惨劇は進化する――舞台をPS2に変えた“正解率1%の謎”の魅力「ひぐらしのなく頃に祭」レビュー(1/3 ページ)

口コミやインターネットからうわさが広がり、異例の大ヒットとなった同人PCゲーム「ひぐらしのなく頃に」が、プレイステーション 2版で登場した。制約がなく、幅が広い表現ができる同人作品から、規制のある家庭用ゲーム機へと変わることで、本作の魅力はどう変わったのだろうか。

» 2007年03月01日 12時00分 公開
[雛見沢秀一,ITmedia]

止まることを知らない「ひぐらし」の世界

 まずは、元となった同人PCゲーム「ひぐらしのなく頃に」(以下、ひぐらし)について解説しよう。「ひぐらし」がその産声を上げたのは、2002年冬の「コミックマーケット62」。一見、普通のノベルゲームに見えるが、実は選択肢が登場せず、話を読ませるだけという、ゲームというよりは小説に近いシステムで話題を集めた。

 また、このときに作品が全て発売されたわけではない。実は、「ひぐらし」は全部で8つのストーリー(編)が存在し、それぞれが夏冬のコミックマーケットで発売されたのだ。このうち、前半の4編は「問題編」と呼ばれ、物語のタネあかしは行われない。後半の4編、通称「解答編」にて、徐々にその謎が解明されていく、という仕組みなのだ。

 ここで、“各編が間隔を開けて発売された”ことに注目してほしい。当時からリアルタイムでプレイしているユーザーは、解答編が発売されるまで、いわば“タネあかしのされていない推理小説”を突きつけられた形になり、物語の真相解明にやっきとなった。作中でのヒントもあまり多いとはいえず、全国の「ひぐらし」ファンは、自身のホームページで真相を推理したり、また本作を手がけた同人サークル「07th Expansion」の掲示板で、仮説や議論を飛びかわしたりして、盛り上げていった。

 その謎は非常に難しく、真相が明かされる前に、正しく推理できた人は皆無だったという。この難しさは“正解率1%の謎”として、大きな話題を呼んだのだ。まず、このユーザー間で議論を行うコミュニティの楽しみが、そのまま本作の魅力のひとつにあたる。

 もちろん、シナリオ自体の魅力も忘れてはならない。各編の前半では、ギャルゲーのようなほのぼのとしたシナリオパートが展開したと思えば、後半では冷水を背中にいきなり浴びせられるような、ゾッとするサイコホラーなミステリーパートに急転する。

 注目すべき点は、各編の物語は、同じ時系列のパラレルワールドになっている、ということだ。例えば、あるストーリーでは死んでしまう人物が、別のストーリーの同時刻では生きながらえているといった感じだ。こうなった原因とは一体何なのだろうか。もちろん、これはひとつの例であり、このような変化が多数ちりばめられているのが「ひぐらし」の世界。これらの情報から、物語の真相、そして事件の犯人を解明する物語なのだ。

 ユーザー間の盛り上がりや口コミ効果により、「ひぐらし」は同人業界では異例といえる大ヒットとなった。また、マンガやアニメ、携帯電話用ゲームなど、他メディアにも展開され、「ひぐらし」ワールドはどんどん広がりを見せている。

 さて、ギャルゲー好きを公言する筆者だが(関連記事参照)、実は本作の大ファンである。というか、今まで生きてきた中で、一番好きなゲームと言っても過言ではない。好きがこうじて、「ひぐらし」の舞台のモデルとなった村へ旅行してみたり、ペンネームを「ひぐらし」の舞台・雛見沢村にちなんで雛見沢秀一にしてしまったほどだ。

 というわけで、前置きが長くなったが、ここからプレイステーション 2版「ひぐらしのなく頃に祭」について語っていこう。

別物と呼べるほど、大きく変化したプレイステーション 2版

 「ひぐらしのなく頃に祭」は、原作から大きく変化している点がたくさんある。大筋のシナリオこそ同じだが、それ以外はほぼ別物と考えてもよさそうだ。では、大まかな変更点を一つずつ紹介していこう。

 まず大きく目をひくのが、キャラクターデザインが一新された点だろう。「ひぐらし」のキャラクターデザインを手がけたのは、原作者の竜騎士07(りゅうきしぜろなな)氏。対する「ひぐらしのなく頃に祭」は、2006年にナムコより発売されたニンテンドーDSソフト「怪盗ルソー」などキャラクターデザインを担当した、人気イラストレーターのrato氏が新たに書き起こしている。原作のファンは、大きくデザインが変わったため、若干戸惑いを覚えるかもしれない。

画像 原作では園崎魅音(左・そのざきみおん)が肩から吊っていたモデルガンがなくなるなど、細かい変更点も見られる

 また、原作ではボイスが存在しなかったが、「ひぐらしのなく頃に祭」では各キャラクターにボイスが追加された。ちなみに声優は、アニメ版「ひぐらし」のキャストと一緒だ。アニメ版を見ているファンにとっては、違和感なく楽しめることであろう。

 原作からのファンがもっとも注目したいのは、新シナリオが3本収録されている点だろう。「盥回し」編、「憑落し」編と、最終章「祭囃し」編に変わる「澪尽し」編が、今回新たに収められている。つまり、「ひぐらしのなく頃に祭」では計10本のシナリオを楽しめる。


画像 チャートを見ることで、自分がどんな選択肢を選び、どのルートに進んでいるかが分かるようになった

 個人的に最も大きな変更と思えるのは、ゲームシステムが大きく変化したことだ。前述の通り、原作は1編完結型だったため、最初に遊ぶ編を選択したら、あとは基本的に読み進めるだけであった。対する「ひぐらしのなく頃に祭」は、ゲーム中に選択肢が登場するようになり、その選択いかんによって、以後のストーリーが大きく変化するのだ。

 最初にさらっと述べたが、「ひぐらし」のほぼすべての“編”には、ほのぼのとしたギャルゲーのような前半部分と、シリアスな後半部分とにわけられている。つまり、“編”の数だけ異なる“前半パート”があったのだ。対する「ひぐらしのなく頃に祭」は、前半パートは1つにまとめられ、変わりにゲーム中に選択肢が登場するようになったのだ。

 もう1点、ゲーム中の楽曲が変更されたことも記載しておこう。原作では、多数の同人音楽製作者が作曲を担当していたが、「ひぐらしのなく頃に祭」では、ゲームのBGMを手がける音楽集団「5zizz」が楽曲を担当している。また、オープニングテーマ、エンディングテーマが2曲ずつ、計4曲新規収録されている。「ひぐらし」の魅力のひとつとしてBGMが挙げられるが、「ひぐらしのなく頃に祭」でもファンを魅了できるものに仕上がっているのか、個人的に注目している部分だ。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」