ゲーム作りの参考になる? 「えりかとさとるの夢冒険」:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(3/3 ページ)
第4章の舞台は、“オットリ市”と“ノウチ市”。海で南北に分けられたマップの形から考えても、モデルは鳥取と高知だろう(マップ上の位置関係は、むしろ岡山と高松っぽいが)。
関東の横浜から、東海と近畿がすっ飛ばされて、いきなり中国・四国に移っている。もしかしたら3章と4章の間に、もう1、2章挟む予定だったのかもしれない。
もっとも、このゲームが発売されたのは1988年9月で、瀬戸大橋の開通からわずか5か月後。中四国地方に注目が集まっている時期だった。4章のマップに瀬戸大橋は描かれていないが、オットリ駅とノウチ駅は電車で行き来できる。
この章でも、泳いで海を渡ることが可能。小学生が瀬戸内海を泳いで渡るという非現実性が、「不思議な世界」の不思議さを表している(単に「不思議な世界」の地形が、現実の中四国よりうんと狭いだけという気もするが)。
これまで、2人一緒じゃなければ起こらないイベントは多数あったが、この4章では、えりかだけ、あるいはさとるだけでないと発生しないイベントがいくつかある。そのぶん難度が高い。
4章のアイドルの歌もそうだが、ほのぼのとした世界観の中に、“マンダラ”とか“チャクラ”とか“オンアビラウンケン”とか、密教系の単語が頻繁に出てくるギャップもおもしろい。
“ヒランヤ”というのも懐かしい。当時話題となったお守りで、六芒星、つまりダビデの星の形をしている。ピラミッドパワーを持つとうたわれ、タバコを置くとマイルドになるとか、植物を置くとよく育つとか、かみそりを置くとよく切れるようになるなどと言われていた。
実はわたしも一時期ハマって、持ち歩いていたことがある。今では考えられないけれど、と学会の「トンデモ本の世界」を読むまでは、典型的な“ビリーバー”だったのだ。
そもそも当時は、と学会自体がまだなかった。会長の山本弘氏はこの頃、ゲームブック作家として知られていた。特に、ゴブリンがどんどん強いモンスターに変身して、人間に復讐を果たす「モンスターの逆襲」が素晴らしかった。
……と書いたら、また山本弘氏が書いたゲームブックが読みたくなった。ニンテンドーDS用ソフトでいいから出してくれないかなあ。
ゲーム作りってやっぱり大変なんだにょ
最後の第5章、舞台は“クマソ市”。熊本と阿蘇と、古事記に出てくる熊襲(クマソ)国を掛けたと思われる。アセ山という火山が出てくる。
このクマソから、北側の海を渡ったり、電車に乗ったりすると、フジという駅に着く。近くにブジ山の樹海があるから、富士駅のことなんだろう。駅が“フジ”で山が“ブジ”だから、駅名の方が誤植と思われる。
さらに、クマソの西側から海を渡ると神社に着くが、鳥居に“いきた”と書いてある。これは神戸の生田神社のことか? 3章から4章で東海と近畿をすっ飛ばした代わりに、ここでまとめて出したということだろうか。
フジの誤植もそうだが、この第5章にはもっと致命的な問題がある。ゲームがクリアできなくなるバグだ。
この章で2人は荷物を盗まれ、時計台で取り返すのだが、その後もう1回時計台に行くと、所持品が一切使えなくなることがある。こうなると、最後の地下迷宮へ入るときに必要なアイテムが使えず、クリア不可能となってしまうのだ。
あと、終盤にツボから出てきた「生き神様」が、いったい何なのか最後まで分からなかった。出てきた途端、このゲームの大ボス的存在である、ハライソ団のボスが屈伏するくらいの重要キャラ(アイテム?)なのだが。
ともあれ、えりかとさとるは、ブジの樹海から地下迷宮に入り、妖精に会って“時の冠”を手に入れる。そして元の世界で目を覚ます。「不思議な世界」は夢だったのか? 夢でないとすれば何だったのか? あえてはっきりさせないままゲームは終わる。
実は近年になって、このゲームに隠しメッセージが発見されたらしい。開発スタッフの本音を読むことができるという。
実際にメッセージを出して、読んでみた。
……なんか、ゲーム作りって、大変なんだなあと感じた。
こういうのを読むと、最初に挙げた某Aとか某Bとかを責めるのがためらわれる。
わたしもゲームを作りたいと思っていたけど、趣味にとどめておいたほうが良さそうだ。無理せずに、NScripterか何かを使って簡単なアドベンチャーゲームを作り、タダで配信することから始めよう。
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