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映画監督・浪川大輔独占インタビュー「ロッポンギ・アニメ・ナイト特別企画ワンダフルワールド スペシャルトークショー」

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 5月14日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで映画「ワンダフルワールド」のスペシャルトークショーが行われた。そのイベント後、監督を務めた浪川大輔に独占インタビューを敢行。初体験となった監督という仕事に対する思いを聞いた。

 人気声優である浪川大輔が映画監督をやる。しかも、アニメではなく、実写映画で。これはなかなか興味深い事件だ。尋ねてみたいことはいろいろあるが、初めてということもあって、何かと苦労もあったようなので、まずはそのあたりから聞いてみよう。

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「なにしろ初めてだったので、分からないというか知らないことばかりで苦労しました。これまで僕がやってきた役者というのは、ステージの上に乗せられてからの部分しかなかったんですけど、そのステージ作りというのをやってみると、“何だこれは!”という感じで、今までずいぶん楽をしていたと思うくらいに大変だったですね。監督というのは、本当に細かいことまで全部決めないといけないんです。もう画面に映るものはすべてです。例えば“弁当箱ですが、長方形と正方形があります、厚さは同じです。どっちにしますか”とか、“お箸は割り箸ですか、普通の箸ですか”とか、“腕時計は緑と黄緑、どっちですか”とか、最初は正直どっちでもいいよ、なんて答えていたんですけど、そう言うことを言うと、後で助監督が他のスタッフに文句を言われていたりする。ああ、とにかく決めればいいのかということが分かって、じゃあこっちで、と言うと現場はどんどん進んでいく。そういうことも勉強しましたし、そういうことをいろいろ経験して、スタッフの気持ちも知ることができました。人間として視野が広がったと思います」

 脚本、美術、照明などはもとより、スケジュール調整やその日に撮影する内容の決定など、とにかく膨大な仕事をしなければならないのが監督という仕事だ。そしてもちろん、その中でももっとも重大なのが作品作り。映画は撮影が終わっても、全体から見れば半分も終わらない。監督の力量が問われるのは、むしろ撮影が終わってからと言っても過言ではない。

「撮影は7日間でやったんですけど、撮ってる間は楽しかったし、いい思い出にもなりました。でも思い出作りのためにやっているわけじゃないから、そこから編集作業に入るわけです。で、ラッシュ(撮影した映像をとりあえず繋いだ状態)を見た時、これはヤバイぞ、という思いが出てきました。撮っている時はいい感じだと思っていたのに、映像で見てみると、これでいいのか、これで面白いのか、という不安に襲われたんですね。でも、出演してくれたみなさんは忙しい人ばかりですし、後から撮り直しはできないから、あるものを使うしかない。で、見せ方とか効果とか、いろいろ考えながら、良くしていくんですけど、そのうち、1つのことに気づきました。例えば修正の指示を出す時、最初は“ここつまらないからもう少し面白くしてよ”という感じだったんですが、これだとスタッフにも伝わらないし、具体的にどう直すのか分からないから、相手も困ってしまう。それを、“ここ、俺がもっとノリたいから何とかしてよ”という言い方ができると、“じゃあこんなのどうですか”という感じで周りからもアイディアが出てくる。つまらないから直す、という感覚ではダメだと」

 試行錯誤で監督業を続けていくうち、浪川の中で分かってきたことは、自信とこだわりを共存させることだったようだ。

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「自分の作っているものは面白い、と自信を持って、そして本当に面白いものにするために努力する。やっぱり他人に面白いですよ、と言って勧めたいじゃないですか。そのためには、あきらめずに粘るしかない。考えれば、あるんですよ。いろんなやり方が。見せ方を変えればイメージがガラリと変わるし。映画を見ている人は、あるものをそのまま撮っていると思うかもしれないんですけど、そんなことはなくて色ひとつとっても、1カット1カット、調整して決めていきます。そのシーンでもっともふさわしい色を探していくわけですね。そういうのを自動的にやってくれる機械もあるんですけど、『ワンダフルワールド』では、1カット1カット全部自分たちで見てやりました。全体で1400カットぐらいあるんですけど、そのすべてのカットをです。90分の映画にしては、カット数が多いわけで、そうなると音楽が合わせにくいかなと思ったんですけど、そこを工夫して合わせています。すごくこだわったところなので、意識して見てもらえたら嬉しいですね」

 映像にこだわると、いきおい予算がかかりそうに思える。だが、浪川は必ずしもそうではないと言う。

 「『ワンダフルワールド』は低予算でやりたい、というとこから始まっているんですけど、人間って面白いもので、よく“金がない”と言いますけど、でも、金があるからといっていいものができるとは限らないんですね。逆に1シーンにものすごい大金を用意して、これだけの予算をあげるから、そのシーンは最高のものにしてよ、と言われると尻込みする人も出てしまう。じゃあ、なんで金がないなんて言うんだ、ってことになるじゃないですか。ないならないなりにやり方はあるだろうし、僕もそれを言い訳にはしたくなかった。お金をかければ、すごいものにはなります。それは絶対に間違いないです。見た目も派手になるし、そういうものは誰でも好きですから。でも、見て面白かった、というのと、見て考えさせられたというのは全然違うと思うし、重要なことは何かが伝わるかどうかだと思うんです。今回僕が監督をやったのも、監督をやりたかったというより、自分の伝えたいものを伝えるには監督というポジションが一番よかったということなんです」

 浪川がいう“伝えたいこと”。それはいったい何なのだろうか。

「伝えたかったことというのは、いくつかありますけど、そのひとつが“とにかくやってみろ”ということです。自分が監督をやると聞いて、そんなの無理だよ、と思った人もいるかもしれないんですけど、でもとにかくやってみた。あきらめずにやってみる。それは決して損にはならないと思います。そしてそれは、映画のテーマにもなっています。現在、6月19日の公開に向けて死に物狂いで頑張っていますが、何かを伝えられる作品にしたいと思いますので、是非みなさん見に来てください。お願いします」

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 人気声優が監督をする、ということでいったい何のためにそんなことをするのか、といぶかしんだ人もいるかもしれない。あるいは出演者に声優が多いことで、仲間内が集まった一種のイベントなのかと思った人もいるかもしれない。だがそれは間違っている。浪川をはじめ、キャスト&スタッフはみな真っ向から実写映画というジャンルに挑んでいる。

 浪川はトークショーでも「普通の俳優がアニメで声優をやることがあるなら、同じ表現者である声優が俳優をやっていけない理由はないはず」とコメントしていた。そう、彼は呆れるほどに真剣なのだ。そしてその成果は後1カ月と少しで見ることができる。その時、スクリーンに映るものは何なのか。それが何であれ、浪川が文字通りボロボロになるまで入れ込んだ、こだわりの精華であることだけは間違いない。

 ちなみに彼が意識している監督を挙げてもらったところ、ミシェル・ゴンドリーの名が返ってきた。映画ファンでもそれほど知名度が高いとは言いがたい、ちょっとクセのある監督だ。だが、そんな監督の名が出ることが何となく浪川らしい。気になる人は代表作である「エターナル・サンシャイン」「恋愛睡眠のすすめ」あたりを見ておいてから劇場へ行くのもいいだろう。なお、前者の日本語吹替版ではイライジャ・ウッドの役を浪川本人があてている。

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