「BLOOD+」×「One Night Kiss」――藤咲淳一×須田剛一(3/6 ページ)
――藤咲さんもゲームの仕事をされていた期間が長いんですよね。
藤咲 長いというか、ゲームの仕事しかしてませんでしたね。劇場用アニメ「BLOOD THE LAST VAMPIRE」で初めてアニメの仕事をしました。これは企画だけでしたが、そのほかはずっとゲームにかかわっていましたので。その前にも脚本を書いたことはありましたが、アニメの現場にどっぷり入ったのは、今回の「BLOOD+」からですね。石川(注:Production I.G社長 石川光久氏)に呼び出されて「監督やれ」と。この一言で決まりましたので。
ただしアニメの仕事の流れを全然知らなかったのできつかったですね。回りは“監督”ということで、すべて知っているような目で見られますし、すごいプレッシャーでした。演出はできないし、脚本を書くことくらいしかできないので、どうやってアニメを作っていったらいいのかを考えながら作りました。制作現場がどうやって動くのかを見ることから始めましたし。1話ができあがるのを横目で見ながら、昔の徒弟制度のように“見て覚える”ということをトップに立ちながらやってきたようなものですね(笑)。ただし、あり得ないことをやることでProduction I.Gも成長してきましたし。冒険しないと新しいものはできないですよね。
――ゲームの現場も見て学ぶことが多いんじゃないですか?
須田 うちもまったく教えないですね(笑)。
藤咲 わたしは20年くらい前のファミコン時代、ゲームがドットで成り立っていた時期に入りました。もともとはアーケードゲームを作っていたんですが、あのころは「8色も出るよすげー!」という時代でした(笑)。アーケードはそれより上位を行っていましたが、原理は一緒ですから。プログラムも、昔はBASICしか分からなかった人がアセンブラのコードを見て、「何が書いてあるのか分からない」みたいな、そんな時代でした。そのころドットを描くというか、打つ仕事をしていました。
――もともと、ゲームの仕事を指向されたのですか?
藤咲 いや、わたしはアニメの学校に行っていましたし、高校時代も漫研に入っていました。もともとは漫画家になろうと思って上京してきて、あまり仕事がなかったので、バイトとしてゲームの仕事をしていたんです。20年がかりで戻って来ちゃったな、という感じですね。途中、漫画家のアシスタントをしながらゲームの企画を立てていたこともあって、どっちになろうか迷ったんですけど。アシスタントのバイトは1晩1万円だったんですが、肩は凝るわ指は痛いわできついですよね。そんな激務の中で、ゲームのほうが輝いて見えたんです。集団作業で楽しそうにやってるし。ちょうどスーパーファミコンが出た時期で、会社で一晩「F-ZERO」をプレイして、やっぱりゲームがいいかな、と。回転するってすごいな、とか。
須田 そのころはカバンの卸問屋で仕事をしてました。わたしはもともとアニメっ子なんで、アニメ、特撮、プロレスは人並み以上にできた子でした(笑)。
藤咲 わたしも須田さんと同い年なんで、高校時代はアニメっ子でしたし。
須田 きっかけは宇宙戦艦ヤマトですね。
藤咲 そう。劇場版の「さらば宇宙戦艦ヤマト」。白色彗星対超弩級戦艦という時代ですから。
須田 あのころはアニメーションを見て、金田伊功さんはすごいとか話していましたね。スターアニメーターがいた時代でした。
藤咲 わたしも「バース」を読んでました。
須田 いまだに「金田伊功画集」持ってますよ。
――お2人ともルーツは近いんですね。“作画オタク”というか。
藤咲 高校時代に「蒼き流星SPTレイズナー」が放送されてましたが、TVにサランラップを張って絵を写してました。1枚1枚、こうやって動くのかと思って。その原画を担当されていたのが黄瀬和哉さんや沖浦啓之さんだったんですが、いまはProduction I.Gにいますので、入社してからお会いしました。あの当時はアニメアールが一時代を築いていましたね。大阪のアニメってすごいなと。作画の人、個人個人に興味があったわけではないので、何となく知っていたという程度なんですが。押井守さんとか、安彦良和さんとか、まさかこんな近くにいることになるとは思ってもいませんでした。
――そういう意味では、Production I.Gに入って「やるドラ」を作られたのも自然だったんですね。
藤咲 不思議な感じでしたね。前の会社でも最初は企画を担当していて、そのうちに絵が描きたくなってドッターをやっていたんです。そのうちに先行きが見えなくなってきて、Production I.Gにゲームスタジオを作るからと誘われました。そのときはグラフィックのチーフになる予定だったんですが、行ってみたらディレクターがいないので急きょ担当してくれ、と。入って1カ月くらいは机くらいしかなくて、自分でワープロを持ち込んで企画書を書いていました。そこでアニメーションを使ったゲームを作ってくれと言われ、アドベンチャーをいろいろ考えていたんですが、そこから「やるドラ」が生まれました。
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