61年めの敗戦──フリーになった「Virtual PC」でフリーになった「Pacific War」を復活させる:勝手に連載!「レトロ“PC”ゲームが好きじゃー」(1/4 ページ)
夏がくれば思い出す1945年の8月15日、という日本人も少なくなったとニュースが報じる2006年の夏。そういう時代だからPacific Warで「あの戦争」のメカニズムを冷静に見つめてみたい。
いろんな意味でゲームにしにくい「太平洋戦争」
太平洋戦争で起こった海戦で「海軍好き」でない人でも知っている有名なところといえば「真珠湾攻撃」に「ミッドウェー海戦 」となる。最近はコミックや映画でも太平洋戦争が取り上げられることが多くなって、「珊瑚海海戦があってミッドウェー海戦があってガタルカナルの一連の戦闘があってマリアナがあってレイテがあって、そして大和の沖縄突撃で幕を閉じる」という日本海軍が滅びる一連の流れを知る人が多くなったと聞く。
しかし、それでも「この一戦っ!」といえば「ミッドウェー海戦」であることに賛同してくれる人は多い。「運命の5分間」というキーワードとともに「本当は勝っていた」という“IF”から始まって「ミッドウェーで空母4隻と腕の立つ搭乗員が健在ならば日本はあの戦争に勝っていた」という考えが昭和30年から昭和40年代にかけて流行っていた「戦記漫画」でけっこう真剣に語られていた。そのころの小中学生達はそういう“思想”を戦時中の軍国少年のように信じ込み、彼らが高校生になるあたりから日本でブームになったボードのウォーゲームに「よっしゃ、ボクが南雲中将に代わって第一機動部隊を率いて米空母を撃沈してやる」という動機から足を踏み入れるようになる。
実際、日本では「ミッドウェー海戦」を再現する空母戦ゲームの需要が多かった。アバロンヒルの「MIDWAY」は日本語の解説がついている唯一の空母戦ウォーゲームとして時期は長く、エポックの「日本機動部隊」はミットウェー海戦のシナリオを収録し、ツクダが大作「航空母艦」のあとにリリースした「空母戦4部作」の第一弾はミッドウェー海戦であった。先の日本機動部隊のデザイナーの会社である翔企画が最初にリリースした初心者向け空母戦ゲームも「ミッドウェイ海戦」であった。
空母戦ゲームの題材として「必須」といえるこの海戦であるが、実は「ゲーム」に大変向いていない題材でもある。それは、この海戦に日本が負けた要因が「運命の5分間」というフレーズにある「敵空母の発見が遅れて魚雷と陸用爆弾の交換に時間がかかりようやく準備ができたときに敵の空襲を受けてたため、被弾誘縛して空母が沈んだ」ではなく、「第一機動部隊司令部がミッドウェー海域に敵空母の存在を想定していなかった」とことにあるためだ。
ミッドウェー海戦を扱うウォーゲームにおいて、日本軍担当はシナリオ開始の時点ですでに米空母が近くにいる前提で作戦行動を起こしてしまう。夜明け前から二段索敵を展開して機動部隊は敵空母を発見するまでミッドウェイ基地の制空権圏外に退避して、攻撃隊は魚雷と徹甲弾を搭載したまま待機する。ルールで行動を制約されたり(日本機動部隊では夜明けと同時にミッドウェイ基地を空襲しなければならない)、戦闘序列をゲームのたびに変えたり(翔企画のミッドウェイ海戦ではサイコロの目でゲームに登場する戦力を決定する)といろいろ工夫も凝らされているが、しかし、「敵空母が近くにいることを知っている日本軍」という大前提は変わらない。
「敵がいるのかいないのか分からない」という状況を再現するには作戦級ではなく戦略級規模のウォーゲームの出番となる。米国のボードウォーゲーム業界には「太平洋戦線はビジネスにならない」という経験則があるが、それでも太平洋戦争を扱った戦略級のボードウォーゲームが米国で数多く発表されている。日本でも太平洋戦争を扱った戦略級のウォーゲームは登場しているがその数は「太平洋艦隊」(ホビージャパン/サンセットゲームズ)「大日本帝国の盛衰」(ゲームジャーナル)と意外にも少ない。もちろん、PCウォーゲームでも戦略級太平洋戦争を題材にしたタイトルが発売されているが、面白いことにこちらは米国で少なく日本で多い。その数少ない米国産の戦略級太平洋戦争のタイトルが「Pacific War」(SSI)だ。ちまみに、ボードゲームでも同名のウォーゲームがVictory Gameから出版され、その日本語版がホビージャパンから出荷されていた。実を言うとボードのPacific Warのほうがよく知られていたりする。
なお、SSIのPacific WarについてはMOR氏による詳細な解説とリプレイ記事がウォーゲーム専門誌「ゲームジャーナル」ですでに掲載されている。筆者はそのバックナンバーを入手したいと長いこと望んでいるのだが残念ながら未だにその記事を読んでいない(オークションでも結構な値に競りあがってしまうのだ)。そのため、この記事のPacific Warに関する記述がMOR氏の記事と重複している可能性がある。すでにゲームジャーナルの記事を読んでしまっている方々には大変申し訳ないのだが、その点はご了承いただきたい。
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