パワプロシリーズ、ついに海を越える――野球の本場メジャーリーグの風を感じろ「実況パワフルメジャーリーグ」レビュー(2/3 ページ)

» 2006年06月02日 14時10分 公開
[小城由都,ITmedia]

“これか!”と思わず叫ぶ、本作のMLB的アレンジ

photo 日本で言うなら伝統の一戦。この対決見ずしてMLBを語るなかれ、というほど、全米が熱狂する戦いだ

 あえて表示スタイルは日本風にし、ひとまず対戦モードをプレイすることにした。このほうが、パワプロとの違いをより鮮明に見分けることができるとの判断からだ。先日、残念なケガのせいで戦列を離れてしまった松井秀喜選手でホームランを打ちたくて、ヤンキースを選ぶ。相手チームは、何かと因縁の耐えないレッドソックスを選択した。


photo 見よ、この空の青さを! そして後ろにそびえる星条旗を。メジャーのメジャーたるゆえんを、この1枚からでも十分に感じ取れるはずだ

 まず驚いたのは、空の色。とにかく青い! 実際のヤンキースタジアムの空も、抜けるように青いのだ。しかも日本の薄水色の空ではなく、光の三原色の青そのもの。そして、球場に響き渡る音が違う。鳴り物、太鼓の音が一切ない。聞こえるのは口笛や拍手。そして、MLB独特のオルガンサウンド。キャラクターは確かにパワプロくん(※便宜上こう呼ぶ)だが、これはまさにMLBの空気だ。


photo どこに曲がるかわからない魔球、ナックルを、あの変則的なフォームから投げ込んでくる。今年レッドソックスからヤンキースに移籍してきたデーモン、打てるか!?

 何の因果か、ピッチャーはウェークフィールド選手。あの魔球ナックルと、ドロップという日本ではめったにお目にかかれない変化球を駆使する、非常に打ちづらい名投手だ。遊びで投げているのではないかと錯覚するような投球フォームが、デフォルメされたキャラクターでしっかりと表現されているのには驚いた。それに気づくと、次々とMLBらしさが目についてくる。

 外角に外れたボールを見送った時、アンパイヤが“ストライク!”の声をあげる。えっ、今のはどう考えてもボールのはず……あっ! 外角のストライクゾーンが、ボール1個分広い。パワプロをプレイしたことのある人なら一目瞭然(りょうぜん)。野球のルールを知っている人も、すぐに気づくだろう。ストライクゾーンを示す赤い枠線が、ホームベースの幅よりも広くとられているのだ。こんなにもMLBのストライクゾーンは広いのか。

photo ストライクベースから、明らかにボール1個分広いストライクゾーン。ここの使い方がMLBの戦い方になる

 試しに外角高めの球に手を出してみたところ、MLB選手が良くやるように、腕を放り出すように伸ばし、上半身の力だけでボールを打ち返す動きをした。これをあの2頭身のキャラクターで再現しているのである。プロ野球とは違う考え方をしなければ、と気づいたのはこの辺りからだった。

 守備でも違いも明らかだ。ショートがゴロをさばく時、下半身がサード方向を向いていたとする。日本人選手の大半は、一度ファースト方向に体勢を立て直してから送球する。この場合、足の速い選手が打者だと、これがそのまま内野安打になることも多い。しかし、MLBの選手は上半身の力が強く、下半身がサード方向を向いていても、そのままの体勢でファーストに送球することが多い。しかも矢のような送球が可能なのだ。まさにその動きを、パワプロくんがしっかりと再現しているのである。

photo 軒並み肩の強い内野陣。上半身の力だけで投げ込むあの姿は、プロ野球では見られない

 それにしてもMLBの投手は変化球が多彩だ。特にストレートの亜種ともいえる、ツーシームを使いこなす選手がたくさんいる。松井秀喜選手でホームランを狙おうと、何度も強振を使ったのだが、このツーシームに芯を外され、凡打に終わってしまう。そういえば、パワメジャの投手はスローボールを投げることができない。上方向には、このストレート系の変化球が割り当てられている。まさに力と力の勝負といった印象だ。

 野手の日本人メジャーリーガーはみな、ストライクゾーンの広さ、手元で変化するツーシームに苦しんだという。まさに同じ苦しみを本作品で体験することができる。これもMLBを再現したひとつ、と言えるのではないだろうか。

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