「リアルサウンド 風のリグレット」の画面写真を作ってみたゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(5/6 ページ)

» 2009年10月16日 10時35分 公開
[ゲイムマン,ITmedia]

映像表現に頼らないゲーム

 映像表現にあまり頼らないゲームは、「風のリグレット」以前にもいくつかあった。例えば、主に文字によってストーリーが進む、チュンソフトの「サウンドノベル」シリーズ(「弟切草」「かまいたちの夜」など)。

 ただ、文字表現と音声表現では、似ているようでもかなり雰囲気が異なる。「風のリグレット」における、俳優さんの演技による微妙なニュアンスの表現や、背景の音による臨場感は、音声表現ならではといえよう。

 それと、サウンドノベルには映像がまったくないわけではなくて、風景のグラフィックや、要所に効果的に入るビジュアルシーン、あと「かまいたちの夜」では人物のシルエットが表示される。文章だけではなくて、映像や音もバランス良く使った演出が行なわれているのだ。

 このほかには、音楽CDを使ったアドベンチャーゲームもいくつかあった。「クエスティアン」(ワーナーミュージック・ジャパン)、「水の守護神(ガーディアン)」(コーエー)など。CDのトラックをゲームブックのパラグラフのように扱っており、分岐点に来ると、「トラック○番へ進んでください」と指示される。

 もっともこれらは、「風のリグレット」とはコンセプトが根本的に違う。CDの最大収録時間74分という制限もあり、「クエスティアン」は声優によるドラマCDの延長線上にあるゲームといった感じだった。

 一方「水の守護神」では、サイコロを用いた複雑な戦闘システムが採用されており、アドベンチャーゲームというよりテーブルトークRPGに近い。1987年頃から、ゲームブックのシステムは複雑化の一途をたどっており、1993年発売の「水の守護神」にも、その影響が色濃く出ている。

幻のゲームクリエイターが今、復活!

 「風のリグレット」は1999年、ドリームキャストに移植された。ドリームキャスト版では、ゲームの内容と関連しないイメージ写真を表示させることができる。

 これ以降、他機種への移植はなく、続編も発売されていない。「風のリグレット」はリアルサウンドシリーズの第1弾だったが、第2弾は「霧のオルゴール」というタイトルと、ホラーものであることが発表されていたにもかかわらず、とうとう発売されなかった。もし発売されていれば、さらに「スパイランチ」というコメディを出す構想もあったようだ。

 「風のリグレット」はマルチエンディングで、途中でどういう選択肢を選んだかによって、エンディングが5つに分かれる。でもわたしは1回めのプレイでベストエンディングを引き当てたので、その後しばらく再プレイする気になれなかった。

 普通のアドベンチャーゲームの場合、前のプレイで既に読んだ文章は早送りできる。だがこのゲームは音声で進行するので、それができない。つまり2回め以降のプレイでも、1回めと同じくらいの時間がかかってしまう上、1回聴いたくだりを延々と聞かざるを得なくなる(すべてストーリーが分かった上でもう1回聴くと、また違った印象があるのも確かだけど)。

 画面にシーンごとのあらすじを表示して、プレイヤーが飛ばすかどうか選べるようにすれば解決する問題だが、それでは“音声のみで進行する”というコンセプトが崩れてしまう。プレイのしやすさを多少犠牲にしてでも、意地でも画面を使わないという、飯野氏のこだわりを感じた。

 もう12年も前のゲームだが、グラフィックがないので、今プレイしても古さを感じなかった。まあ、地下鉄が営団地下鉄だったり、携帯ではなくて電話ボックスから電話をかけたりという描写はあるが、今でも十分通用する斬新さを持つ上に、プレイヤーの心を揺さぶることのできるゲームだと思う。まだプレイしたことのない方は、ぜひ一度やってみてほしい、ところだが……。

 セガサターンとドリームキャストのゲームは、現役のゲーム機ではプレイできない。ドリームキャストは最近まで新作ソフトがリリースされていたので、現役といえないこともないが、本体そのものの製造が終了している上、「風のリグレット」のソフトも手に入れづらい。

 16ビット以前のゲーム機やニンテンドウ64なら、Wiiのバーチャルコンソールがあるし、プレイステーションならゲームアーカイブスがある。でもセガサターンとドリームキャストのソフトは、ダウンロードで手に入れられない。

 飯野氏の作品のほとんどは、この2機種プラス3DOでしかリリースされておらず、入手しようと思ったら中古に頼るしかない。1999年の「Dの食卓2」を最後に、長らくゲームを発表しなかったこともあり、飯野氏は“かつてゲーム界をにぎわせた、幻のゲームクリエイター”となっていった。

 だが2008年、iPhone/iPod touch用に「newtonica」をリリースし、ゲームクリエイターとして復帰(「moon」「ちびロボ!」の西健一氏との共同開発)。「newtonica」は2色に塗り分けられた球体を回して、飛んでくる2色の物体を、同じ色のエリアに接地させるゲーム。これをモチーフにした音楽プレイヤー「newtonica player」や、ヒヨコをゴールまで誘導する「newtonica2」「newtonica2 resort」も登場している。

 そして2009年には、遂に家庭用ゲーム機向けのゲームを発売した。Wiiウェアの「きみとぼくと立体。」(任天堂)である。Wiiリモコンを振って、ぐらつくキューブの上にニンゲという生き物を乗せていくゲーム。ニンゲは意思を持ち、動いてキューブのバランスを崩すことがあるので、新たなニンゲを乗せてバランスを取る必要がある。

 やってみると、簡単な操作でユニークなプレイ感覚を味わえる。ニンゲの動きもさまざまで、ほかのニンゲを救おうとすることすらある。飯野氏にはこれからもこのまま、新感覚のゲームをどんどん作り続けてほしいと思う。

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