「信長の野望・天道」連載(第1回)――リアルさか遊びやすさか。「信長の野望」の課題は?伸ばせ街道! 戦国ニッポン改造論(1/2 ページ)

ストラテジーゲームの代名詞「信長の野望」のシリーズ最新作が発売される。今回はそれを記念して、歴代の「信長の野望」を振り返ってみたいと思う。

» 2009年09月04日 00時00分 公開
[Guevarista,ITmedia]

「信長の野望」の誕生

 PCゲーム黎明期から連綿と続くロングセラーであり、日本のPCストラテジーゲームシーンをまさに創ってきた作品の一つと評すべきなのが、コーエーの「信長の野望」シリーズだ。初代「信長の野望」が登場したのは、実に1983年のことである。織田、武田、上杉、北条といった主要大名家が、本州中央部17カ国の支配をめぐって争うこのゲームが、日本のコンピュータゲーム市場にストラテジーというジャンルを確立した主な功労者であることは間違いない。

 それ以前に存在した、例えば太平洋戦争における海戦を扱ったカセットテープベースのストラテジーゲームなどは、ほとんどシリーズ展開を広げることなく終わっている。若い読者諸子にはあまり想像できないかもしれないが、HDD(ハードディスク)が“発明”されるずっと前に、パソコン/マイコンの記憶媒体がカセットテープだった時代というものがあったのである。「信長の野望」シリーズは、そんな時代(のちょっとだけ後)から続く長い歴史を誇り、営々と進化を続けてきたシリーズなのだ。

武将ゲームになったのは第3作「戦国群雄伝」から

 そこから二十数年、10作以上の世代を重ねて現在も続く「信長の野望」シリーズは、PCの性能向上を反映しつつ進化を続けてきた。1986年に登場した「信長の野望・ ―全国版―」は、名前のとおりマップを本州、四国、九州全域に広げ、ご当地大名でのプレイを可能にした作品だ。もっとも当時のゲーマーにとっては、このゲームが最初に登場したプラットフォームであるNEC PC-9801シリーズそのものが憧れの対象だった気もする。「方言モード」をオンにして「今年は豊作だぎゃあ」といったシステムメッセージを楽しんでいた人、シャープのX68000版で一揆を起こされて「もう我慢できねえ!」というボイスに驚いた人など、それぞれにとって思い出深い作品に違いない。

元祖「信長の野望」(左)と、「信長の野望・ ―全国版―」(右)の画面

「信長の野望・ 戦国群雄伝」

 そして2年後の1988年には「信長の野望・ 戦国群雄伝」が登場する。この作品については、大名配下の武将達、各国の主城がそれぞれ再現され、グラフィックス面で大きくリッチになったことが印象深い。野戦に勝ったあとの攻城戦段階では、主要な城の城門と外郭構造(二の丸とか馬防柵とか)がマップで再現されている。そこでは正攻法で城門を破るのみならず、足軽隊の「行動力」を溜めて城壁を乗り越えさせるといった形で、武将達の能力を活かせる場面が用意されていた。……服部半蔵やら百地一族やらといった忍者部隊が郭内に潜入し、門を内側から開くというギミックがあって、これがたいへん痛快もしくは凶悪だったことを鮮明に憶えている。

第4作「武将風雲録」からは茶器など文化要素が

「信長の野望・ 武将風雲録」

 1990年発売の「信長の野望・ 武将風雲録」から導入されたのが、名馬/名刀や茶器といった、多大なボーナス効果があったりなかったりするアイテムの概念。普通のゲーム攻略を十分に楽しんだプレイヤーが、領国拡大そっちのけで茶器の名品を集めたりする、ある意味戦国時代らしく、また「信長の野望」シリーズらしい風景が展開されるようになったのはこの作品からである。「小茄子」茶器とか「平蜘蛛」の茶釜とかが、欲しかったなあ。茶釜と一緒に爆死したいかはともかくとして。

 1992年に登場した「信長の野望・ 覇王伝」はシリーズで初めて、マップを国単位のエリア制でなく城単位のポイント・トゥ・ポイント制に改めると同時に、家臣に知行地や官位を与えたり、偏諱(主君の名前の一文字を拝領すること)を許したりといったシステムを加え、中世/戦国時代を社会システムのレベルで再現しようと試みた作品だ。続く1994年の「信長の野望 天翔記」では、マップに設定された城の数が一国あたりだいたい5〜6カ所と、「覇王伝」よりも増えている。一方武将を核とした社会システム再現については逆に、「宿老」から「足軽頭」にいたる大名家の家内身分を設定することで、シンプルに整理された。この家内身分ルールは、本作で充実した武将の「特技」と並んで、以降のシリーズ作品に受け継がれていく。

「信長の野望・ 覇王伝」(左)と「信長の野望・ 天翔記」(右)

 1997年に登場した「信長の野望・ 将星録」では、ポイント・トゥ・ポイント制のマップデザインから大きく方向転換し、日本全土を町場や各種地形からなる1枚のマップに収め、戦闘の発生も各種開発もそのマップ上に統合した。ゲーム全体はいわば、実在地形に基づく箱庭ゲームとして設計されており、武将とその配下の軍勢が、このマップ上をリアルタイムで移動し、戦闘が生じた場合、その地形に応じた専用マップに処理が移る。戦闘そのものは「天翔記」以来の流れを受け継ぎつつ発展させたものだ。武将の「特技」はさらに洗練され、武田信玄を追い詰めて討ち取ったと思ったら「影武者」で、ご本尊はあらためて別の部隊から登場などという、講談物的ケレン味に溢れたプレイ体験を、忘れられない人も多いのではないだろうか? また、1999年に発売された「信長の野望 烈風伝」は、この「将星録」の方向性を受け継いだ作品である。

「信長の野望・ 将星録」(左)と「信長の野望・ 烈風伝」(右)

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