あの日の輝きをもう一度――ノスタルジー上等! 時をかけるゲーム:「オレたちゲーセン族」レビュー(1/4 ページ)
まだ、ゲームセンターに勢いがあった80年代。その時期にリリースされたタイトルをPS2に移植したソフト「オレたちゲーセン族」の第2弾が4本まとめて登場した。これらタイトルを年代順にレビューしつつ、当時のゲームセンター事情などを振り返ってみたい。
今と違い、二昔前のゲームセンターは夢が溢れていた……
その昔、ゲームセンターは夢の広がる世界だった。当時の家庭用ハードやパソコンでは絶対に再現不可能な、別次元のゲームを体験できる貴重な場所。不良のたまり場と言われつつも悪友たちとつるみ、時にはイケナイ場所からお金を拝借してきてまでゲームに没頭した……そんな思い出を持つ人もいるだろう。
今のアミューズメントスポットと違い、当時のゲーセンはテーブル筐体が数多く配置されていたため、照明を明るくするとライトが反射して画面が見えなくなってしまった。そのため照明は暗めに落とされ、妖しい雰囲気を醸し出す中で皆、ゲームに熱中したものだ。暗がりを利用してのカツアゲなども行われていたものの、そんなことがあっても行きたくなる場所、それがゲームセンターだった。
日々、50円玉や100円玉を投入しつつ同じゲームをプレイし、少しずつ上達しながら1コインクリアを目指す。今と違いコンティニューも連コインも、ましてや対戦格闘や1プレイ5分で終了などという音ゲーもない……そんな牧歌的な時代が80年代と言えるだろう。
この時期には数多くのビデオゲームが輩出されたが、そんな中から「バーガータイム(ハンバーガー)」「イー・アル・カンフー」「テラクレスタ」「スーパーバレーボール」の4タイトルが「オレたちゲーセン族」の第2弾として発売になった。これら懐かしい4本を年代順に、1つずつじっくり見ていこう。
バーガータイム(ハンバーガー)(1982年:データイースト)――人間の5倍ほどもあるハンバーガーを、どうやって食べるの?
1976年に設立され、2003年に破産宣告を受けるまで、アーケードゲーマーの心に深く刻まれる作品をリリースし続けたメーカー、それがデータイーストだ。アーケードでの代表作も数多く、中でもトリオ・ザ・パンチやチェルノブ、空手道、ザ・グレート・ラグタイムショーなど、奇抜なゲームを数多くリリース。ファンからは“デコゲー”の名前で親しまれてきた。そのデコゲーの1本として今回甦ったのが、このバーガータイムだ。
リリースされたのは1982年。世の中では、日航機が羽田沖に墜落していたり、赤坂にあるホテルニュージャパンで大火災が発生するなど、衝撃的なニュースが多かった1年でもあった。また、惑星直列等という天文現象も発生し、世紀末へ向けた不吉な前触れと称する話もあったとか。だからというわけではないだろうが、このゲームには奇妙な謎がつきまとっている。
ゲームを起動すると「バーガータイム」と素っ気ないタイトルが表示されるのに、なぜかインストカードにはハンバーガーと書かれている。私の手元にある資料でも、タイトルはハンバーガーと表記されているが、今回発売されたゲームのパッケージにはバーガータイム……。正直、これに関しての詳細な話を見つけることができなかったので、なぜインストカードとゲームのタイトルが違っているのか、知っているという人がいれば是非、ご一報を。
少し横道にそれてしまったので、早速本題に入ろう。バーガータイムは、この時代としては一般的だったドットイートタイプゲームとなっていて、画面内にあるハンバーガーの具材全てを一番下まで落とせば1面クリアとなる。
主人公は、コックさん姿のピーターペッパーだが、なぜか敵はハンバーガーの具材になりそうな奴らばかり。こいつらに捕まらないように主人公を操作していくのだが、どうしても追いつめられてしまう場合がある。そんな時はボタンを押して、手に持った胡椒を敵にふりかけるのだ。すると、敵は一定時間動けなくなるだけでなく、素通りも可能になる。
また、敵を具材の上に乗せたまま落とすと倒せるだけでなく、いつもより数段多く下へと移動してくれるので、面クリアも楽になるのだ。敵を倒す手段はもう1つ、具材の間に挟んでしまうこと。とはいえ、一定時間が経過すれば敵は自動的に復活するので、油断は禁物だ。
要はハンバーガーを作りまくって先へと進んでいくのだが、パッと見て驚くのは、あまりにも大きなハンバーガーの具材。それを、足で踏みつけて下に落とすというのだから、衛生上の問題ありまくりでは? と余計な心配をしてしまった。第一、こんな大きなハンバーガーを誰が食べるのか? と今なら思うわけだが、当時はもちろんそんなことを考えるはずもなく、ただひたすら具材落としに一生懸命だった記憶だけが残っている。
敵との駆け引きも非常に熱く、独特の思考ルーチンを先読みできるかどうかが勝負の分かれ目となっている。特に、本作にはハシゴが数多くかけられていることから分かるように、敵が一直線に移動することが少ない。それを見極められるようになれば、かなりの時間プレイできるようになるだろう。
他にも、複数の敵を具材に乗せて、まとめて落とせたときの爽快感は、ディグダグで岩を使い、一度に複数の敵を倒せたときにも等しい快感を得られる。これがクセになると、暫くは街でハンバーガーを見るたびに思い出すハメに。
とはいえ、ルールが非常にシンプルな反面、今プレイするとどうしても飽きるのが早いのと、4方向レバーを再現しているために、操作性がイマイチなところが難点といえる。特に、敵から追いかけられているときに素早く角を曲がりたいと思ってもうまくいかず、そこでやられることもしばしばあった。だが、それはオリジナル版も同じ。忠実に再現している以上は操作性に文句を言っても始まらないので、涙をのんで諦めよう。
非常に残念なのが、オリジナル版の縦画面を再現する、モニタ縦置きモードができない点。正直なところ、これは明らかな手落ちではないかと思うのだが……。ただし、それを除けば問題はないので、縦画面にこだわらないオールドゲーマーなら、文句なしの1本になるだろう。今はなきデコを偲び、静かにプレイするのもいいかもしれない。
イー・アル・カンフー(1985年:コナミ)――16の技を駆使して敵を倒せ! ではなく、数個の技で敵を倒す
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