知らなきゃよかった、でももっと知りたい:「零〜刺青の聲」レビュー(1/2 ページ)
暑い暑い夏において、ひとときの清涼を手に入れられるホラーは、もはやなくてはならない存在。“技術の成長が著しいゲームでホラーを楽しみたい”そんなゲームファン待望のホラーゲーム「零」シリーズ最新作の「零〜刺青の聲」が登場、けだるい暑さを吹き飛ばせ!
俺と「零」シリーズ
夏、それはクーラーや扇風機が活躍する季節で、「ホラー」が活躍する時季でもある。小さいころから稲川淳二氏の怪談話やホラー漫画をこぞって読みあさった筆者は、いわゆるプチホラーファン。怖いモノに目がない筆者は、とあるゲームに心を奪われた。今となってはホラーシリーズの金字塔となった、テクモの「零」シリーズだ。
珍しい“和風ホラーゲーム”に気がつけばムチュー
零シリーズは、霊感のある少女を操作して廃屋を探索するアクションアドベンチャー。朽ち果てた廃屋では、これでもかといわんばかりの霊が襲いかかり、それらを「射影機」で写して退治していくのだ。
射影機で写すという戦闘も楽しいが、筆者がそれ以上にひかれたのが、「和」を基調としたその世界観から生み出される恐怖。蝋燭の微かな明かりで照らし出される影や、垂れた布切れが風で微かに揺れるその様子など、幽霊という非現実的なもの以外に、その環境で怖さを演出しているのである。今までのホラーゲームの主流であった、窓ガラスが割れるといった“ドッキリ”以外に、こうも怖がらせる方法があるものかと、非常に感嘆した。
たとえば、1作目「零〜zero〜」の開始5分ほどでたどり着ける廊下の場面。天井からは何の目的のためにあるのかまったく理解不能な縄が垂れ下がり、廊下の突き当たりには全身が映し出されるほど大きな鏡がある。
その場所に足を踏み入れた瞬間、いやな空気が周囲に立ちこめる。あまりの不気味さに限界を感じた筆者は、そこで思わず初プレイを終了してしまった。このシーンは今思い出しても寒気がするほどのトラウマとなったのである。
だが、怖さもあったが、その先に何が待ち受けているのか気になったことも事実だ。なんとか気力を振り絞り、ちょこちょこプレイを重ねるうちに、気がつけばこのゲームの虜になっていた。
キャラクターを増やし、さまざまな恐怖を体感できる
時は流れて2005年の夏、シリーズ最新作である「零〜刺青の聲(しせいのこえ)〜」が満を持して登場した。まずは、前作までとの違いを紹介していこう。
過去作との大きな違いは、主人公が3人に増加したことだろう。物語の途中で彼らを切り替えつつ、話を進めていく。
物語の中核を担うのは、フリーカメラマンである黒澤怜。彼女はとある場所を取材中、事故で亡くしたかつての恋人・優雨(ゆう)の姿を目にする。その日を境に、夢の中に優雨が登場、彼に誘われるかのように、徐々に夢の世界へと迷い込んでいく……。
怜の操作は、基本的には過去シリーズの主人公たちと同じで、不気味な屋敷を探索する恐怖を体感できる。また、カメラマンの必須道具であるストロボを使い、襲いかかる霊をひるませられることが可能だ。
2人目の主人公は、シリーズ初代の主人公にして怜のアシスタントである深紅である。その霊感の高さから夢に住み着く霊に見初められ、夢の世界へと誘われていく。
深紅は元主人公ということもあり、射影機の扱いには長けている。3人の中で最も攻撃力は高いのだが、キャプチャーサークル(攻撃範囲のようなもの)が若干小さいため、霊をファインダーに捉えるのが少し難しい。
そこで役立つのが、深紅の持つお守りだ。これを使用すると、霊の動きが一定時間遅くなるため、怜とさほど変わりなく戦える。さらに、深紅のもう1つの特徴として、その小柄な身体があがる。他の2人では入れない、せまい場所をも探索できるのだ。
そして最後、3人目の主人公である螢は、優雨の友人という設定となっている。彼の姪である澪(前作「零〜紅い蝶〜」の主人公)が怜と同じ夢を見るようになり、その解決法を探すうちに、自らも夢の中へと迷い込む。
螢は他の2人に比べて霊感が弱いため、射影機の性能を引き出せない。つまり、攻撃力や射程など、すべての性能が他の2人よりも劣るため、戦闘は非常に苦手なのだ。だが螢は霊に気づかれにくく、さらに“隠れる”という特殊動作を行えるため、霊から逃げることは得意だ。絶対的に強い相手から、命を懸けて逃げる。そんな恐怖を体験できるキャラクターと言えるだろう。
操る主人公たちによって、アクションの違いを楽しむだけではなく、それぞれのキャラクターで違った恐怖を味わえる。これが本作の大きな特徴である。
“知る”恐怖を味わえる、最新作「零〜刺青の聲〜」
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