東京ゲームショウ2008:子どもから大人まで楽しめるぬりえアクションゲームの魅力を聞く――「ブロブ:カラフルなきぼう」インタビュー (1/2)
11月13日にWiiで発売される「ブロブ:カラフルなきぼう」は絵の具やペンキをぶちまけるように真っ白な街をカラフルに染め上げる感覚が楽しいぬりえアクションゲーム。開発会社のBlue Tongueプロデューサーであるニック・ハガー氏に聞いてきた。
オランダの学生達による地域の研究プロジェクトで作成したゲームが原型となり、そのキャラクターの個性とゲームのコンセプトが注目され、THQジャパンから11月13日にWii専用ソフトとして発売予定の「ブロブ:カラフルなきぼう」(以下、ブロブ)。モノクロの世界をキャンバスに、色と音のない世界に変えてしまおうと企む大企業「インキー・コーポレーション」と独裁者「ブラック会長」の野望を阻止するべく、街中の建物や看板などにカラフルな色を塗っていくぬりえアクションゲーム。本作の開発会社であるBlue Tongueのプロデューサー、ニック・ハガー氏(以下、ハガー氏)に日本での展開やゲームの内容についてお話をうかがった。
ブロブの世界観、ベースとなった研究プロジェクトとは?
―― まずは、ブロブの世界観からお伺いします。
ハガー氏 ブロブの世界では「灰色で沈黙していて退屈な世界は嫌だけど、多くの人々はそういうものだとあきらめて受け入れてしまっている。でも1人1人の心の中にそういうものに反抗する、本当は色鮮やかで楽しくて、音楽と笑いに満ちた世界に行きたい」という熱い思いを表現したゲームなんです。悪役は恐ろしい怪物や牙を剥いているものではなく、無関心で退屈でそして絶望の中で生きている人たちが悪役として登場しています。
―― ベースはオランダの学生達による地域の研究プロジェクトから始まったゲームを採用されたと伺いましたが、どんな内容の研究だったのでしょうか。また、採用に至った経緯を教えてください。
ハガー氏 まず、研究内容についてですが、オランダのユトレヒト市議会から依頼された仕事で、住民の方や観光客用にボールとキャラクターが転がりながら市を案内し、その中でユトレヒトの駅前が今後10年間でどのように変化するかを見せるものです。また、これは私の解釈ですが、ヨーロッパは非常に歴史的建造物を保存しようとする気持ちが強く、再開発に反対する力も大きいそうなので、ゲームを使って市民の理解や協力を得ながら再開発を進めようというアイデアだったと思いますね。
次に採用に至った経緯は本当に偶然見つけたもので、私の同僚の1人が「こんなの見つけたよ」とメールで教えてくれたのをきっかけに、Webサイトにあるゲームを遊んでみたらすごくいいアイデアだったのでピックアップしたいと思いました。ゲームとしての質もプロ顔負けで、「学生がこんなにすごいゲームを作るんだ」とびっくりしましたね。真っ白な地図をカラフルな色で塗りつぶすと街の案内図ができてくるというゲームのアイデアは本当に素晴らしいと思いますね。これを作った学生やそれを奨励した先生、大学は非常に大きな功績をあげた、といえるでしょう。
ゲーム業界でも本当にオリジナルでユニークなアイデアというのを、大きな企業がストーリーがついたゲームへと展開することは珍しいことだと思うんですよ。我々Blue Tongueの開発者に自由な創造性を発揮する機会を与えてくれたTHQにも非常に感謝しています。
―― 海外ではすでにリリースされていますが、発売後の評判はいかがでしょうか。
ハガー氏 すごい大好評で、どんどんいい評価が舞い込んできている状態ですね。私が心からうれしかったことは、インターネットの掲示板で噂をする人がいて、「大企業が大学生の作ったアイデアを買い取って盗んで、お金儲けをしている」という書き込みがあったのですが、ベースになるゲームを作成した大学生の方が「僕はわざわざ店に行ってブロブを買って遊んでみたけど、すごい楽しかったよ」と言ってくれた事ですね。それは本当に嬉しかったし、ゲームを作ってよかったなと思いました。
