周囲を良く観察して行動しましょう――災害時の知識が当たり前のように身に付くリアルサバイバル「絶体絶命都市2 ―凍てついた記憶たち―」レビュー(2/2 ページ)

» 2006年04月18日 20時52分 公開
[マツオマミ,ITmedia]
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体温を維持することが生存の絶対条件

 ここまではシナリオに散りばめられたユーモアについて触れたきたが、では肝心のサバイバルはどうなのか? というと、こちらも多様なシステムが用意されている。まず、前作では「渇き」が死亡条件となっていたが、今回は「凍え」が死因になる。季節は冬で、流れ込んできた水は氷のように冷たいからだ。寒風も吹き荒れ、氷雨が降り、時には雪もちらつく。

 主人公たちは、ろくな防寒具も持たない状態で、そこへ放り出されてしまうのである。血路を開いて行こうにも、体が動かなくてはどうしようもない。体温が一定以下になってしまうと、主人公たちは「行き倒れ」になってしまう。すなわち死、ゲームオーバーだ。

photo あたたまりポイントは、セーブ可能な唯一の場所でもある。体はわずかな時間ですぐに冷えてしまうので、こまめに戻りながら探索をするのが安全だ

 体温を保つためには、ともかく暖を取るしかない。本作では、ヒーターやストーブ、あるいは焚き火などがある場所を「あたたまりポイント」と呼ぶ。探索で凍えた体を暖め、次なる探索に備える場所。つまり、サバイバルの拠点である。

 あたたまりポイントでは、食事を取ることもできる。食事には、TPと呼ばれる体調ゲージを保つ効果があり、十分に暖まったうえでさらに食事を取れば、TPの減少が一定時間抑えられる。これはかなりうれしいボーナスだろう。サバイバルの基本は「食料の確保」というわけだ。

何を携行するかの判断も大切

 先ほど、主人公たちは着の身着のままで放り出されたと言ったが、そのせいで彼らは鞄やバッグなど、物を入れる道具を持っていない。探索を進めていくと、バックパックやポーチなどが見つかるが、いずれにせよそれほど大量の品を持ち運ぶことはできない。

 そのため、何かを見つけても持っていくかどうか、慎重に考えねばならないのだ。見つける端からやたらと持っていくと、もっと重要な品を見つけたときに回収できなくなる。この場合は、何かを捨てるしかないのだが、捨てたアイテムは削除され、2度と手に入らない。冷静な判断力が問われることになるだろう。

photo アイテムにはそれぞれ重さがある。限界重量を持ち歩いていると、少し重めのアイテムを見つけたときに、2個以上のアイテムを捨てないと回収できない

 例えば食料にかんして言えば、大規模な災害が起こっているのだから、生鮮食料などは望みようもない。手に入るのは原則としてレトルト食品やインスタントフードだ。これらは調理しないと食べられないから、調理器具がないと役に立たない。つまり、食事を取るには、食料と調理器具を携行しなければならないわけだ。携行品に限りがあることを考えると、これはなかなか厳しい。

 となると、いくら食料を見つけたからといって、食べきれないほど持っていくのは無駄だ。拾ったら、その場で食べて一時的にTPを保つ、という感じで使ったほうが賢明だろう。主人公たちは無人の砂漠やジャングルにいるのではない。救急隊が来ている場所まで生き延びればいいのだ。

歩くだけでは街を脱出できない

 移動は基本的に歩くか、走るかして行う。シナリオによっては、ジェットスキー、タクシー、ゴムボートなどの乗り物を使うことになる場合もあり、乗り物の操作は、徒歩で移動している時とは、少し感覚が異なる。

photo ジェットスキーやゴムボートなど、水上を移動する乗り物は、水の流れによる影響を受ける。大きな波や濁流が押し寄せた場合、流れを読んで操縦しないと、あらぬところへ流されてしまう

 例えば、ブレーキやハンドルを入れるタイミングで走りが変化することがある。ミスすれば思わぬ方向に暴走するし、上手くキメればスムースな移動も可能になる。こうしたテクニックの差が生死を分ける時もあるのだ。

 体温の維持、携行品の選択、移動手段の確保――これらはある意味、災害からの避難という点では基本と言えることではないだろうか。ゲームのマニュアルには、末尾に「災害対策マニュアル」が付いている。これはゲームの攻略ではなく、一般的な災害対策について書かれているものだ。この辺り、遊びながら災害時の大切な知識を得られる、教育ソフト的な側面もあるかもしれない。

