弘氏とゲームデザイナーの芝村裕吏氏に、「ぷちえう゛ぁ」でどのようなゲームが展開されていくのか話を聞いてきた。


画像 ベック 開発部 ゲームデザイナー 芝村裕吏氏

――今回の「ぷちえう゛ぁ」ですが、なぜ芝村さんが開発に携わることになったんでしょうか。

芝村裕吏氏(以下、敬称略) ここ最近ゲーム業界の拡大というか、いままでゲームで遊んでこなかった人が大量に入ってきていますよね。普段遊んでいる、いわゆる“ゲーマー”と、そうでない人たちの2極化も起きていると思います。わたしの身内が集まったときでも、普段はゲームをしない人が遊んでいるという光景に出くわすんです。そのときに「おれもゲーム作ってるんだぜ」と自慢したくなったというか(笑)。ただ、わたしが作ったタイトルを言うと、小さいお子様には分からない(爆笑)。「そんな難しいゲームでは遊べない」というくらいのことまで言われまして。それなら「おじさん頑張っちゃうぞ〜」と(爆笑)。

画像 ベック コンシューマープロダクト本部 副本部長 岡本吉弘氏

岡本吉弘氏(以下、敬称略) あまり最初から飛ばしすぎないでね(笑)。

 ただ、いま芝村が言ったことはあまり的外れではないんです。これまでプレイステーション 2の「エヴァンゲリオン2」があって、そのあとPSP版があって……。これらは一般層に広く訴えかけるものというよりは、ある一定層のターゲットに向けた作品だったわけですが、そことは対極に位置するユーザー層に対してもこれからはアプローチしていくべき、ということも命題としてあるわけです。そこで本作に対しては、過去の「エヴァ2」シリーズとはまったく違うものを作ろう、というところからスタートしています。

 本来、「エヴァンゲリオン」は「ガンダム」級のパワーを持つコンテンツですので、ゲームでもラインアップを少しずつ拡充していきたい。ただし現状はそこまで手が回っていないので、まずは“次は何をやる?”と考えたときに、対極から入っていこうと考えたわけです。

芝村 ゲームの遊び方も多様化してきているし、重厚長大なゲームばっかりというのでもないかなぁと。また、わたしはいつも、自分自身がおもしろいなぁとか、やりたいなぁと思うゲームを作るんですけど、通勤途中の乗り換え時間という短い時間に、2面くらい遊べるゲームを作ろうと思ったんですね。

――それもあって“ミニゲーム”的なものにされたんですか?

芝村 ミニゲームというか……ゲームって覚えていられなくなるんですよ。例えばRPGで3日たったら「どこまで行ったんだっけ?」とか、あらすじ機能が付いているRPGをやっていても、それを読んでいて、途中で電車を乗り換えたら「あれ、どこまで読んだんだっけ?」とか(笑)。まあ、そういうことがないようにするには、1面1面のスパンが短いゲームのほうがいいかなと。クルクルとネコの目が動くようなゲームデザインがいいかなと思ったんです。

 ミニゲーム集というのは手間がかかる割になかなか人気がでないジャンルだったんですよ。違うプログラムをいっぱい作らなければならない、工程数をいっぱい取る割によろしくないものでした。また、ゲームデザインの本論というか、1個のテクニックをどんどん積み上げていく、そこから展開していくという筋から言うとあまり効率が良くないんですね。ただ、毎日、毎朝プレイするという観点から考えると、毎日違う方がいいんじゃないかと。毎日同じ朝食だとつらいかなと言うのと同じノリで、「あれもこれも」と言わないにしても、たくさんのゲームがあったほうがいいかなあと。

岡本 なので、ミニゲーム集を作っているとか、パーティーゲームを作っていると言った気持ちが全然ないんですね。どちらかというと、コミックのテイストに近いものを求めています。手軽さを前面に出したいし、携帯ゲーム機なので、持ち歩いている中で遊べるものを作っていきたいし……。

 多分、携帯電話のゲームや雑誌と同じ並びの中に、携帯ゲーム機での作品というものもあるのかなと。カバンの中でも、同じ所に入っているんだろうなということを考えると、短編小説というわけではないですが、文庫本などと(カバンの中の)同じ位置を占めている中でおかしくないものを作ろうと。“ミニゲーム集”といっても小さなゲームの集合体なので、普通のゲームじゃないですか。その中にパーティーゲームがあれば、みんなで遊ぶわけですし。あまりゲームだと主張しないでおこうよ、という観点から作っているので、ミニゲーム集的な感覚では作ってきていなかったですね。

芝村 もちろん、つながりや順番を考えた上で構成されているので、“集”というよりは“塊”というように思っていただけるのが一番いいかなと。

――1つ1つは独立しているけれども、トータルとしては連続してつながりを持っている、というイメージですね。

岡本 そうですね。

――本作には結構考えさせられるというか、頭をひねってプレイさせるようなゲームもありますね。

画像

岡本 そういうゲームも、プレイするシーンを考えながら作ています。トライしては失敗して、またトライして、でもできない。すると降りる駅に着く。ニンテンドーDSを閉じて、電車から降りて歩く。その歩いている間に「こうしてこうしてこうやって」というようにやり方を考えて、そしてまたDSを開いてプレイして、という。携帯ゲーム機は思考のつながりを持たせにくいと考えていて、短い時間の中で環境が変わると次はゲーム機を手に取らないこともありますから。突然携帯電話が鳴ったりとか、ね。つまり、シーンが変わった後でもプレイをしてもらうには、思考要素が含まれたゲームである必要性が生じます。思考型であれば、ゲーム機を触っていないときもプレイ方法を考えますよね。もちろん、仕事中や寝てる間には考えることはないでしょうけど(笑)、短い時間ならば思考の継続ができるかなと考えていました。ある意味、仕掛け通りですね。

