携帯のパケット定額制は、携帯コンテンツに何をもたらすのか。コンテンツプロバイダ(CP)だけでなく、通信キャリアも含めて、ビジネスモデルの転換が必要なのか──。
東京ゲームショウ2004のフォーラムで、ナムコ、スクウェア・エニックスといったCP、端末メーカーのNEC、キャリアのドコモが、携帯ゲームの今後について議論を交わした。
ドコモが6月1日からFOMA向けに開始したパケット定額制(3月24日の記事参照)。ドコモのプロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部長の夏野剛氏は、900iユーザーの約2割が定額制に加入していることを明かす。
その効果は、各CPのサイトトラフィックに如実に表れているようだ。ナムコのCXカンパニー石村繁一プレジデントは、「FOMA定額制の開始で、(同社グラビアコンテンツサイトの)トラフィックがぐっと伸びた。おそらく、PDCのトラフィックが1Mバイト程度なのに対し、FOMAは10Mバイトくらいあるのではないか」と話す。
定額制の導入によって、ユーザーは使いすぎを警戒することなく、さまざまなサイトを巡り、コンテンツを利用するようになる。定額制で先行したKDDIが、しばしば主張するように、定額制導入によってコンテンツの需要は拡大したと考えるべきだろう(6月28日の記事参照)。
しかし、CPにとって定額制は、もろ手を上げて歓迎できるというものでもないようだ。1つの理由はサーバ負荷にある。
「あまり定額制を意識しては作っていない。ガンガンデータを落とされると、サーバが大変なことになってしまう」とスクウェア・エニックスのモバイル事業部部長 洞正浩氏。同日本サービスを開始した「BEFORE CRISIS -FINAL FANTASY VII-」は、βサービスに続き再びサーバダウンに見舞われた。
またナムコの石村氏は、定額制の導入で無料サイトを使いやすくなり、相対的に公式サイトの優位性が失われるという懸念も抱いている。「無料サイトでも、探し回ればいいコンテンツが見つかるが、従来はパケットコストがかかるため、品質が保証されている公式サイトにくる傾向があった」。
さらに石村氏は、定額制によってキャリアはビジネスモデルの転換を迫られるのではないか、と疑問を呈す。従来のビジネスモデルは、大量に通信が発生するコンテンツを用意してパケット通信量を増やし、通信料を稼ぐというものだった。ところが定額制で、この考え方は逆転する。
「定額制時代に最もありがたいお客は、定額料金を払いながら通信をしないユーザーだ。今後は、いかに通信設備に負担をかけないようにするかはポイントになるのではないか」(石村氏)
KDDIも最近、「従量制のときは、ずっと携帯を使ってもらいたかった。定額では、設備の負担にも影響するので、ずっと使ってもらわなくていい」と発言している(8月27日の記事参照)。
ところがドコモの夏野氏は、定額制を導入しても戦略は何も変わらないと言い切る。「定額制を導入しても、8割のユーザーに対しては昔のビジネスモデルのまま。パケ・ホーダイユーザーのことを考えて、『あまりパケット使わないで』とか、器用なことはできない」。
背景には、定額制普及に積極的なKDDIと違い、そもそもドコモには定額制加入者を増やそうという意図がない点がある。「定額制加入者数をどうしたい、という意識はない」(夏野氏)。また定額制加入者専用のコンテンツを全く用意していないことからも、ドコモの定額制に対する考え方が分かる。
夏野氏は、現在2:8となっている定額制加入者の割合が、今後増加するとは考えていない。もともとヘビーにパケット通信を行っていた2割のユーザーが定額制に加入しただけという考えだ。2割から増えるかどうかは、ドコモが関与するというより、面白いゲームが出てくるかどうかだと主張した。
現在のところ、定額制についての考え方は、ドコモとKDDIで大きく違っている。コンテンツ面で、積極的に定額制を活用しようとするKDDIと、消極的なドコモ。
「定額制に新たなビジネスチャンスがある」(ナムコの石村氏)、「定額制ユーザーを増やしていくようなモノ作りをしなくてはならない」(スクウェア・エニックスの洞氏)と、CPは定額制を無視できぬものと捉えているが、キャリアとは微妙な温度差が存在している。
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