―― 日本では「YouTube」で特設チャンネルを公開したり、お笑いタレントの芋洗坂係長のダンスのCMを放映したりと色々宣伝されていますが、日本での前評判はどういったものがご存知でしょうか。
ハガー氏 実はそういった反応は気にしていまして、毎日ゲームへの反応はどうかとWebで一所懸命血眼になって探しています。また、ゲームのメッカである日本で発売できることがとてもうれしいです。我々は日本のゲーム文化で育ってきたというのもあり、日本のゲームファンが世界一喜ばせるのが難しい目利きの方が多いと考えています。もちろん自信はあるので、日本でいい反応をいただけたら何よりもうれしいと思います。
子供から大人まで幅広い年齢層に遊んでもらえるように配慮された親切設計
―― キャラクターがとてもコミカルで、名前も「インキー」や、「グレイディアン」、「インクジェット」など、色や文房具などをもじった名前にしていますね。
ハガー氏 言葉遊びは楽しんで作りました。それをTHQジャパンさんのローカライズでユーモアをあますところなく伝えてくださったんです。海外のゲームが日本に入ってくるときに言葉遊びのおもしろさが失われてしまいがちなんですけども、今回はそれがすごく上手くいって日本の皆さんもゲラゲラ笑いながら見てくれました。それと、このゲーム中は音声で言葉を発している部分はないんですね。だから風刺的な面も含めてユーモラスな部分は理解できる所はあると思います。
また、ゲームの世界観的にも小さいお子様から家族全員で楽しみながら遊べ、説明書を読まなくても直感的に遊べるよう意図的にシンプルな作りにしました。
ブロブを自分で動かしているときにカメラが頻繁に動くと、いわゆる「3D酔い」になり、気持ち悪くなってしまう方もいると思いますが、そういった事情もよく理解しているので、カメラスピードの設定ができるように十分配慮しております。
―― ブロブを開発するに当たって、なぜWiiを選択されたんでしょうか。
ハガー氏 Wiiが良いと思ったのは、Wii自体が革新的なゲーム機であるという風に見られていることと、ブロブの新鮮で今までに無いコンセプトというのがぴったりとマッチしました。それとやはり私はこの機械の体感的なアクションが感じられる部分が好きですね。
―― マルチプレイにはどんなモードが用意されているんでしょうか。
ハガー氏 ベースとなるモードが8種類ありまして、さらにその中から3、4種類のモードを選んでプレイできます。画面上に色を塗った面積を競うものや、相手の上にジャンプして相手を潰すものや、1人が逃げて、その人を捕まえると今度は捕まえた人が鬼になって逃げるというものもあり、それぞれの人の好みにあったゲームモードを提供しています。また、オンラインプレイについては、任天堂からWiiのネットワーク機能が発表された時期が遅かったので残念ながら間に合いませんでした。
―― やり込み要素やコレクター要素はあるのでしょうか。
ハガー氏 10あるすべてのレベルにメダルが10種類用意されていまして、意識してプレイしないと集められないものになっています。ペイントした割合やミッションを全部クリアしたかどうか、最短時間でクリアしたかなど、色々な基準で達成できますので、そういうやり込みプレイが好きなハードプレイヤーも楽しめると思います。メダルを集めると、アンロックされるモードが出てきます。イラストギャラリーやゲームの初期に作ったムービー、ゲームのアートがいかに展開してきたかという歴史が見れる貴重な映像もあります。また、レベルをコンプリートした人は、フリーペイントモードが使用できるようになり、時間制限やミッションをクリアすることに気を取られずに遊べます。小さい子にもうってつけのただ塗りまくるプレイができますね。他にも、1分から3分の間で楽しめるミッションも用意されています。
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