10年以上を経てもなお色あせない、メガドライブのマスターピース:「ガンスターヒーローズ〜トレジャーボックス〜」レビュー(2/2 ページ)
「ダイナマイトヘッディー」はコミカルでシュールなアクション
「ダイナマイトヘッディー」は、ガンスターヒーローズとまた雰囲気ががらりと変わって、開発陣の遊び心がそこかしこに感じられるコミカルなアクションゲーム。主人公のヘッディーは“オンボロ人形”という設定で、自分の頭を飛ばして敵を攻撃したり物を引き寄せるなど、そのアクションも個性的だ。
このゲームは、キャラクターや世界観にシュールさが漂い、ヘッディーを手助けする3人の味方キャラも“ヤックん、フックん、モックん”と、どこかで聞いたような名前……。ライフゲージの代わりに、ステージを照らすライトの色で現在のライフを表すなど、ゲーム全体が人形劇の舞台を思わせる作りになっているのもおもしろい。また、アイテムを取ることでヘッディーの頭をパワーアップさせることができ、その種類と効果も実にさまざま。例えば、頭が掃除機のような形に変わって、敵やアイテムを吸い込めるようになったり、体が小さくなって狭い場所にも入れるようになる。「ガンスターヒーローズ」で見られたような派手さや爽快感はないものの、パズル的な要素がところどころにちりばめられているのが楽しい。ただし、見た目の印象とは裏腹に難易度は高めで、易々とエンディングにたどり着ける内容にはなっていない。
プレミア価格で取引される伝説的ソフト「エイリアンソルジャー」
残る「エイリアンソルジャー」は、かつてのメガドライブユーザーの間でも知る人ぞ知る1作。これが発売されたのは95年で、すでにメガドライブの後継機であるセガサターンが登場した後ということもあって、出荷本数が極端に少なかったらしい。しかし、時間が経つにつれてその出来のよさがクチコミで伝わると、中古市場で定価を大幅に上回るプレミア価格で取引されるようになった。わたしが以前、中古ショップで見かけたときには、なんと2万円の価格で売られていたことも……。
さまざまなタイプの武器を使い分けながら敵と戦っていくというあたりは、「ガンスターヒーローズ」にも通じるところがあるが、世界観はダークで、登場する敵も生理的な嫌悪感を呼び起こすような異形の者ばかり。敵の弾を破壊することでライフを回復させたり、空中でのホバリングといった多彩なアクション、さらに弾数にも制約があるなど、ゲーム性は「ガンスターヒーローズ」のそれと大きく異なる。
その難易度も、ここ最近のゲームでは見られないほどのシビアさ。難易度設定は「SUPEREASY」と「SUPERHARD」の2種類しかなく、しかもこの「SUPEREASY」がちっとも易しくない……。初めてプレイしたときには、ステージ1さえまともにクリアできないほどの難しさだ。さすがに「FOR MEGADRIVERS CUSTOM」と称するだけのことはある(?)。
ところが、この難易度の高さが徐々に快感になってくるから不思議。幾度となくトライし、敵の配置や攻撃パターンが頭に入ってくると、それに応じた動きができてくる。そして、初めは苦労の末にようやく倒していたボスキャラが、ものの数秒で撃破できるようになるなど、自分の上達具合が目に見えてわかるところがチャレンジ心をなお駆り立てるのだ。
他機種版の収録や、マニアックなシステム設定もうれしい
これで本作に収録の3作品を一通り見たわけだが、実は収録作品がまだある。各タイトルの日本版に加えて、海外版も収録されているのだ。海外版では、難易度バランスが異なっていたり、一部のボスキャラが変更されていたりするので、同じ作品でもまた違った雰囲気が味わえる。さらに隠しタイトルとして、「ガンスターヒーローズ」のプロトタイプ版(発売前に作成された実演用サンプル)とゲームギア版、「ダイナマイトヘッディー」のゲームギア版と、海外のみ発売されたマスターシステム版まで収録されている。これらを含めると、1本のソフトで計10タイトルが遊べることになる。
ほかにも、当時のマニュアルや宣伝用イラストなどを画面上で閲覧できたり、画面のちらつきを抑えるデフリッカーのオン・オフを切り替えられたりと、システムメニューの充実ぶりもうれしい。D2以上に対応したTVとD端子ケーブル(またはコンポーネントケーブル)があれば、プログレッシブ(480p)表示もできる仕様になっている。
また、「ガンスターヒーローズ」と「エイリアンソルジャー」の2作には、上級者によるスーパープレイを鑑賞できるモードも付いている。特に、「エイリアンソルジャー」のSUPERHARDモードでのスーパープレイは必見。華麗なテクニックの数々に圧倒されっぱなしで、思わず目が釘付けになった。
バージョン違いを含めて10タイトルを収め、画面設定などかゆいところにも手が届くかのようなシステムメニューを搭載してこの価格とは、何ともサービス精神旺盛な作り。ゲームのリバイバル版というと、いつもならひとしきり遊んで、ノスタルジックな気分に浸って、終わり……というパターンなのに、この「ガンスターヒーローズ〜トレジャーボックス〜」は当時と同じように、いやそれ以上に真剣に遊んでしまった。それだけ、十年以上が過ぎてもまだ通用するおもしろさを備えた傑作なのだと、いまにして思い直した次第。当時、これらの作品をリアルタイムでプレイしたことがない方にも強くオススメしたい。
ところで、SEGA AGES 2500シリーズの発売予定リストから、いつの間にか「ベアナックル」が消えているのが少し気にかかる今日この頃。わたし、これを首を長くして待っていたのに……。
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