IBMのPowerへの誘いにつれないMicrosoft
「Xbox 360にPowerを選んだように、MicrosoftはWindowsサーバのプラットフォームとしてPowerを選ぶべきだ」――iSeriesの生みの親ソルティス氏はそう語るが、Microsoftには今のところそのつもりはないようだ。(IDG)
次世代XboxでIntelからIBMのPowerプロセッサに乗り換えるというMicrosoftの決断をめぐって業界が沸いているが、だからといって近い将来、Powerサーバ向けのWindowsがリリースされるわけではない。同OSのサポートをIBM側が確約していても。
米IBMのiSeries担当チーフサイエンティスト、フランク・ソルティス博士は、Powerアーキテクチャへの移植はWindowsをiSeries上でネイティブに実行させる上での要件であり、それ自体は完全に「Microsoft次第だ」と語る。
同氏によると、新しいXbox 360はPowerアーキテクチャで動くWindowsの一例。従って、iSeries上でWindowsサーバを走らせることも可能だという。
同氏は、Microsoftは最もスケーラブルなエンタープライズ環境で勝負できることを裏付けるためにWindowsをPowerアーキテクチャに移植する必要がある、なぜならほかに選択肢がないからだとし、Powerは業界のほかのアーキテクチャより少なくとも3年は先を行っていると言い添えた。
iSeriesユーザーがWindowsのワークロードを統合しようと思ったら、現状はx86ベースのコプロセッサかアダプタに頼らなければならないが、WindowsがPowerにネイティブ対応すれば、その必要はなくなる。
ソルティス氏は、オーストラリアのパースで先週開かれたiSeries戦略プランニングカンファレンスの基調講演で、ゲーム機市場でソニーに追いつきたいというMicrosoftの思いこそが、最新のXboxで同社がIntelからPowerに乗り換えた理由だとした。
「ソフトウェアに各種の変更を加える必要があるというときに、なぜハードウェアを変更しようとするのだろうか?」と同氏は問い掛け、こう続けた。「その答えはただ一言。『ソニー』だ」
ソルティス氏は、1998年当時の世界最大のコンピュータ(この日の講演会場と同じくらいのサイズがあった)と、IBM、ソニー、東芝が共同開発した今日のCellプロセッサとを比較、処理性能の飛躍的な向上を指摘した。
「同じ処理性能を今日ではたった1つのCellチップで得られる――信じられないことだ」とソルティス氏。「それがソニーの使おうとしている技術であり、Microsoftがライバルの立場から、これに対抗できる処理性能が必要だと考えて不思議はない。Microsoftは『IBMとIntel、どちらに賭けようか』と考え、IBMに賭けることにしたのだ」
ソルティス氏の推測では、Microsoftが大きな賭けに出たのには、こうした競争上の理由に加え、プロセッサの世界が「かつてのやり方ではもはや通用しない」ところまで変化し、さらなる高性能化のために「革新的な技法」が必要になってきたことがあるという。
「Microsoftは賭けている。実際、これは大きな賭けだ。同社は、やがて技術革新においてIBMがIntelをはるかにしのぐことになるだろうから、ハードウェアを完全に変更しソフトを全面的に書き換え、従来とまったく異なる方向へ進んでもいいと踏んだのだ。これは、とてつもなく大きな変化だ」(ソルティス氏)
しかし、当のMicrosoftの反応はそっけなく、Powerプラットフォームに見て見ぬふりをしている。MicrosoftのWindowsグループプログラムマネジャー、クライド・ロドリゲス氏はComputerworldに対し、「それは当社のサポート対象プラットフォームではない」と語った。
なぜ市場機会を無視するのかという問いに、ロドリゲス氏はこう答えている。「当社のWindowsロードマップは、x86、x64、Itaniumに対象を絞って長期にわたるサポートを展開することだ。顧客ニーズに基づく新しい機会の検討も常時続けるが、現時点でPowerへの移植計画はない」
(筆者ロドニー・ゲッダはIBMの招待でiSeries戦略プランニングカンファレンスに参加した。)
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