オープンプラットフォームとは何なのか――DeNA「モバゲータウン」の戦略野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン(3/3 ページ)

» 2010年03月17日 08時00分 公開
[野島美保,Business Media 誠]
前のページへ 1|2|3       

モバゲータウンのオープン化

 この3月、モバゲータウン(モバゲー)が全面的にオープンプラットフォームとなる。モバゲーは1725万人(2010年2月末)の登録ユーザーを抱える携帯SNSサイトで、ゲームやケータイ小説などの娯楽コンテンツ、さらにはニュースや乗換案内などの便利ツールも提供している。2009年10月から内製ソーシャルゲームを始め、『怪盗ロワイヤル』などの人気ゲームを生んでいる。2010年に入ってからは段階的にパートナー企業のソーシャルゲームを公開してきたが、3月からはオープン化によって参加枠の限定がなくなり、法人であればどこでも参加できるようになったのだ。

怪盗ロワイヤル

 モバゲーのプラットフォームとしての特徴は、課金システムの整備とマネタイズ支援にある。モバゲーでは自社開発のゲームで既にユーザー課金を行ってきたノウハウがある。別の見方をすれば、ユーザー側が「課金慣れ」をしていることも強みとなる。

 課金システムというと、「携帯キャリア決済やクレジットカードなどの支払い手段の整備で終わる」と思われるかもしれない。しかし、「最初は無料で始めたゲームに対して、財布のひもをゆるめる」というユーザー行動にいかにマッチさせるかという、サービス運営上の課題が残されている。

 例えば「モバコイン」という仮想通貨の存在は、課金システムの大きな要素である。仮想通貨の発行は多くのオンラインゲームで行われていることであり、「ゲームプレイをする自分」から「支払いをする自分」に意識を切り替えるのに、よいクッションとなる。何かアクションをするたびに、100円、200円と現金を支払う動作を入れてしまうと、興冷めしてしまうからだ。

 独自の仮想通貨の流通・管理には、継続的な運営とノウハウが必要であるため、この仕組みを先行して持っていることは大きな利点となるだろう。外部のコンテンツプロバイダーでも、3割のレベニューシェアをDeNAに支払うことで、モバコインを通じた課金システムを利用することができる。

 そのほか、アフィリエイト(成果報酬型)やクリック単価型の各種広告プログラムなど、コンテンツプロバイダーのマネタイズ支援に力を入れている。面白いところでは、アバターアイテムを制作して販売する仕組みがある。ゲームアプリに連動したアイテムを制作すれば、モバゲー本体のSNSアバターに表示することができ、さらには有料販売することができる予定だ。ゲームで手に入れたアイテムをSNSの友人に見せびらかすこともでき、日記やランキング以外での新たな口コミ効果も期待される。

 DeNAは自身もゲームを制作運営していることから、ユーザー課金を念頭においたゲームのマネタイズに力を置いている。42社の101タイトルが稼働しているが(2月10日現在)、上位アプリは公開数日から2週間で売り上げが1日100万円を超えるという。「モバゲーオープンプラットフォームの強みは、『ゲームに特化』『強力なマネタイズ』『オープンな戦略』です。間口を広く敷居を低くし、多くの企業に参加いただけるよう進めていく予定です」(DeNA広報)

 SNSはメディアなのか、ゲームのプラットフォームなのか。ページビューを稼いで広告収入を得るのか、ユーザー課金を突き詰めるのか。SNSが自身をどのように位置付けるかによって、分業形態も変わってくるだろう。

 国内ではmixiに続いてモバゲータウンやGREEなど、SNSのオープン化が進んでいる。このまま発展していけば、SNS各社の戦略によって異なるソーシャルゲームが提示されるだろう。ソーシャルゲームとひとくくりにするのではなく、個々のビジネスのデザインに注目していきたい。

野島美保(のじま・みほ)

成蹊大学経済学部准教授。専門は経営情報論。1995年に東京大学経済学部卒業後、監査法人勤務を経て、東京大学大学院経済学研究科に進学。Webサービスの萌芽期にあたる院生時代、EC研究をするかたわら、夜間はオンラインゲーム世界に住みこみ、研究室の床で寝袋生活をおくる。ゲーム廃人と言われたので、あくまで研究をしているふりをするため、ゲームビジネス研究を始めるも、今ではこちらが本業となり、オンラインゲームや仮想世界など、最先端のEビジネスを論じている。しかし、論文を書く前にいちいちゲームをするので、執筆が遅くなるのが難点。著書に『人はなぜ形のないものを買うのか 仮想世界のビジネスモデル』(NTT出版)。

公式Webサイト:Nojima's Web site


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  5. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  8. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  9. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
  10. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」