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CEDEC 2008:「テイルズ オブ ヴェスペリア」ヒットの理由を聞いてきた

Xbox 360本体を品切れにさせたタイトル「テイルズ オブ ヴェスペリア」。その開発スタッフを代表して、プロデューサーの郷田努氏、制作プロデューサーの樋口義人氏、ローカライズプロデューサーの三好秀一郎氏の3名が、CEDEC 2008でセッションを行った。

 昭和女子大学で開催中のゲーム開発者カンファレンス「CESAデベロッパーズカンファレンス 2008」で、バンダイナムコゲームスのCSカンパニー第2プロダクション第4課 プロデューサーの郷田努氏、コンテンツ制作本部第6制作ユニット 制作プロデューサーの樋口義人氏、CSカンパニーCS海外事業部海外制作課 ローカライズプロデューサーの三好秀一郎氏によるセッション「Xbox 360『テイルズ オブ ヴェスペリア』から見たハイデフRPG開発」が行われた。

photophotophoto (写真左から)郷田努氏、樋口義人氏、三好秀一郎氏

 まずは郷田氏から、リアルな映像表現ではなく、「テイルズ オブ ヴェスペリア」(以下、TOV)をアニメ絵路線とした理由が語られる。「単刀直入に言えば(TOVのキャラクターデザイナーである)藤島康介先生の絵がそのまま動くようなものを作るのが、ユーザーに対するひとつの回答だろうと考えたんです。ゲーム開発に正解はないですけど、失敗しない方法はある。ユーザーが何を求めているのか? 僕らなりに考えた回答が藤島先生の絵をそのまま動かせたらよい、というものでした。もちろん、ほかにアプローチの仕方はあったと思います。ただ、“アニメのようなRPG”“次世代テイルズ オブ”という2つのキーワードで、海外の人たちにも理解してもらえましたし、(発売から1カ月が経過して)思っていた通りの結果も得られました」。

 郷田氏はまた、6月に行われた「Xbox 360 RPG Premiere 2008」で、TOVに対する自信を深めたと述べる。RPGを中心にラインアップを紹介する同発表会にて、ほかのタイトルがリアルな映像表現を追及している中、TOVはしっかりと差別化ができていると感じたのだという。

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 TOVの開発経緯を知る樋口氏は、「テイルズ オブ ジ アビス」(以下、TOA)の開発が終わるか終わらないかくらいの時期に、TOVのプロジェクトが立ち上がったと説明する。当時はハードをXbox 360とすることが決まっておらず、そもそも樋口氏自身がXbox 360で発売することに不安を抱いていたと話す。

 「次のテイルズ オブ(TOV)はHDクオリティでいけと上から言われましたが、プレイステーション 2で出すのはダメかと相談しました。TOAが成功したタイトルでしたし、同じくPS2でいきたいと。その案が却下されて、いろいろと考えた結果、当時の次世代機として発売されていたXbox 360でやっていこうと決めたんです」(樋口氏)。

 その後、しばらくしてから郷田氏がプロジェクトに参加したものの、Xbox 360で発売すると聞いた時は、やはり不安を感じたのだという。郷田氏はその時のことを「当時の(Xbox 360の)国内普及台数は60万もありませんでした。テイルズ オブシリーズは、PS2では50、60万本は売れているタイトルでしたけど、ハードの普及台数がそれと同じくらいなんです。あまり普及していないハードでゲームを出すとなった時、開発スタッフに対して頑張って、と言うのもなかなか残酷な話ですよね」と振り返る。

 開発スタッフのモチベーションを上げるため、別の目標を設ける必要があると感じた郷田氏は海外に目を向ける。日本市場ではふるっていないXbox 360も、世界に目を向ければ2000万台以上が売れている。世界に受け入れられるタイトルかつ国内で一番売れたXbox 360タイトルを目指そうと熱心に説いたと郷田氏。結果、Xbox 360でいく覚悟が決まったのだという。


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 海外の話が出たところで、ここでは三好氏からはローカライズの苦労話も語られた。「日本のキャラクターの中には、英語を交えながら話すキャラクターがいますけど、TOVにもそういったキャラクターがいます。北米版で英語の代わりに日本語を話させるわけにもいきませんし、どうしようかと悩みました。最終的には発音のアクセントを変えることで、キャラクター性を保持したんです」。

 また、日本ではTOAがシリーズ10周年記念タイトルだったが、北米ではTOVがそれに当たるとのことで、北米版としては初めて、スキットのフルボイス化に挑戦したと三好氏。その際に気づいた日米の違いとして「すべてにおいてそうなのかは分かりませんが、日本では声優さんに集まってもらってスキットのシーンを収録していますが、北米では声優さんごとに個別で収録を行いました。最終的に音声をミックスする段階までフルデータを聞くことができないので、日本と同じように仕上がっているのかというドキドキ感がありましたね。最終的には日本版と遜色ないデキになったと思います」といったエピソードを披露した。

 Xbox 360での発売を目指し、開発が進められていったTOV。しかし、次世代機になったとはいえ、開発スタッフの数はTOAとほとんど変わらなかったのだという。救いとなったのはTOAからそのままTOVの開発に移行したスタッフが多かったこと。これにより効率化を図れたと郷田氏は話す。

 「効率化を図る方法として、ソフトウェアを導入する、プロジェクトの新しい管理方法を取り入れるなどがあると思いますが、実際問題として、ゲーム開発は水物というか生き物なんです。杓子定規には考えられない。今回、TOAと人数がほとんど変わらない体制で、物量も確保しつつ、クオリティもしっかりと出せた最大の理由は、ツール群や手法の話ではなく、同じメンバーで続けてきた結果だと考えています。ツールだけで効率化するのは難しい、というのを改めて体感しました」(郷田氏)。


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 続けて、TOVを通じて学んだこととして“知ってもらう、興味を持ってもらう、購入してもらう”の3点を挙げた郷田氏。曰く「知ってもらわないと興味を持ってもらえない。興味を持ってもらえなければ、店舗に足を運んでもらえない。当然、購入するという行為にはならない」とのこと。

 「TOVではXbox 360ユーザーとテイルズ オブシリーズのファン、両方に喚起したいという思いがあって、やれることをすべてやった。その結果が購入してもらうまでに結びついたんです。でも、これは皆さん(受講者のクリエイター)もやっている当たり前のことですよね。我々と同じようにやれば成功するわけではありません。時には運も必要で、今回は運が良かったとも考えます。たまたまうまくいったかもしれないので、今回の講演を聞いて生かせる部分があれば、現場に持ち帰ってほしいと思います」(郷田氏)。


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