マリオVSブラッキー! 「レッキングクルー'98」:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(1/2 ページ)
今回は「レッキングクルー'98」。前回取り上げた「レッキングクルー」とは違って、対戦型落ちものパズルになっています。最初はニンテンドウパワー専用ソフトでしたが、後に通常のスーパーファミコン用ソフトとして販売されました。
ブラッキーにすっごく共感した
前回取り上げた任天堂の「レッキングクルー」の敵は、このゲームにしか出てこないユニークなキャラクターばかりだが、中でも異彩を放っているのがブラッキーである。
マリオ同様、ヘルメットをかぶってハンマーを持った男。壁の裏側にいるためか、ブラッキーとマリオが接触してもミスにはならない。しかしブラッキーは、裏側から壁やハシゴをたたいて、マリオを落とそうとする。逆にマリオが壁を壊して、ブラッキーを下へ落とすこともできる。
PHASEによっては、ハシゴのない場所にマリオが落とされたり、壁を壊す前にそこへ通じるハシゴを壊されたりして、クリア不可能になってしまうこともある。要はマリオの近くに寄ってハンマーを振るだけなのだが、そのタイミングが絶妙で、憎たらしい。存在感の大きな敵キャラクターだ。
にもかかわらずブラッキーは、後のマリオシリーズに登場すらしなかった。
そのことが、某ゲーム誌に連載されていたマンガでネタにされた。ゲームを映画に、ゲームキャラクターを俳優に見立てた世界の中で、ブラッキーは“レッキングクルーにマリオの敵役として出演したが、その後まったく売れていないゲーム役者”として描かれている。
ファミコン創生期のキャラクターが集まる同窓会に招待されたものの、誰にも思い出してもらえなかったり、ルイージに皮肉られたりすることを想像して、結局行かなかった。この話が描かれたのが、レッキングクルー発売から8年後の1993年だ。
それからさらに4年後。同じゲーム誌のマンガで、同じようなシチュエーションの話が描かれた。こちらは前の時とは違って、かなりシリアスなストーリーになっている。
当時、プレイステーションに押されていた任天堂の勢いを盛り返すべく、ファミコン時代のゲームをリメイクさせようと、各キャラクターたちに提案するルイージ。それに端を発し、ゲーム業界の外側から業界の変化を冷静に見つめてきたブラッキーと、業界の内側で時代に翻弄(ほんろう)されながら、自分の居場所を見つけだそうとするルイージとの、激しい論戦が展開される。このシーンは今見ても秀逸だ。
また、ブラッキー自身も単に売れない役者ではなく、来たるべき時に備えてトレーニングを欠かさない、仕事に対して真摯(しんし)に取り組む男として描かれている。
ちなみにルイージの提案した企画、今ではWiiのバーチャルコンソールという形で実現しているのが面白い。レッキングクルー自体もバーチャルコンソールでダウンロードできる。
ちなみついでにもうひとつ。ブラッキーが住んでいるという設定になっていた場所は、新宿区百人町の線路沿い。百人町の東側には山手線・埼京線・西武新宿線が、西側には中央線・総武線が通っているが、黄色い電車のほか、黄緑の電車も通っていることから、東側の線路沿いと思われる。
ニンテンドウパワーでブラッキー復活
さて、このマンガが任天堂を動かしたかどうかは知らないが、1998年に「レッキングクルー'98」が、“ニンテンドウパワー”で発売されることになる。
ニンテンドウパワーとは、1997年に全国のローソンで始まったゲーム配信サービス。店内の端末・Loppiにスーパーファミコンのカートリッジを入れる端子が設けられており、ここに書き換え専用のSFメモリカセットを差し込むと、Loppiを介してゲームをダウンロードできた。後にゲームボーイ用ソフトも配信されている。
スーパーファミコンの全盛期ではなかったため、ここで配信されるゲームは懐かしの作品が中心。中古でしか手に入らないようなソフトを、品切れを気にせずに安く買えるというのが売りだった。
だが、ニンテンドウパワーでのみ販売されたゲームも何本かある。メーカーにとっては現在のWiiウェアと同じで、小品で本数のあまり見込めない作品を、低コストで発売でき、在庫を抱えなくて済むというメリットがあった。ファミコンゲームのリメイクがほとんどだったものの、発売されていたソフトは20本以上。意外に多い。
1997年の「平成 新・鬼ヶ島」「同級生2」に続いて、レッキングクルー'98の配信は1998年1月1日に始まった。当初はニンテンドウパワーの書き換え専用だったが、後に平成 新・鬼ヶ島とともに、通常のROMカートリッジ版も発売されている。
店頭でソフトの書き換えができたディスクシステム、衛星放送を使ってゲームを配信したサテラビュー、そしてこのニンテンドウパワー。任天堂はたびたび、パッケージを介さずソフトウェアのデータのみを売る方法を模索してきた。それがWiiウェアとバーチャルコンソールで、遂に結実したと言えるだろう。
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