「岩井俊雄 エレクトロプランクトン展」が開催――任天堂の岩田氏と宮本氏も駆けつけた内覧会を紹介(2/2 ページ)

» 2005年04月09日 06時00分 公開
[遠藤学,ITmedia]
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ニンテンドーDSは岩井氏のために作られた?

 ライブパフォーマンス後は、任天堂の岩田聡社長と宮本茂氏が登場。岩井氏が司会を務め、トークセッションがスタートした。岩井氏はまず「出来上がったものをどう見ていただいてますか?成り行き上ひくにひけなくなった、とか。僕を誘った理由をもう一度聞かせてください。」と、いきなり際どい質問を投じる。

photo メディアアーティスト、東京大学先端科学技術研究センター特任教授である岩井俊雄氏

 これに対し岩田氏は「ニンテンドーDSの具体的な構想がまとまったのが、2年前くらいなんです。その時に、2画面やタッチパネル、マイクといった主要な機能が決まっていく中で、岩井さんの話が何度も出てきた。今回は絶好のチャンスだし、どんなものが出来るのか見てみたい、まぁ1人の岩井ファンとしての気持ちがありました。」とコメント。

 また、「岩井さんだからこそ表現できるDSの可能性みたいなものがある。それは普段ゲームを作りなれている人からは出てこないもの。それがDSであればできそうな気がした、というのが率直なとこです。」とも語っていた。

photo 任天堂 取締役社長の岩田聡氏

 一方、宮本氏は「何度かやり取りしてましたけど、気が付いたら出来てましたね。本当は最後は一緒に足掻かなくてはいけないんですが、スタッフが一生懸命やってくれましたし、岩井さんの思いがストレートにドンッと来ていたので、こんなに楽をしたことがないぐらいでした。」と答えていた。

photo 任天堂 専務取締役情報開発本部長の宮本茂氏

 ニンテンドーDSを作っている段階で、岩井氏向きのハードだとは宮本氏も感じていたようで、「ひょっとしたら岩井さんのために作ったハードではないか」と思うほどだったとのこと。そういう経緯もあってスタートした「エレクトロプランクトン」だが、岩井氏としては、非常に面白いものを感じていたという。それは何故か?

 「僕にしてみれば、ゲームを含めた任天堂の商品に刺激を受けて、自分の作品の方向を定めてきた部分もある。それを返しているのを楽しんでくれている状況というのは、嬉しいというか面白いですよね。」とのことだった。

 ただ岩井氏としては、世に出ることがなかった「サウンドファンタジー」と同じ流れになるのは避けたいとの思いもあったとのこと。それでも制作を引き受けたことに関しては、「もし何かしら発売できて、全員が好きにはならないかもしれないけど、その中に僕の考えている世界を好きになってくれる人が一握りでもいれば、それは物凄いことだ。」という考えを持ったからだという。

 これに対して岩田氏は「残りますし、どこにでも持っていける。それに気に入った人が別の場所で広めてくれるかもしれない、といった可能性がありますからね。」とコメント。

 ちなみに「エレクトロプランクトン」に関して、宮本氏は「買わない時は世間が悪い」という独自の見解を披露。岩田氏は「触る人によって、凄く面白いものになったり、つまらないものになったりする。好奇心測定装置ができたのかなと思います。」とそれぞれの考えを述べていた。

photo

 トークセッションも終盤に差し掛かると、岩井氏はゲームの作家性についても言及。自分は門外漢だからと前置きをしつつ、ゲームというカルチャーの中に、作品名と作者名がセットになって出ているものが少なく、本や音楽を引き合いに出し、作家名をアピールすることの必要性を訴えていた。

 これに対して岩田氏は「それは1人の意思で全体をコントロールできるような構造ができた時にそうなると思う。それが今できないのは、何十人の人が何人かの指示で作っている。これは誰々の作品、と簡単には言い切れないものがある。でも一方で、もっと誰々の作品と言っていいものまで、ゲームの文法の中に覆い隠そうとする方向に流れていたかもしれない。」とコメント。

 一方、宮本氏は「コンテンツにもよりますよね。今月末に『エレクトロプランクトン』に対抗して、『nintendogs』というゲームを出すんですけど、この場合だと作家名が入っているのは好ましくない。せっかく犬のゲームを買ってきたのに、誰々が作りましたとなると嫌じゃないですか。だからゲームによって作家名を出したほうが良いものと良くないものがあると思います。」と語っていた。

photo

 長年の付き合いと、岩井氏の特性を引き出すニンテンドーDSというハードにより生まれた「エレクトロプランクトン」。岩田氏が述べていたように、若干人を選ぶタイトルであるのは事実だが、それを判断するためにも、一度展覧会に足を運んではいかがだろうか。

(C)2005 Toshio Iwai/Nintendo


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