10年の歳月を経て描かれる、ファイナルファンタジーVIIにつながる“コア”な物語:「クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-」レビュー(1/2 ページ)
PSPで発売された「クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-」は、「FFVII」の発展的作品群・コンピレーション オブ ファイナルファンタジーVIIの最新作。「FFVII」10周年にあたる今年、本編の7年前の出来事を描く本作では、ソルジャーのザックスを中心に、クラウドやセフィロスの過去が描かれる。
10周年を迎えたファイナルファンタジーVII
2007年9月13日、スクウェア・エニックスから「CRISIS CORE -FINAL FANTASY VII-」(クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-)が発売された。本作は、全世界で900万本以上を売り上げ大ヒットを記録したプレイステーション用タイトル「ファイナルファンタジーVII」(以下、FFVII)の外伝的作品で、「コンピレーション オブ FFVII」と称される一連のFFVII関連タイトルの第4弾にあたる。
コンピレーション オブ FFVIIは、これまでに「FFVII アドベントチルドレン」(以下AC)、「ビフォア クライシス FFVII」(以下BC)、「ダージュ オブ ケルベロス FFVII」(以下DC )の3作品がリリースされている。「AC」はDVDおよびUMDによる映像メディア作品、「BC」は携帯電話用アプリ、「DC」はプレイステーション 2で発売されたガンアクションRPG、という風にプラットフォームもジャンルも異なる作品群ではあるが、すべてFFVIIの世界を舞台にしており、FFVIIを愛するファンたちを楽しませてきた。
このたび第4弾として登場した本作も、プラットフォームがPSP、ジャンルがアクションRPGという点では前3作とまったく異なるが、やはりFFVIIの世界を描いた作品だ。しかも本編FFVIIも含めた5作品の中で、時系列において最も古い設定であるというのがポイント。FFVII以前のクラウドやエアリス、セフィロスなどに会えるし、FFVIIにつながる物語に触れることができるのだ。ファンならチェックしておいてほしい、文字通り“コア”なタイトルだと言っていいだろう。
今年はFFVIIが世に出てから10周年ということで、「FINAL FANTASY VII 10th ANNIVERSARY POTION」という実物大のポーションや、「FINAL FANTASY VII 10th Anniversary Edition」のPSP本体が、それぞれ限定発売され好調な売り上げを見せるなど、何かとFFVIIイヤーな印象だ。改めてその人気の根強さを感じずにはいられない。筆者も思い起こせば10年前、プレイステーションでFFVIIが登場した時には、その3D表現の先進性と、機械と魔法が融合した世界観にワクワクしたものだ。あのワクワクを思い出しながらPSPの電源を入れ、いざミッドガルへ!とプレイを始めたのだった。
ザックスにまつわる熱く切ない物語、そして思わず寄り道しちゃうミッション
電源を入れてデモ画面を一通り観てプレイを始めてみたわけだが、まあしかし、このグラフィックは何なんだっ! と突っ込みを入れたくなるくらいに高精細で美麗なグラフィックでデモムービーが展開する。そしてプレイ画面に至っても、筆者が知る限り過去のPSP作品の中で群を抜いてきれいな絵でキャラが動いてくれる。10年前のFFVIIにもため息が漏れたが、10年でゲームはここまで、しかも携帯型ゲーム機でここまで進化したのかぁとうなってしまうほどだった。
そんな驚きを感じつつも筆者が、そして本作をプレイするプレーヤーが動かすことになるキャラはザックスという名のソルジャーだ。ソルジャーは神羅カンパニーの元で働く戦闘員。FFVIIを少しでもかじったことがある人ならご存知かとは思うが、神羅カンパニーというのはFFVIIにおいては敵側に相当する集団だった。「BC」においても敵側であるタークスの一員としてプレイできるが、敵側の戦士であるはずのザックスの視点で物語が進行するというのが面白い。
