嵐で洋館に閉じこめられた9人の運命は?――個性派同士のコラボによる推理アドベンチャー:「雨格子の館」レビュー(1/3 ページ)
嵐によって館に閉じ込められた9人の男女。毎日1人ずつ、その命は奪われていく……。これぞミステリーという雰囲気を持った推理アドベンチャー「雨格子の館」。プレイヤーの行動次第で、連続殺人を止めることができる。犯人の恐ろしい計画を防ぐのはキミだ!
日本一ソフトウェアとフォグのコラボによって生まれた新しい推理アドベンチャーが本作、「雨格子の館」だ。一見地味なコンビに思えるかもしれないが、コアなゲームファン、特にアドベンチャーファンにとっては、なんともホットな組み合わせなのだ。
日本一ソフトウェアは、一般的には「ディスガイア」シリーズなどのやり込み度が高いシミュレーションRPGで定評のあるメーカー。2004年には「流行り神 警視庁怪異事件ファイル」をリリースし、ホラーアドベンチャーのジャンルでも新境地を切り開いた。
一方、フォグは長年アドベンチャーにこだわってきた知る人ぞ知るソフトハウス。輪廻転生ラブストーリー「久遠の絆」でスマッシュヒットを飛ばし、ドリームキャスト末期に発売された探偵アドベンチャー「ミッシングパーツ」も、いまだに名作として語り継がれている。今回の「雨格子の館」は、この「ミッシングパーツ」のスタッフが手がけたというのだから、否が応でも期待は高まる。
探偵ドラマ風だった「ミッシングパーツ」の世界観とは趣を変え、“陰鬱な館で起こる惨劇”という正統派ミステリーの設定が本作の特徴だ。しかも犯人の意図を読み、うまく先回りして行動すれば、ほとんど犠牲者を出さずに事件を解決できる。この挑戦状とも取れる作りに、燃えない人はいないだろう。
ただし、頭が痛くなるほど理詰めのトリックがガチガチに入っているのではなく、フォグの味であるほのぼのとしたキャラクターの掛け合いも生きている。怖がりでひ弱な主人公の「和(なごむ)」は、その名の通り優しい心で周囲を和ませ、ワトソン役の着流しの青年・日織は大人びた温かい眼差しで和を見守る。「ミッシングパーツ」でも、探偵・恭介と相棒の哲平の関係は羨ましくなるほどだったが、「雨格子の館」も和と日織の崩れない信頼関係に強い絆を感じる。これは、どちらの作品も手がけたシナリオライター、西ノ宮勇希氏の味だろう。事件とキャラクター、二つの側面を同時に楽しめる厚みを持った推理アドベンチャーだ。
洋館で起こる連続見立て殺人
それではストーリーを紹介しよう。
――大学生の一柳和は凄まじい雨の中、山道をさまよっていた。「どうして、いつもこうこうなんだろう……」
嵐の中、ガス欠の車を乗り捨てた和に見えた希望の光、それは遠くの館の灯りだった。どうにか洋館にたどり着いた和は、庭でドアを探すうち、何かにつまづいてしまう。
なんとそれは男性の死体!? その直後、誰かに殴られて気を失った……。
目を覚ますと和は館の中に運び込まれていた。そこにいたのは、話題の覆面脚本家「帽子屋」の新作に選ばれた俳優8人。撮影スタッフが入る前に、1日早く俳優たちが呼ばれ、練習を行っていたのだ。
だが、平和な空気も束の間、夜も更けてガラスが割れる音が館に響く。温室に様子を見に行った和たちは、「復讐」と赤文字で書かれた手紙と黒猫の置物を見つけた。これは何を意味するのか? さらに、駐車場に置いてあった2台の車のタイヤはズタズタに。移動手段を奪われ、孤立した館の面々。ここから連続殺人が幕を開ける……。
舞台となるのは各部屋に「ドイル」、「カー」、「クイーン」と、ミステリー作家の名前がついたいかにもな洋館。復讐を狙う犯人が連続殺人を起こすにはピッタリの場所だ。殺人を阻止できるのは、唯一の部外者で、館に迷い込んだ和だけ。周りが驚くほど怖がりの和は、救出が来るまでの7日間に、いちいち怯えながら事件の真相を突き止めようとする。
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