レビュー
2008年08月18日 15時43分 更新

「零〜月蝕の仮面〜」レビュー:

“和”と“間”で魅せる、秀逸なホラーアドベンチャー (1/3)

霊を扱ったホラーゲーム、「零」シリーズの最新作がWiiで登場した。Wiiリモコンを懐中電灯に見立てて進む新生「零」は、細やかな演出が行き届いたホラーアドベンチャーの秀作だ。さあ、怖いもん好きは射影機片手に朧月島へいらっしゃい。

身近だからこそ怖い“和”のホラー

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 物語の舞台設定が自分のいる場所と地続きかどうか、というのは、けっこう重要なことではないだろうか。

 例えばホラー映画。海外の優れたホラー映画は、それはそれで面白いものだが、身近な設定で恐怖を味わえる邦画のホラーに、筆者はより強く恐怖を感じる。海外を舞台にしている場合「しゃべってる言語違うし、海の向こうの話だもんなあ」と、どこか他人事のように観てしまうのだ。

 これが日本を舞台にしたホラー映画だと、田舎町や都会の高層マンション、自然の風景、地下鉄など、日本人である自分が慣れ親しんできた風景の中で恐怖の物語が描かれる。身近な光景が呪われ、血に染まり、暗黒に包まれ、残酷に切り裂かれる様子というのは怖ろしいものだ。「自分の周りでも起きるかも……」と思わされる、という意味で、洋画のホラーよりも直接胸に刺さる。そんな和製ホラー映画が筆者は大好きである。

 さて。そんな前置きを踏まえてこの度取り上げるのは、任天堂から発売された「零〜月蝕の仮面〜」だ。本作はテクモの和風ホラーアクション「零」シリーズの最新作。 テクモと任天堂の共同プロジェクトで作られた本作は、ディレクターにグラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏を迎え、開発をテクモが手がけ、任天堂が監修したという異色のコラボレーションによって実現したタイトルだ。

 従来の「零」シリーズは主にプレイステーション 2で発売されてきた。2001年12月に発売された「零〜zero〜」を皮切りに「零〜紅い蝶〜」、「零〜刺青の聲〜」の計3作品が、いずれもPS2でリリースされており、物語は3作品でひとまず完結している。日本を舞台に、心霊や怨霊を扱った良質なホラーアクションとして高い評価を得ているシリーズだ。

wk_080818zero02.jpg 日本の風景が、恐怖を増幅させる

 ホラーものは全般的に得意で、むしろ大好物な筆者ではあるが、最初に「零〜zero〜」をプレイした時の何とも言えない恐怖感、嫌悪感はいまだに心に焼き付いている。見たことのある“気がする”日本の風景を歩き、呪わしい怨霊に囲まれる、生理的な怖さ。恐怖を感じつつも武器で応戦することはできず、心霊にカメラを向けてシャッターを切らなくてはならないというシステムの面白さ。ほの暗いフィールドを散策しながら物語が進んでいく、アドベンチャーとしての楽しさ。それらの融合によって質の高いホラーアクションを堪能することができた。日本が舞台であること、心霊や怨霊が相手であること……これらの要素が、日本に生まれ、日本に育ってきた自分には身近な恐怖を感じる装置として十分すぎるほどに機能していた。和製ホラーならではの、湿度の高い、ねっとりとした感覚が、確かにそこにはあった。

 そんな“和”のホラーゲーム「零」の最新作「零〜月蝕の仮面〜」は、プラットフォームをWiiに移行し、新たな恐怖の地平を切り拓く。今度は日本のどこでどんな霊が待ち構えているのだろうか……。

朧月島で10年の歳月を経て何かが起きる…… 射影機を頼りに霊と戦え

 前述したように、「零」シリーズの物語は前3作で完結をしている。従って、本作ではまた別の物語が展開することになる。旧作とのつながりがないわけではないが、新規のプレイヤーが本作から始めてもまったく問題がないので、本作から「零」をプレイしてみたい人も安心してほしい。

 本作の舞台となるのは、本州の南に位置する島、朧月島(ろうげつとう)。この島で10年に一度開かれる朧月神楽の最中に、7歳の少女5人が神隠しに遭ってしまう。少女たちは刑事に助け出されるが、皆一様に記憶を失くしていた。そして10年後――。神隠しに遭った5人の少女のうち、2人が相次いで謎の死を遂げる。残された3人のうちの2人、海咲(みさき)と円香(まどか)は、友人の死の謎を解き明かすべく朧月島に向かう。そして、海咲と円香を追って、もう1人の生き残りである流歌(るか)も朧月島に渡る……。

wk_080818zero03.jpg 朧月神楽という儀式ではいったい何が行われていたのだろうか
wk_080818zero04.jpg 朧月館に入ろうとする流歌。中には多くの霊が待ちかまえている

 プレイヤーは冒頭で円香を操作することになるが、物語の進行に伴って海咲や流歌、元刑事の長四郎(かつて流歌たちを神隠しから救った男)などを操作するようにもなる。ザッピングとまではいかないが、複数のキャラクターのエピソードを追っていくことによって物語の全容が解っていくという構成だ。

wk_080818zero05.jpg 幼き日の記憶がない流歌
wk_080818zero06.jpg 射影機を作った麻生博士の血をひく海咲

wk_080818zero07.jpg 突然襲ってくる霊もあれば、近付くまで泣いている霊もいる

 本作の舞台である朧月島は、10年前の神楽の後に島民の多くが死体で発見されていて、以来訪れる者がいない忌むべき島となっている、という設定。朧月館という薄気味悪い館や、灰原病院という古びた廃病院など、いかにも“出そう”なシチュエーションで、プレイヤーキャラは、真っ暗な夜に懐中電灯片手に1人で歩かなくてはならない。ザックリとした言い方をすれば“肝試し”的、“お化け屋敷”的な単独での探索を強いられるのである。しかし、その道行きの恐怖は肝試しやお化け屋敷の比ではない。なんせ島を跳梁跋扈する大勢の霊たちが襲いかかってくるからだ。

 ゾンビやモンスターならば、鉄パイプで殴る、銃で撃つなどの対抗手段があるが、相手が心霊ともなると、物理的な攻撃は不可能だ。となれば、プレイヤーキャラはなすすべもなく襲われるがままなのか。否、そんなことはない。「零」シリーズには心霊にダメージを与える“射影機”と呼ばれるカメラがあるのだ。

 シリーズファンにはおなじみの射影機は本作でも健在。心霊が写りこんだ状態でベストのタイミングでシャッターを切れば、より大きなダメージを与えられる。心霊ごとにヒットポイントは決まっており、ダメージを与え続けて心霊のヒットポイントをゼロにすれば、その心霊は成仏してくれる。

 ただ、心霊側も黙って撮られたりはしない。消えたり現れたりしながらプレイヤーキャラを追い詰めるので、プレイヤー側もうまく攻撃を回避しながらシャッターを切っていかなくてはならない。この射影機による心霊との戦いがホラーアクションたるポイントであり、本作の魅力のひとつだと言っていいだろう。

wk_080818zero08.jpg 射影機で捉えて、シャッターを切れ
wk_080818zero09.jpg シャッターを切る前につかまると体力を奪われてしまう。Wiiリモコンを振って、霊を振り払おう
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[仗桐安,ITmedia]

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