妄想が実現するとこうなる――「ケータイ少女」に見る“ケータイ発メディアミックス”の可能性(2/2 ページ)

» 2006年12月26日 19時14分 公開
[遠藤学,ITmedia]
前のページへ 1|2       

ケータイ少女を攻略対象にしなかった理由

 タイトルにも使われているケータイ少女は、携帯サイズの女の子「リン」のことを指す。サイズがサイズなだけに、攻略対象ではなくサポートキャラクターという扱いだ。女の子の好感度を教えてくれたり、ちょっとしたヒントをくれたりと、主人公の恋路を助けてくれる。

photophotophoto 攻略対象でないとは言え、ゲーム中、一番顔を合わせることになるのがリンだ。女の子の現時点での好感度を教えてくれたり、セーブをさせてくれたり(?)と、主人公の恋路をサポートしてくれる

 美少女ゲームの場合、ファンタジー色あふれる設定で、モノが女の子に擬人化され、攻略対象になることもあるが、ケータイ少女は純愛路線の正統派美少女ゲームを目指していたこともあり、「わざとそうしなかった」という。

 「最初は、ケータイから等身大の女の子が出てくるみたいなことも考えました。だけど、ケータイそのものが女の子になったほうが面白いかなと。そして、それが攻略対象でないなら、人気も出るかもしれないと考えたんです。攻略対象ではないですけど、リンにはリンで“ある仕掛け”を用意しています。ぜひ探してみてください」(長木氏)

 ケータイ少女には、クリア直前まで各キャラクターの好感度を平均的に上げていくことで、女の子全員と幸せになれてしまう、いわゆる“ハーレムエンド”がない。純愛路線なので、当然と言えば当然だが、それ以外にも「ハーレムエンドあると女性が引く」との理由があったと長木氏は話す。

 「以前に配信した美少女ゲームがそうなんですけど、女性のプレーヤーさんが結構多いんです。3割くらいはいますね。“萌えってやつでしょ?”みたいな感じで興味を持つ女性は多いみたいです。パッケージを手に取るのは恥ずかしいけど、ケータイアプリなら手を出しやすい。7000円出して冒険はできないけど、数百円ならやってみよう。そういうニーズに合っているみたいですね」(長木氏)

 美少女ゲームで女性ユーザーが全体の3割を占めているのは確かにすごい。このような理由もあり、ケータイ少女には女性ユーザー獲得のための工夫が随所に盛り込まれているという。

 例えばタイトル。開発当初は「携帯少女」だったが、柔らかさを出すために「ケータイ少女」にしたという。それと衣装。「いやらしさが出てしまう」(長木氏)との理由で、肌の露出が多い衣装は採用していない。

 タイトルのイメージカラーをピンクと白にしたことも、女性を意識してのことだと長木氏。「男性から見たピンクと、女性から見たピンクは印象が違うんです。色味にもよりますけど、男性はエロい感じを受けますよね。それが女性の場合だと、もうちょっと優しい感じになるんです」

 このほか、女性にウケがいいことからキャラクター1人の私服にゴスロリファッションを採用するなど、細かい部分まで女性を意識して作っている。だが、ケータイ少女は女性ユーザーだけをターゲットにしたタイトルではない。中年層にウケそうなギャルっぽいキャラクターや、普段から美少女ゲームをプレイしているユーザーにウケそうな幼なじみキャラクターを用意するなど、幅広い層に向けて作られている。

photophotophoto ほかの美少女ゲーム同様、ケータイ少女にも個性的な女の子がそろっている

妄想の終着点は「アイドルグループの結成」

photo

 ゲーム以外でのケータイ少女の展開にも触れておきたい。現在のところ、インターネットラジオ、ドラマCD、ブログ、コミックで展開しており、詳細は明らかになっていないものの、アニメ化も決定している。開発元である工画堂スタジオからは、フルボイスのPCゲーム版が2007年2月に発売予定だ。また、コスプレ用の制服や抱き枕カバーなど、商品展開も始めている。

 「開発当初から予定していたわけではないのですが、気持ち的には実写ドラマにしたいぐらいの妄想はしていました。これまでにもいろいろなゲームを作ってきて、何万人、何十万人という人たちに遊んでもらっています。その中で、ケータイがゲームを展開するひとつのメディアとして、しっかりとした地位を築けているという実感があったんです。端末の普及に加えて、機能も十分に向上した。そろそろゲームを展開するメディアとしての価値ができたはずだと」(長木氏)

 メディアミックス展開には、他社の協力が必要不可欠だ。いくらジー・モードがいけると思ったところで、協力してくれるメーカーがいなければ妄想で終わってしまう。不安はなかったのか? との質問に「ケータイから出てきたコンテンツにどれだけの価値があるのか? やったことがないからこそ、実験的なことに協力してくれるメーカーがいると思っていました」と長木氏。この予想が見事に当たり、ケータイ少女は幅広い展開を見せることになったわけだ。

 ここまで商品展開できればさぞ満足しているかと思いきや、長木氏は「展開はまだまだ考えています」と話す。「まずはケータイ少女自体のキャラクターをもっと増やしたいですね。後は、ケータイ少女の制服を着て参加するツアーとか、アイドルグループも結成したいです(笑)。どこまで実現するか分からないですけど、そこまで妄想したほうが面白いじゃないですか。ケータイにはそこまでの力があると思います」(長木氏)

 キャラクターをもっと増やしたい――事実上の続編開発宣言が出たものの、今回の取材では続編について語られることはなかった。ケータイから生まれ、さまざまな方面にメディアミックス展開するタイトルは、どこまで大きくなるのか。続編の動向も含めて、今後も注目していきたい。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
先週の総合アクセスTOP10
  1. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  2. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  3. しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
  4. 天井裏から変な音がする→スマホを突っ込んで撮影したら…… 映った“とんでもねぇ”モノに「恐ろしい」「何これ」と騒然の196万表示!
  5. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  7. 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  8. 顔の半分は童顔メイク、もう半分の仕上がりに驚がく 同一人物と思えない半顔メイクが860万再生「凄いねメイクの力」
  9. 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  10. スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評