「.hack//G.U. TRILOGY」など事業は新たな局面へ――サイバーコネクトツー新事業戦略発表会

サイバーコネクトツーは10月3日、時事通信ホールにおいて新事業戦略発表会を開催し、2008年発売のアニメ「.hack//G.U. TRILOGY」を発表。コーポレートブランドマークを一新し、新たな局面に至ったことを示した。

» 2007年10月03日 19時20分 公開
[加藤亘,ITmedia]

改めて「.hack//G.U. TRILOGY」を発表

左からバンダイビジュアルの森本浩二氏、サイバーコネクトツーの松山洋氏、バンダイナムコゲームスの鵜之澤伸氏、そして司会も務めた声優の榎本温子さん

 サイバーコネクトツーと聞いてピンとくる方は、どの製作会社がソフトを作っているのかに注目している証拠であろう。パブリッシャーの名前だけでなく、ソフトを実際開発している製作会社を見比べて購入する――いわゆるブランド買いをするユーザーが増えていると、サイバーコネクトツー代表取締役の松山洋氏は語る。だからこそ、「製作会社が元気であること」が大事なのだと、今回新事業戦略発表会を催した主旨を説明する。

 サイバーコネクトツーは福岡に居を構えるゲームソフト企画開発会社で、1998年の「テイルコンチェルト」開発を皮切りに、「サイレントボマー」や、「.hack」シリーズ(全4巻)、「.hack//G.U.」シリーズ(全3巻)、「NARUTO-ナルト- ナルティメットヒーロー」シリーズや「NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットアクセル」などを世に送り出している。また、PS3において新たな「NARUTO-ナルト-」を開発していることも話題となった。


 松山氏はサイバーコネクトツーが、触って気持ちのいいアクションゲームであれ、独創的で斬新的なドラマやキャラクターであれ、他にはない作品作りを心がけてきた中で、タイトル共通のこだわりとして持っていたのが「映像と演出」であると、新たな映像製作プロジェクト第1弾「.hack//G.U. TRILOGY」を発表した。

 「.hack//G.U.」は、2006年から2007年にかけ全3巻のシリーズとして製作されたプレイステーション 2タイトルで、ゲームにとどまらず、アニメ、コミック、小説、カードゲームとクロスメディア展開を果たしている。「.hack//G.U. TRILOGY」はゲームとして表現したものとは異なる、映像として料理した新たな「.hack//G.U.」となるのだという。

 実はこの「.hack//G.U. TRILOGY」は、9月14日にタイトル発表がなされており、先の東京ゲームショウ2007のバンダイナムコゲームスブースにおいても映像出展されていたもの。発表会では改めて本作が2008年1月25日に、DVD版とBlu-ray Disc版の2つが発売されることが告げられた。ちなみにDVD版は7140円(税込)、Blu-ray Disc版は8190円(税込)となっている。


松山氏はサイバーコネクトツーの新たな展開としてアニメだけでなく、後述する九州大学とのプロジェクトなど、すべてが新たな局面に達したことに触れる
東京ゲームショウでPVが公開された「.hack//G.U. TRILOGY」は、今までにないリアル路線とは異なる、ゲーム開発からのアニメへのアプローチとなる
鵜之澤氏は、次世代機では開発費が高騰し、製作会社にとっては企画が通りづらく新しいものを作るチャンスがなくなったかに見えるが、ダウンロードコンテンツなど新しいチャンスも生まれつつあり、才能あるクリエイターが増えることを期待するとも語る

 製作プロデューサーのバンダイナムコゲームス代表取締役副社長の鵜之澤伸氏は、前身であるサイバーコネクト時代から12年の付き合いを振り返り、単純にゲームを作っているだけではない、映像へのこだわりがあったと挨拶に立つ。「.hack//G.U. TRILOGY」もゲーム製作の手法で、簡単にいえば映画を作っているようなもので、デジタルアニメといえる斬新なものになるとのこと。「ゲーム業界は進化して映画的なものを作れるようになり、2Dのアニメとは違う世界ができるんじゃないかという狙いがある」と製作する意義は大きいと説明する。


サイバーコネクトツー映像チームのシンボルマーク

 松山氏はここで、「.hack//G.U. TRILOGY」の製作をきっかけに新たな映像チーム「sai -サイ-」の設立を宣言。チームは、ゲーム制作チームとは独立したものになるのシンボルマークを公開した。「sai -サイ-」は「sensible」(感性)、「art」(技術)、「innovation」(革新)の頭文字を取ったもので、「sai」=「最・彩・才」であり、“最も彩りのある才能”集団を表すと説明した。ロゴは、映像作品の中で「彩り」を表現したいという純粋な思いを、無色透明な水をテーマに、「彩」の文字を幾何学的なラインで表現して全体に水が流れるようなイメージで構成されている。


