カメラの使い方に慣れ、撮影の楽しさを知るのに最適な入門ソフト「AFRIKA」レビュー(2/2 ページ)

» 2008年09月08日 18時52分 公開
[水野隆志,ITmedia]
前のページへ 1|2       

依頼を受け、条件を満たす写真を撮影

 では、ここでゲームの流れを説明しておこう。

 スタート時に男女ふたりのキャラクターから主人公を選択する。男性のエリックはジャーナリスト、女性のアンナは動物学者である。まあ、職業は副次的な要素なので、あまり気にすることはない。単純に好みで選べばいいだろう。

 彼らの活動拠点となるのが自然保護区の外れに設けられたベースキャンプである。ここには地図、撮影機材、その他道具類、睡眠を取るためのベッド、そして非常に重要な役割を担うパソコンが置かれている。

ベースキャンプの内部。必要なすべての機材が用意された調査の拠点だ
プレイヤーが選択しなかったキャラクターはパートナーとして登場する

 ゲームはパソコンに届くメールで依頼を確認することから始まる。依頼にはメインとサブがあり、メインとなる依頼は同時に2つ受けることができない。サブはいくらでも受けられるので、メインの依頼を果たす過程でまとめてクリアすることも可能だ。

 依頼は基本的に動物の写真を撮ることで果たされる。とはいっても動物が写っていればそれでいいというわけではない。対象となる動物の種類が決まっているのは当たり前としても、動作や状況などが規定されることも多い。序盤の依頼を例に取れば、“シマウマの顔を正面から撮影する”“カバがあくびをした瞬間を撮影する”といった具合だ。前者であれば、シマウマを撮影してもそれが横からだったらクリアにはならない。後者もカバがただ口を開けているだけではダメで、ちゃんとあくびとして口を開けていることが条件となる。

依頼主との連絡に不可欠なパソコン。依頼はメールで届く
メール確認画面。「!」の付された依頼がメインに該当する

 依頼を受けたら、車でベースキャンプを離れ、動物が出現しそうなポイントへと移動する。ここでシャッターチャンスを待つわけだ。動物たちは人間の姿を見れば警戒して逃げていったり、襲いかかってきたりする。そのため、彼らを脅かさないようにしながらベストポイント探さなければならない。このあたりの駆け引きは、プロのカメラマンさながらの難しさがある。

 撮影に成功したら、ベースキャンプに戻り、写真をパソコンに取り込む。そして依頼主へメールで転送すればOKだ。ただし、条件を満たしている写真でも、アングル、距離、テクニックなどにより、評価が異なってくる。いい写真ほど高額で買い取ってくれるので、その分速く道具類を買い揃えることができる。なお、撮影した写真の評価判定は何回でもやってくれるが、同一の依頼からは報酬は1回しかもらえない。つまり、条件を満たした写真を撮ったとしても、これでは評価が低そうだと思ったら送らずに再チャレンジし、納得のいくクオリティに到達してから送ることもできるわけだ。

草生えに隠れたり、木の枝に登ったり、動物に気づかれない撮影ポイントを探す
評価が高いほど、得られる報酬も大きい。いい写真が撮れるまで粘るのもありだ

報酬をもらえない写真にこだわるのも楽しい

 ところで報酬という概念が入ってくると、どうしても金がもらえない写真は意味がない、という考えに陥りやすい。このゲームでは、これは危険な発想だ。

 そもそも金で購入できる道具類は全部買わないとゲームができない、あるいは展開が不利になるといったことのない、どちらかというと趣味的な品が多い。だから金がないよりもあったほうがいいに決まっているとしても、遮二無二ため込むほどの重要性はないのだ。

 売れる写真よりも大切なのは、自分がいいと思える写真を撮ること。自然保護区内を散策し、動物や自然が見せる“最高の瞬間”を探すことこそ、最大の目的なのである。自信作が撮れたら、オンラインで投稿してみるのもいいだろう。オンラインメニューには、世界中のプレイヤーが撮影した写真を閲覧できる機能がある。またアイテムのひとつである“Photo Flame”を買ってベースキャンプの壁にかけてもいい。機能重視で飾りのないベースキャンプが自分の撮った写真で埋められていく。それはそのままプレイヤー自身への勲章ともなる。

