「アホ毛はやめて!」 ネオロマCGデザイナーが語る“美男子”の作り方:CEDEC 2010
「もっと器の大きい感じに」「アホ毛はやめて!」――女性向け恋愛ゲーム「ネオロマンスシリーズ」の開発現場では、キャラ制作に関して熱いやりとりが交わされている。魅力的な美男子を描くこだわりをCGデザイナーが語る。
「もっと器の大きい感じに」「アホ毛はやめて!」――女性向け恋愛ゲーム「ネオロマンスシリーズ」(ネオロマ)の開発現場では、キャラ制作に関して熱いやりとりが交わされているという。魅力的な美男子を描くためのこだわりを、コーエーテクモゲームスのCGデザイナーが、ゲーム開発者向けイベント「CEDEC 2010」で語った。
ネオロマンスシリーズは、94年にスタートしたコーエーの女性向け恋愛ゲームの総称。「アンジェリーク」「遙かなる時空の中で」「金色のコルダ」など複数のシリーズを展開している。CEDECで講演したソフトウェア開発本部CG部の大森まゆこシニアリーダーは、10年前からネオロマのキャラCGを制作しているベテラン。「とにかく熱い」というネオロマファンの期待を裏切らないよう奮闘してきた。
ネオロマンスシリーズのキャラデザインは少女漫画家が担当。シナリオ担当者が考えたキャラ設定を漫画家に伝えて描いてもらい、それをもとに大森さんら社内デザイナーがCG化する。漫画家とシナリオ担当者双方の要望を受け止めて調整するのも大森さんの仕事。「威厳がある感じ」など抽象的な設定は具体的な要望に落とし込み、漫画家に伝える。
高校生が音楽コンクールで勝利を目指すストーリーのゲーム「金色のコルダ3」に八木沢雪広というキャラがいる。吹奏楽部の部長で、おっとりしているが、芯の強さもあり、誠実という設定だ。これを漫画家に伝えたところ、かなり地味なイラストが出来上がったという。CGデザイナーたちは、ほかのキャラに埋もれないよう見た目に特徴が必要だと考えた。
だがシナリオ担当者は、演出上地味である必要があると主張。意見が対立する中、「アホ毛をつけよう」「アホ毛はやめてください!」「ではマフラーをつけてみては」などと個性を表現するためのアイデアを出し合ったという。芯の強さを表現するため、普段のルックスは地味という結論に落ち着いたところ、ファンからは“ギャップ萌え”と好評だったと振り返る。
同作に、管弦楽部の部長の東金千秋というキャラも登場する。派手で尊大という設定を生かし、金髪のキャラCGを作成。シナリオ担当者に見せると「200人の部員を従える彼はいわば伊達政宗なんです。もっと器の大きい感じにしてください」と要望が返ってきたという。そこで、眉毛を釣り上げたり、あごラインをシャープにしたりとニュアンスを調整。器が大きく見えるよう試行錯誤でキャラ設定に近づけた。
「シナリオ設定と漫画家が描いた原画が絶妙に混ざり合ったCGを作るのが役割」と大森さん。女性向け恋愛ゲームのキャラは「美男子であることが必須」だが、ネオロマンスシリーズではこれまでに100人以上のキャラがおり、「ただ美男子というだけでは埋もれてしまう」ため、「美しいだけではなく、いかに特徴的で、魅力的にしていくかにこれからも挑戦する」と力強く語る。
ネオロマンスシリーズは、1作で約200点のキャラCGを3〜4カ月かけて制作。それぞれウエストアップ、バストアップなどサイズ別に加工するため、実際の納品数は2倍になるという。全工程でPhotoshopを使い、作業を「下絵」「線画クリンナップ」「目パチ口パクアニメ」など6段階に細分化して進めている。
線画クリンナップはキャラの下絵を1本線でなぞっていく作業。目パチ口パクアニメは、着色された線画にまばたきや口の動きを加える作業だ。
全行程をデジタル化することで修正しやすくし、各段階でチェックしながら進めることで、仕上げの段階でミスに気付き、最初の行程まで戻る――といったロスを防ぐ。大量のキャラCGを少ない工数で制作するための工夫だ。
各工程で求められるスキルが違うため、すべてのスキルを習得するには経験と指導人員の確保が必要。「部下に寄り添い手本を見せながら、人員育成に取り組んでいる」という。
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