実に人間らしい思考をする――プロ棋士がうなる「最強将棋 BONANZA」発売記念発表会

サクセスは12月18日に発売を予定しているPSP用ソフト「最強将棋 BONANZA」の記者発表会を開催。女流棋士の上田二段を招き、その魅力を語った。

» 2008年11月11日 18時45分 公開
[加藤亘,ITmedia]

最強の将棋思考エンジン「BONANZA」を搭載

サクセス代表取締役社長の吉成隆杜氏(右)と女流棋士の上田初美二段(左)

 サクセスは12月18日、PSP専用ソフト「最強将棋 BONANZA」を発売するにあたり、記者発表会を催した。発表会では最強の呼び声高いBONANZAの棋力を確かめるため、女流棋士の上田初美二段を招き、BONANZAの出す一手について解説しながら、その魅力を語ってくれた。

 BONANZAとは、2006年に開催された世界コンピュータ将棋選手権で初出場ながら、市販の将棋ソフトを押さえて初優勝を果たした理論物理化学研究者・保木邦仁氏作の将棋思考エンジンのこと。2007年3月21日に最強戦の創設を記念して、当時の竜王・渡辺明氏との特別対局が組まれたことも記憶に新しい。特別対局では、からくも渡辺竜王の勝利に終わったが、その棋力の高さから「10秒勝負なら10回に1〜2回はやられる」と言わしめたほど。公の場でコンピュータ将棋が、タイトル保持者と平手で対局するのは史上初めてのことであり、歴史的な対局となった。

 その最強の思考ルーチンを搭載したPSP専用将棋ソフト「最強将棋 BONANZA」では、強さのレベルや各種ハンディを設定した通常対局モード以外にも、初心者から上級者まで楽しめる詰将棋も収録。アドホックモードを使用した対戦も可能となっている。将棋のルールが分からなくても丁寧に解説してくれ、さらに「ひねり飛車」や「棒銀」、「穴熊」など将棋の定跡も説明してくれるモードも収録されている。

細かく対局設定が可能

CPUとの対局では思考時間がかかるものの、実に多彩な手を打ってくる

10種類の定跡をしっかり学べるほか、100種類の詰将棋も収録している

 今回の記者発表会でも上田二段がその充実ぶりに感心しきりで、いかにも“人間らしい手”を打ってくるあたりがBONANZAがBONANZAであるゆえんだと解説する。今回行われたデモンストレーションでも、その“人間らしい手”がかいま見えた。

 デモンストレーションの前に登壇したサクセス代表取締役社長の吉成隆杜氏は、「たかが将棋との声もあったが、将棋のプロが将棋ソフトと対局したこと自体が快挙であり、竜王がやるんじゃなかったと後悔するほどの棋力を持っている」と、最強の思考ルーチンを継承して誕生した携帯ゲーム機用ソフトに対していかに信頼しているかを語った。

 こうしたゲームの思考ルーチンで有名なのは、1996年当時のチェス世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフ氏と勝負し打ち負かした、IBMが開発したチェス専用スーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」ではないだろうか。1秒間に2億手の先読みを行うとされるその計算能力により、翌1997年での再戦でも勝利を収め、チェスでは人間を超えたと言われていた。

 それから約10年、AIは飛躍的に進歩し、ついにはPSPのように携帯して持ち運べるほどまで小型化し、かつ複雑な思考を持つにいたっている。チェスは一度取ったコマは使えないが、将棋は再利用できる。この再利用できることで、思考ルーチンはさらなる可能性の計算が必要になる。従来の将棋ソフトであればしのぐことができたのが、これまでの将棋ソフトと一線を画すBONANZAでは、竜王ですら「やるんじゃなかった」と思わせるほどの潜在能力を秘めているという。そこには“人間らしい手”を好む思考ルーチンを実現したことが大きいのではないだろうか。

上田二段は、1988年11月16日生まれの東京都小平市出身。師匠に伊藤果七段を持つ。中学1年生でプロデビューし、2006年には若手のトーナメント「白瀧あゆみ杯」で優勝。今やトップ10クラスの実力者となっている

上田二段は解説を交えながら、BONANZAについて紹介

 デモンストレーションではすでに対局も中盤に差し迫った状態からのスタート。先手のプレイヤー側は37手目、7八に銀を上げ攻撃に転じようとするのに対して、後手のBONANZA側は美濃囲いで守りつつ、角で金を狙う構えからとなった。上田二段は、この角で金を狙ってくる手こそBONANZAらしいと解説する。

 自身もBONANZAと何度と個人的に対局している上田二段は、通常の将棋ソフトでは点数の高いと言われる角で金は交換しづらいのだそうだ。人間であればあえて劣勢に持っていく場面も見られるのだが、BONANZAはそれを平気でやってくるし、相手の差し手を読んでいるからこそ、あえて相手に一手預けるという受けの余裕も持ち合わせているのだとか。事実、上田二段が予言したとおり、40手目にBONANZAは角を上げ、金との交換に踏み切った。また、美濃囲いからの可能性を広げるために、9四に歩を進めるかもしれないという予想も的中させた。デモンストレーションでは残念ながら時間がなかったため、中盤の攻防のみで終了となった。

 さて、このBONANZAもそうだが将棋ソフトでは、最良の手を思考するために何手も先を読むため、思考にある程度の時間を要する。今回のデモンストレーションでも開発中とはいえ、思考に数分かかる場面も多かった。そのため、長時間のプレイではACアダプタを差し込んでのプレイを推奨していた。さすがに終盤の手が狭くなってきた頃には思考も早くなるとのことだが、コマが隣接し盤が荒れてくると何万手と思考することになる。場合によっては7分ほどかかる一手もあるのだとか。こうした思考の時間を楽しんでこその将棋ともいえる。心の余裕を持って将棋に向き合いたいものだ。これ1本で将棋のルールを一から指南してくれ、さらに定跡を知り、プロも舌を巻くその棋力との対局も楽しめる、「最強将棋」の名も納得の充実の内容ではないだろうか。

「最強将棋 BONANZA」
対応機種PSP
ジャンル将棋
発売予定日2008年12月18日
価格(税込)3990円
プレイ人数1〜2人
CEROA(全年齢対象)

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