芝村 先ほどの話ではないですが、“毎日同じ朝食だとつまらない”のと同じで、たまに難しいゲームを混ぜているんですね。消化不良がたまに起きるように、という(笑)。

岡本 それは君の得意技だよね(笑)。

芝村 毎回消化不良だとストレスがたまってゲームをやめちゃうんですけど、たまに「ちくしょー、クリアできなかった!」というのがないと「遊んでやろう」という感覚が持続できないんですよ、ゲームって。気持ちよい朝もあれば、気持ち悪いのが楽しい朝もあるということで、そんな感じで構成・調整ができればいいなと。ゲームギミックの組み合わせや面の序列は、こうしたことをポイントに、ひと味違う、他とはの異なるものができればいいなと考えてます。

岡本 いつもそうなんですが、普通ゲームの制作ペースとは別に、芝村作品は芝村がどっぷり調整にはまれる期間を設けているんですよ。そこで行うのは、ゲーム全体の「流れ」の調整ですが、そこは“芝村流”だなあといつもわたしは思っています。最初は易しくて、後半になると難しくなると言うのは当たり前じゃないですか。でも芝村は違うんですね。所々に変な嫌がらせがいっぱい入っている(笑)。「これ、順番おかしくない?」って最初のころは言っていました。でも、彼が調整すると、難しいところも易しいところも全体の流れの中ではカンフル剤として効いてくるんです。ここは彼の真骨頂でもあるので、ゲーム制作とは別に、彼なりの調整をする期間を取っておかないと、ゲームバランス的にはなかなか納得するものが出来上がらないですね。

画像

芝村 逆に言うと、最終面はすごく簡単でもいいと思っているんですよ。最後にクライマックスを置くということより、もうちょっと手前に難易度の最高があって、最後は気持ちよく「こんなの楽勝だよ〜」となっていれば、全体として「いいゲームでした!」って言うような感想も作れるかなと(笑)。

 携帯電話で遊ぶゲームと比べて、一手間かかるゲームが楽しくていいのかなと思いますし。携帯電話のゲームもおもしろいし、わたしは大抵、1日中遊んでいるんですが、やっぱり携帯ゲームにも足りないものがあり、とは言ってもプレイステーション 3でやるようなゲームを携帯ゲーム機で作ってもしょうがないというか、あまり遊びたくないですし。Wiiばっかりだと、わたしの筋肉痛がいつまでたっても治らない(笑)。

――ニンテンドーDSというプラットフォームについて、どう思われますか?

芝村 ニンテンドーDS自身については、隣のチームがゲームを作っていたりして、それを手伝うこともありますし、わたし自身も「デルトラクエスト」を作りました。ニンテンドーDSって、“昔取った杵柄”が使えるハードなんですよ。昔といっても15年前とか20年前とかですが、「ここでキャラ詰めのテクニックが使える!」みたいな(笑)。なのでニンテンドーDSはプログラムするのが楽しいハードウェアですね。

 ニンテンドーDS自体、遊ぶハードウェアとしては優れていると思っています。DSで気になる点があるとすれば、人間の視野角をもっと考えてくれれば、というところでしょうか。人間って上下の見える範囲が狭いんですよ。横には広いんですが。ワイドテレビが縦に長くないのはなぜかと言えば、人間の眼が縦を追うのがつらいからですね。そういう理屈から行くと、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」のように、ニンテンドーDSを縦持ちにすることを思いついた人は“天才だ!”と思ったりもしますね。

岡本 ワンダースワンはそんな仕様だったんですけどね(笑)。縦でも横でも遊ぶハードとしては元祖じゃないかと。

芝村 ワンダースワンはいまでも遊んでいますよ。白黒とかカラーとか。壊れないように、正月になったら必ず通電したりとかして(笑)。

 まあ、携帯ハードは据え置き機とは遊び方が違いますよね。これまでとは違った遊びができるので、とても楽しいハードウェアだと思うんですが。何といっても、寝っころがって遊ぶことを前提にゲームデザインしなければならないのは、携帯ゲーム機ならではなので。

――いつでも閉じれば止められる、というのもいいですよね。

芝村 あとは電池の持ちですね。すばらしく電池の持ちがいいので。それに、ニンテンドーDSは1人が1台を持つと言うことを前提に作られているようなので、子どもにとっては、うれしいハードウェアなんじゃないですか。兄弟げんかしなくて済むのは、子どもの夢の1つですよね。

 大人的な観点から言うと、大人になればなるほど、“塊としての自由時間”が減っていきますよね。細切れになっていく。ですのでニンテンドーDSというのはいいハードだなと思います。

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[聞き手:今藤弘一,ITmedia]

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