ザックス自身がゲームに登場するのは初めてではあるが、FFVIIの熱心なファンならザックスという名前は初耳ではないはずだ。そしてそんなファンであれば、ザックスがたどる道についてある程度は知っているのではないだろうか。それを知っていてあえて、というよりもなぜそうなったかを紐解くつもりでプレイしてみるというのもいいかもしれない。
また、10年前はまだ幼稚園に通っていた、とか、本編FFVIIをいまだプレイしていないという若いプレーヤー、新規プレーヤーもいることだろう。本作でFFVIIの世界に初めて触れるのだとしても、それはそれでまったく問題ないと筆者は思っている。なぜなら本作はFFVIIの7年前の世界であり、現時点では時系列的にもっとも古いFFVIIの世界を描いているからだ。つまり、本作をプレイしてから本編FFVIIをプレイすればそのまま正しい時の流れに従ってプレイできることになる。それはそれで面白い体験になるのではないだろうか。
とにかく、プレーヤーはザックスとなって敵へと立ち向かっていく。詳細は後述するが、基本的に本作のプレイにおいては、通常のRPGのようなパーティープレイはなく、ザックス1人を操作することで敵を倒していく。だが、まったく仲間がいない孤独な戦いなのかというと、そうでもない。ザックスには、アンジールという仲間のソルジャーがいる。クラス2ndであるザックスに対してアンジールはクラス1stなので、ソルジャーとしては先輩にあたるが、2人は“友”と呼べる仲だ。FFVIIでは強大な敵として立ちはだかるセフィロスもこの頃はクラス1stのソルジャーで、ザックスとともに任務にあたる局面もある。
その他にも、本編の主人公クラウドの7年前の姿も見ることができるし、ザックスとエアリスの心の交流も描かれる。ティファやユフィなど、おなじみの仲間たちも登場する。ファンならたまらないであろうほどに、メインキャラのオンパレードだ。特にファンの多いセフィロスに関しては比較的出番も多く、今まで描かれなかった面が見れたりするのできっと楽しめるはずだ。「BC」で登場するタークスの面々にも会えるし、本作で初登場する(「DC」でも少し触れられているが)ジェネシス、ラザードやホランダーなどの新たに登場した脇役の活躍も見逃せない。
そして何より、ザックスのキャラが立っているところが筆者としては好印象だった。映画や漫画、アニメにもよくある“お調子者で女に弱いけどやるときゃやる男”という主人公像は、ルパン三世などが好きな筆者には個人的にツボだった。主人公がお調子者でいい奴というシーンがあればあるほど、シリアスなシーンがむしろ締まるという心ニクい演出が効いている。ザックスがたどる切ない行く末に関しては、ぜひご自身の目で確かめてほしいところだ。
FFVIIへとつながる物語は本作の要ではあるが、ストーリーを進めるかたわらで自分のペースで進めることができるさまざまなミッションもまた、本作の大いなる魅力となっている。
ミッションはセーブポイントでメニュー画面を開くことで選択できる。ミッションには物語の進行に伴って増えるものもあれば、あるミッションをクリアすることでその続きとしてプレイできるようになるミッションもある。比較的短い5分〜15分ほどのプレイでクリアできるものばかりではあるが、その総数は300にものぼり、全部をクリアしようと思ったらそれなりに大変だ。じっくり腰を据えられるときはストーリーを進めて、ちょっとした移動の合間にミッションを少しずつ楽しむというのがよさそうだ。
物語の先も気になるが、一度ミッションをプレイし出すと、さくさく戦ってさくさくとアイテムを得られるミッションにはまってしまって、本編そっちのけでミッションに講じてしまったことも何度かあった。クリアしてもクリアしても次から次へと新ミッションが登場するので、それはそれで気になってしまうのだ。ミッションで得られるアイテムの中にはその後の戦闘に有利なものや便利なものも含まれているし、お金や経験値もたまるので、ミッションへの寄り道も本編にフィードバックされるというのがいい。どちらに重きを置くかはプレーヤー次第だ。
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