「ソーシャルゲームという言葉は消える」 Zynga、EA幹部が語る「ソーシャル」:IVS 2010 Spring
国内外のベンチャー経営者らが集まった「IVS 2010 Spring」は「ソーシャル一色」。オープニングに登場したEAのPlayfish部門とZyngaの幹部がソーシャルゲームについて持論を述べ、将来の日本参入も示唆。
新興ベンチャーキャピタルのインフィニティ・ベンチャーズLLP(小林雅・田中章雄・小野裕史共同代表パートナー)は6月10〜11日、IT・ネット・モバイル系のテーマについて国内外のベンチャー経営者らが講演・討論する招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2010 Spring」を札幌市で開催した。毎回さまざまなテーマが取り上げられるが、今回は、ソーシャルゲームやソーシャルメディアなど、まさにソーシャル一色に染め上げられていた。参加者も、SAP(ソーシャル・アプリケーション・プロバイダー)を中心に急増、400人超と過去最多になった。
初日のオープニングセッションでは、「ソーシャルゲームの王者たち〜Facebookでトップを狙う経営手法」をテーマに米Electronic Arts(EA)のソーシャルゲーム事業部門「Playfish」のゼネラルマネージャーを務めるクリスティアン・セゲルストラレ氏と、米Zyngaの開発担当シニアバイスプレジデントのロバート・ゴールドバーグ氏の2人が講演した。両者はソーシャルゲームに関する持論を述べつつ、将来の日本市場参入についても言及していた。
Zyngaのゴールドバーグ氏が長期的な成長戦略として掲げたのは「パートナーシップを組んでいくこと。最初のパートナーはYahoo!だったが、今後もやっていきたい」と強調した。同社は2007年の設立。FacebookをはじめとするSNS上で動作するゲームアプリの開発で先行しており、現在月間1億3000万人のユーザーを獲得している。さらに、拡大するために今年5月下旬、米Yahoo!と提携した。この枠組みを活用して、「ほかの企業との提携も進めていく」と発言した。
「(ソーシャルゲームの)成長率はただのオンラインゲームより成長率は高い」。ゴールドバーグ氏はこう言い切った。同氏がZyngaに入社した2008年12月のデイリーユーザーは400万人だったが、09年4月には600万人、10年5月には5600万にまで増えたという。
規模を生かして、オフラインの提携による事業も進めている。「10日ほど前にローンチしたばかりだが、全米の1万4000店のセブン-イレブンとプライベートブランド商品で、ソーシャルゲームとコラボレーションしている。期待はしていたが、飲料や食品などの売れ行きは、これまでセブン-イレブンが映画やDVDとコラボレーションした時よりも効果が大きいようだ。ゲームカードの売り上げも上がった」。
「最後に指摘しておきたいのは、われわれには、何かしら社会に貢献したいという思いがある、ということ。起業家支援に加え、Zinga.orgという非営利の活動にも注力している。最初に行ったチャリティー活動はハイチの地震の際の募金。バーチャルグッズをつくり、150万ドルを集めることができた。募金額としてはもっとも早いスパンで集めた例だ」。ゲームを作るだけでなく、「ゲームを通じて世界を、人々をつないでいくのが目的だ」と企業姿勢を強調していた。
EAのセゲルストラレ氏は「いずれ、ソーシャルゲームという言葉は語られなくなる」との衝撃的な見方を披露した。その真意は「2〜3年ですべてのゲームがソーシャルになる」ということだ。同氏は長年、SNSにかかわり、2007年にPlayfishを共同創業。その後、昨年11月にゲーム大手のEAに買収された自らのキャリアがそう言わせるのだろうか。
「ソーシャルゲームは、進化のスピードが既存のゲームより速い。ユーザーとのインタラクションを通じて、イノベーションが進む」と説明する。「ゲームの価値はライフタイムバリューで決まる。ゲーム開発会社とユーザーとの長期的な関係性が重要になる」と指摘した。
両社ともまだ、日本市場には参入していない。そうした中、今回の講演で、ゴールドバーグ氏は「日本での事業展開を準備している」と語った。一方、セゲルストラレ氏は「日本ではソーシャルゲームが大きな成功を収めている。参入には連携するパートナー企業が重要だ」と話していた。ミクシィやディー・エヌ・エー、グリーが相次いでプラットフォームとしてオープン化を進めており、近々、両社のゲームがお目見えすることになりそうだ。SAP同士の競争もますます激しくなりそうだ。
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