販売元となるバンダイビジュアルの取締役・森本浩二氏も登壇し、とても挑戦的な映像表現になっていると自信をのぞかせる。その自信が値段の変更にも現れていると説明する
「sai -サイ-」プロジェクトリーダー高木聡氏と映像ディレクター入川慶也氏も登壇。動画としてももちろんのこと、止め絵でもかっこいい、テンポのある映像にしたいと豊富を語った

 本作はフルCGでモーションキャプチャーを使用せず全シーン手付けアニメで制作される。これは人間の動きではなく、物語の動きにこだわるからであり、多少の誇張表現などを加えることで、迫力がありテンポのいいアクションを実現できるからとの思想によるもの。ゲーム制作の手法から生まれた新しい工法として効率化を念頭に、ゲーム中における映像表現や演出手法を映像作品として昇華。これにより、どの映像制作会社とも異なるものを生むことになったと、松山氏はこれらの工法を「最適化」したと表現する。

 ゲーム中で同様な描写があっても、すべて作り直しされており、ひとつとして流用したものはないと松山氏。ストーリーもゲームとは異なる展開をし、結末も違うものになるのだという。会場では「.hack//G.U. TRILOGY」のトレーラーが上映されたのだが、主人公ハセヲの新たな5つ目のフォーム「B-stフォーム」などが紹介されていた。また、声優のハセヲ役櫻井孝宏さん、アトリ役の川澄綾子さん、オーヴァン役の東地宏樹さんからのビデオメッセージも流された。

 最後に「.hack//G.U. TRILOGY」の製作に伴い、映像チーム「sai -サイ-」と同様に新しい音楽ユニット「LieN -リアン-」が誕生したことも報告された。「LieN -リアン-」は、「.hack」シリーズでテーマ曲や挿入歌などを歌い上げた三谷朋世さんと、サイバーコネクトツーサウンドチーム所属で作詞・作曲を手がけた福田孝代氏によるユニット。「LieN -リアン-」はフランス語で「絆」を意味し、植物のツタが強く結びつく姿からシンボルマークが作られたとのこと。


ハセヲの新フォーム「B-stフォーム」が公開
ビデオメッセージで松山氏はじめ開発スタッフにエールを贈るハセヲ役櫻井孝宏さん(右)、アトリ役の川澄綾子さん(中央)、オーヴァン役の東地宏樹さん(左)。新しいCG作品と感じるサイバーコネクトツー節の利いた作品になっているとのこと
本日の司会進行を務めた榎本温子さんも本作に参加している。以前演じたキャラクターでまた集まれて、一緒に収録できたことがうれしかったと榎本さん。特に役者の息づかいに合わせて絵作りをしてくれたので、やりがいがあったのだそうだ





サイバーコネクトツー×九州大学 ゲーム制作プロジェクト

 発表会後半にはサイバーコネクトツーと九州大学大学院 システム情報科学研究院情報理学部門 岡田義広研究室の学生とのプロジェクトチームが発足したことが明かされた。サイバーコネクトツーは、九州の福岡のゲームソフト制作会社10社からなる任意団体「GFF」を主催する1つとして、福岡をゲームのハリウッドにするべく産学官で連携しての活動を推進している。その動きの一環として、産としてのサイバーコネクトツーと、学としての九州大学の学生とによるプロジェクトとして、学生たちを社内に招き、サイバーコネクトツープロデュースのもと、家庭用ゲームソフトの企画開発を行うとしている。

 対応機種やどのような内容になるかは今後の発表を待つことになるが、九州大学大学院 システム情報科学研究院情報理学部門 岡田義広研究室といえば、3次元ソフトウェア開発支援システムや3次元CGアニメーション生成技術などのゲーム開発手法の研究に積極的に取り組んでいる研究室で、研究生の中には昨年、CESA「日本ゲーム大賞」インディーズ部門で大賞を受賞した「5秒間のカッパ」や、CESAスチューデントゲーム大賞にノミネートされた「メロディうす」を製作した学生たちが所属している。これだけでも期待できるのではないだろうか?


新しい企業ロゴは想像力と情熱、コミュニケーションのイメージを卵のような楕円を軸として表現。「C」のラインは調和と融合を、円の外に飛び出す「2」のラインで既存の枠に捕らわれないというサイバーコネクトツーの「想い」を表現している

 サイバーコネクトツーは上記の新事業戦略発表に伴い、新しい歩みの一歩としてコーポレートブランドマークを一新。「もっと面白いものを」「もっと斬新なものを」「もっと楽しませるものを」のコンセプトはそのままに、ひと回り成長した企業になることを約束した。また、本日からサイトのリニューアルも果たしている。

 レベルファイブが昨年パブリッシャーとしてタイトルを発売し躍進を遂げたように、なにかと元気がいい福岡の開発会社がまたひとつ、新たな局面に進んだことを印象づけた。松山氏の言にもあった「元気であること」は確実に伝わったのではないだろうか。

(C).hack Conglomerate

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