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「UEはUIに勝る」――カプコンが考えるiPhoneゲームの味付け

iPhoneアプリが、CP(コンテンツプロバイダー)の新たなゲーム市場として注目を集めている。iPhone/iPod touch向けに人気タイトルの新作を開発しているカプコンは、どのような点に注力しているのだろうか。

 「バイオハザード」「魔界村」、そして「逆転裁判」――。家庭用ゲーム機で人気を博したゲームのiPhone/iPod touch版を積極的に開発しているカプコン。同社が12月3日にアップルストア銀座で開催したイベント「Meet the App Developer」で、カプコン 開発統括本部 MC開発部長 兼 プロジェクト企画室長の手塚武氏と、カプコン 開発統括本部 MC開発部 プロジェクト企画室 プロデューサーの伊藤幸正氏が、iPhone/iPod touch向けアプリの開発でこだわったポイントや今後の展開について明かした。

祭の射的から携帯ゲームまで――ゲームの歴史

photo カプコン 開発統括本部 MC開発部長 兼 プロジェクト企画室長 手塚武氏

 手塚氏はまず、「そもそもゲームとは何か」について言及。古くは祭の射的に始まり、もぐらたたきやUFOキャッチャーなどの“メカトロ”、そしてアーケードゲーム、家庭用ゲーム、オンラインゲーム、携帯向けゲームなど、ゲームはいくつもの形態を変えながら変遷してきた。同氏はこれら多種多様なゲームを、ゲーム性の高さを示す“純ゲーム要素”と、それと相反する“コミュニケーション要素”に分布し、その違いを説明した。

 「家庭用ゲームが最も純ゲーム要素が高く、SNSをベースとしたソーシャルゲームが最もコミュニケーション要素が高い。今後は携帯向けゲームが純ゲーム要素とコミュニケーション要素の両方を高める方向になるのではないか」との考えを示した。その理由として「携帯向けのソーシャルゲームが増えていること」と「端末のパフォーマンス向上によりリッチなゲームを体験できること」を挙げた。

photophotophoto “祭の射的”から始まったゲームの歴史(写真=左)。5種類のゲームを“純ゲーム要素”と“コミュニケーション要素”から分布(写真=中)。手塚氏は、今後モバイルゲームが純ゲーム要素とコミュニケーション要素の両方を帯びてくると見ている(写真=右)

 手塚氏は、端末の販売方式が変わって買い控えが増えている状況についても言及し、ゲーム業界にとって今は過渡期だと見ている。「国内のCP(コンテンツプロバイダー)は海外市場に活路を求める状況が続いているが、海外では端末によってCPUやメモリー容量が異なるので、ゲーム(アプリ)作りのハードルが高い。また携帯キャリアの手数料が非常に高いので、国内のキャリアと比べると利益も少ない」と海外展開の難しさを説明した。

UE(ユーザーエクスペリエンス)はUIに勝る――タップで敵を倒せなくした理由

 そんな、多くのCPが新しいビジネスモデルを渇望している中で現れたのがiPhoneだ。「iPhoneアプリの配信手数料はCPが70%、アップルが30%。これは明快で分かりやすく、全世界で容易に展開できる。端末のパフォーマンスも高いので、多くのプレーヤーがいろいろな戦略を持ってチャレンジできる」(手塚氏)

photophotophoto 国内では公式サイトのビジネスがやや下降気味。一方、非公式サイトは無料ゲームの広告モデルが中心となっている(写真=左)。海外端末は仕様がバラバラでキャリアの手数料が高いので、海外市場の展開は容易ではない(写真=中)。iPhoneは端末が1種類で、全世界で展開できるので、CPが参入しやすい(写真=右)

 では、カプコンはiPhoneとiPod touch向けアプリに対して、どのような工夫を施しているのか。ホラーアクションゲームの「バイオハザード4」では、“Visual Pad”と呼ぶ操作パッドを採用。ゲームを遊ぶ上で物理キーがないことはハンデとなるが、それを補うべく、Visual Padのメリットを最大限に生かして設計した。手塚氏はそのメリットに、操作パッドの透明度や配置場所を変更できることや、操作パッドのデザインや色によって、プレーヤーがどんな操作をすべきか無意識のうちに分かることを挙げた。