自分の目で見て、自分で考え、自分の手足を動かせ

 ゲームとして見ると、絶体絶命都市2の難易度はやや高めになっている。高所や水のほとりなどでは、落ちたら即ゲームオーバーという個所はかなりあるし、そうでなくても、体温の低下が早く、探索しているうちに凍え死んでしまうことも珍しくない。

 また、本作では全般に視界が悪く、自分の周囲の状況をプレーヤーが一瞬で把握することがかなり難しい。地図を見る機能はあるものの、かなり大ざっぱな地図なので、方角が分かる程度だ。実際にはあまり役に立たない。

photo 一見、ムービーかイベントに思える場合でも、のんびり見ているとゲームオーバーになることがある。油断せず、しっかり目をこらしていよう

 場合によっては、強いストレスを感じるプレーヤーもいるかもしれない。だが、主人公たちが置かれている状況を想像すれば、こうした障害が設定されていることは、必ずしも理不尽とは言えないだろう。何しろ、何の訓練も受けていない一般人が、まったく予想もしない災害に見舞われたのだ。常識的には、生還率は低いはずである。そう考えれば、難易度が高いのもうなずける。

 ただし、本作では落下などの突然死を、周囲を良く観察することでほとんどカバーできる。自分の周囲を見渡す機能があるので(場所によっては効かないこともある)、これであたりをよく見てから行動すれば、そう簡単には死なないはずだ。逆に言えば、観察せず適当に走り回ったりすると、死が待っているということになる。これは本当にリアルだ。

複雑な相互干渉シナリオを解き明かせ

 難易度という点で、もう1つ無視できないのがシナリオの複雑さとなる。絶体絶命都市2では、各シナリオの主人公たちがほぼ同時刻で行動しているため、互いの行動が干渉し合う仕組みになっている。

 例えば、篠原編で別のシナリオの主人公A(ネタバレ防止ためにAとする)と出会ったとする。この時、Aとのやりとりである選択肢を選んだとしよう。すると、やがてAのシナリオをプレイしている時、同じイベントが今度はA側の視点で発生し、前にプレーヤーが選んだ通りの反応を篠原がするのである。

photo 選択肢は多い時には10種類近く表示される場合もある。ウケ狙いで、わざとヘンな選択肢を選んでみたくなることも

 こうした相互干渉は、セリフや反応が変わるだけの場合もあるが、ゲーム展開そのものを変えてしまうものも用意されている。そうした細かな違いの積み重ねが、シナリオを分岐させていき、エンディングを変えてしまうこともあるのだ。

 1度遊んだくらいでは、とてもシナリオの全貌を解明できないだろう。特に、第3話以降で顕在化してくる陰謀については、分厚いベールの奧に隠されていて、暴くには第1章から計画的にゲームを進めていかねばならない。絶体絶命都市2は、複雑なアドベンチャーゲームを解くような面白さも持ち合わせているのだ。

張りつめた神経はコスプレで慰めよう?

 最後になるが、本作のコスプレ要素にも触れておきたい。サバイバルの一環として、衣服は重要な役割を持っている。寒風の中、シャツ1枚でいるか、セーターを着ているかの差は大きい。ダウンジャケットを着ていれば、雨に打たれても体の冷えはずいぶん違ってくるだろう。そういうわけで、本作にはいろいろな服が出てくるのだが、その中には明らかにギャグとして用意されているものも多い。

photo クリスマスイブの事件ということで、サンタのコスプレも用意されている。ちなみに男女それぞれあって、女性用はミニスカサンタになる

 例えば、帽子のひとつとして用意されているアフロ。これはアフロヘアのかつらで、ごていねいに小さな角がついている。黄色の雨ガッパと合わせて着れば、雷様だ。ほかにもネコミミやナーススーツなどもあるので、これでサバイバルに疲れた精神を癒すのも一興かもしれない。

 実践的なサバイバルシステム、入り組んだシナリオ、遊び心満載のコスプレ、そして随所にちりばめられたブラックな笑い。それらが相まって、ただのサバイバルに終わらない、もっと間口の広いエンターテイメントに仕上げられているのが、絶体絶命都市2という作品なのである。

絶体絶命都市2―凍てついた記憶たち―
対応機種プレイステーション 2
メーカーアイレムソフトウェアエンジニアリング
ジャンルサバイバル・アクションアドベンチャー
発売日発売中
価格7140円(税込)
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