17歳が語る“脱・ネトゲ廃人” 「スレた目」が変わったとき(2/2 ページ)

» 2010年04月02日 07時00分 公開
[宮本真希,ITmedia]
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「スレた目」が変わりはじめた

 無気力な毎日が変わり始めたのは昨年6月ごろだ。1年前に取材されたときの内容をまとめた本「ネトゲ廃人」が発売された。複数のネトゲユーザーとともに西村さんも登場し、「スレた目をしている」と紹介されていた。本は8万部売れたという。

 この本がきっかけで、リーダーズノートのオフィスにも遊びに行くように。社長に気に入られ、「本を書いてみないか」と誘われた。今度は自分がゲーマーの視点からネトゲの世界を紹介したいと、執筆を引き受けた。バイトを辞め、出版社で雑用を手伝いながら、原稿を書いた。


画像 西村さんのブログ
画像 著書「僕の見たネトゲ廃神」。帯には「愛の無いこの世界から、魔法を求めて旅だった」と書かれている

 そして半年かけて完成させたのが「僕の見たネトゲ廃神」だ。ネトゲで出会った人や自身の半生を振り返る内容。4カ月間も風呂に入らずネトゲに没頭する人から、ネトゲ中に席を立つのが面倒だからとペットボトルで用を足す「ボトラー」まで、“廃神”が次々登場する。

 初版は2万5000部で、2月半ばにさらに5000部増刷するなど、売れ行きは上々だ。「ぼくの人生が17歳にしては波乱万丈だからかも」。山手線の車内で、偶然著書の広告を見かけ、「もう乗れないな」と照れることもあるという。

「いまはリア充」「ネトゲは続ける」

画像

 出版社での経験は「何もかもが新鮮で楽しかった」という。「仕事をしないこと、ネトゲをすることだけが自由なんじゃない。本当に心から楽しめる今こそが自由なんだと気づいた」と著書で明かす。「ネトゲの世界よりリアルは広い。もう廃人になりたくない」と、西村さんの気持ちが変化していった。

 「いまはリア充です」と笑う。平日は自身の本の営業で全国の書店を回り、その様子をブログにつづる。休日は、演劇の制作を手伝ったり、非モテSNSの運営スタッフとしてオフ会の企画などを担当している。

 今年2月には非モテSNSの副管理人に就任。約20人の運営スタッフをまとめている。「非モテSNSがめちゃくちゃ楽しいです。居心地よすぎてモテなくていいんじゃないかと思うくらい」と西村さんの声が弾む。非モテSNSの管理人・えがちゃんは、「ほかのスタッフからかわいがられている。積極的で行動力もある」と期待を寄せる。

 ネトゲは暇なとき1〜2時間プレイする程度に減った。ネトゲのチャットで昔からの友人と少し会話して満足しているという。「ネットでのリアルタイムのコミュニケーションの楽しさを知っているし、これはこれで大事にしていきたい」と、ネトゲを止めることはしないつもりだ。

 今後は出版社での仕事を続けていきたいと考えている。高校を退学したことはもう後悔していない。「同年代よりよっぽど面白いことをしている。いまは人生を楽しんでいます」――西村さんの笑顔がはじけた。

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