 手塚氏はもう1つ、操作性でこだわった点を明かした。通常、親指が最も膨らんでいる部分とユーザーが意図してタッチした部分にはわずかなギャップがあり、狙ったポイントよりも左下が認識される。「他社のVisual Pad的なボタンを採用したアプリは、操作性が悪いという評価をよく聞いたが、我々のアプリではもちろんこの点も考慮して、(実際に触っていなくても)意図した操作ができる仕組みを作っている」(手塚氏)

photophoto iPhone/iPod touch向け「バイオハザード4」(写真=左)。画面上のアイコンを押すことで操作ができる(写真=右)
photophotophoto バイオハザード4では、アイコンの位置や透明度を変更できる。「ゲームの画面をしっかり見たければ、透明度を上げればいい」(手塚氏)

 タッチパネルのメリットを生かした操作法の1つとして、社内では「敵をタップして倒せてもいいのでは」という意見も挙がったという。「そういう考えもあるかなと思って試したが、ゲームは近くの敵を先に倒さないと生き残れない、つまり一瞬の判断力で成否が決まるのが面白い。タップだと後ろの敵が(先頭に来る前に)倒せてしまうので、面白くなくなってしまう」ことから採用は見送った。「UE(ユーザーエクスペリエンス)はUI(ユーザーインタフェース)に勝るので、UIを優先するのは本末転倒。面白いゲームをプレイするためにどんな操作がベストかを考えた」(手塚氏)

photophoto バイオハザード4の醍醐味は、至近距離に現れる敵と繰り広げるバトルなので、後ろの敵を先に倒してしまうと、緊迫感あふれるバトルができなくなる。操作性よりも面白さを重視し、タップ操作は見送った

常識を覆すほど難易度を下げた「魔界村騎士列伝」

photo カプコン 開発統括本部 MC開発部 プロジェクト企画室 プロデューサー 伊藤幸正氏

 「魔界村」シリーズの最新作「魔界村騎士列伝」も、iPhone/iPod touchならではの工夫を加えた。「iPhoneはほかのケータイよりもグラフィック性能が高いので、初期の魔界村の味わいを損なうことなく3D化できた。魔界村騎士列伝は、もともと国内のケータイ向けに作ったものだが、すべてiPhone向けにグラフィックを描き直した」と、伊藤氏は魔界村騎士列伝が単なる移植ではないことを強調した。

photophoto iPhone/iPod touch向け「魔界村騎士列伝」(写真=左)。緻密に描かれたグラフィックも同作の魅力だ(写真=右)

 オリジナル版から“常識を覆すほど”変更したのが「難易度」だ。「バイオハザードのレビューでは『難しい』という意見が多かったので、魔界村は思い切って難易度を下げた」と伊藤氏は説明する。さらに、iPhone OS 3.0のアプリ内課金を利用した「残機数無限」「鎧強化」などの“お助けアイテム”を提供し、時間のないユーザーでも確実に最後まで遊べるよう配慮した。その結果、「お助けアイテムは、標準的なPCオンラインゲームよりも非常に高い購買率を記録した」という。「ゲームは遊ばれないことが一番悲しい。アプリ配信というよりは、一貫したサービスと考えて開発した」(伊藤氏)

 とはいえ、難易度を下げただけでは従来のファンには物足りないので、バージョンアップをすることで「高難易度モード」を追加可能にした。

photophoto 最後まで遊んでもらうことを優先し、オリジナル版よりも難易度を下げた(写真=左)。「元々の難易度を下げているので課金アイテムを買わなくてもクリアできる」(伊藤氏)が、さらにハードルを下げるべく“お助けアイテム”を採用。「これらのアイテムはいわば、ずるをするための“チートアイテム”。『昔やり込んだけど社会人になって時間がない』『昔のように最後まで遊びきりたい』という人のために設けた(写真=右)

iPhone/iPod touch向けのオリジナル作品も開発中

 トークセッションの最後に、iPhone/iPod touch向けの新作ゲーム「逆転裁判」が近日中に配信されることが明かされた。「オリジナル作品を完全移植しながら、画面をタッチしたままずらして離すとコマンドを選べる“フリックライクインターフェース”を採用。どんなシーンでも没頭して物語を楽しめる」(伊藤氏)よう、快適な操作性にこだわった。

 質疑応答では「現時点では発表できないが、iPhone/iPod touch向けのオリジナル作品も開発している」(手塚氏)とのコメントも出たので、続報を期待したい。「これからも積極的にiPhoneとiPod touch向けにゲームを配信していきたい。何も考えてなさそうなところで、実はすごく考えているので、そこを感じながら遊んでいただけるとうれしい」(手塚氏)

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