 自分自身の目標にこだわるようになった時、被写体は動物だけではなくなる。時間の移り変わりによってさまざまな姿を見せる自然の情景も見逃せない。最初は草原地帯にしか行けないが、依頼を果たしていくことで探索できる区画も湿原、峡谷、平原などに広がっていく。そしてそれぞれの地形には、そこに暮らす動物と自然が織りなす美しさが待っている。それらを見れば、思わずシャッターを押さずにはいられなくなるだろう。

 動物や自然という被写体を通して、撮影技術を磨き、撮ることの楽しさを知ることができる「AFRIKA」。その魅力は自ら積極的に踏み込んだ者にだけ開かれる。マニュアルの最後には、ゲームを進めるためのヒントが書かれているが、それはほんの補助的な要素に過ぎない。サファリに飛び込み、世界の誰よりもいい写真を撮る。それを目指そうとする気概がゲームの面白さを深めていく。その意味では、プレイヤーが独自の目標を定めてプレイをしていく箱庭型ゲームに近いといえよう。

 こうしたゲームでは待ちの姿勢では楽しめない。

 例えば、ゲームの序盤はベースキャンプと撮影ポイントとの間をガイドが運転する車で移動することになる。この時はスキップできず、マップ上を実際に移動する演出が入るのだが、依頼を果たすことばかりに目がいっていると、この間が無駄にしか感じなくなり、苛立ちを覚えてしまうかもしれない。しかし、移動中にも周囲360度を見渡せるようになっているので、何か被写体はないかと気を配っていれば思いもかけない、いい写真が撮れる可能性もある。実際、ベースキャンプの近くにはサバンナモンキーがいるのだが、移動中に注意を払っていないと見落としてしまうだろう。少しゲームを進めて自分で車を運転できるようになってからはなおさらで、ただ急ぐだけで保護区内を暴走族のごとく飛ばしていてはシャッターチャンスはどんどん失われていく。

 エンターテイメントの魅力は、実生活では体験できないことを疑似体験させてくれることにある。交通機関が発達した現在でも、アフリカの自然保護区に出かけ、そこで自由な撮影を許されるという経験をできる人はそう多くないだろう。ゲームの中とはいえ、せっかくの機会なのだから、もっとサファリを楽しんでみてはいかがだろうか。

 最後に一言。カメラの楽しさを知り、撮影技術の修得をうながしてくれるこのゲームには、優れて文化的な側面があることを指摘したい。よくあることだが、子供時代に見たテレビドラマや映画に影響されて職業を決める人がいる。これはテレビや映画が文化としての位置づけにあることを示しているといえよう。残念ながらゲームはまだいいところサブカルチャーのレベルに留まっていて、カルチャーの領域までは達していないように思えるが、「AFRIKA」をプレイすることで写真に目覚め、プロのカメラマンになった人が出たとしたらどうだろう。そしてその人がピューリッツァー賞のように世間が認める賞を受賞した時のスピーチで、「自分は『AFRIKA』というゲームでカメラの楽しさを知り、カメラマンの道を目指したのです」と言ってくれたら。

 その時はゲームもテレビや映画と並ぶ、カルチャーの地位に昇ったといえるのではないか。そうなれば、マスコミをはじめとする世間の認識も変わり、凶悪事件が起こるたびに根拠不明確なバッシングが起こるような現状から脱却することができるだろう。その意味で、プレイヤーの試行錯誤を促し、それによって何らかの教育効果を生み出すタイプのゲームは、業界全体の発展のためにも意義ある存在だといえるのだ。

「AFRIKA」(アフリカ)
対応機種プレイステーション 3
ジャンルSAFARI(サファリ)
発売日2008年8月28日
価格(税込)5980円
CEROA(全年齢対象)
仕様モーションセンサー/DUALSHOCK3振動機能対応、必要HDD容量:2260MB以上
(C)Sony Computer Entertainment Inc. All Rights Reserved.


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」